京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

福寿草

2021年03月19日 | こんな本も読んでみた
(よもや、まさかそんなことは…)
真葛は一散に駆け抜けて成田屋に飛び込んだものの、遅かった!

 奥から響いてくるこの世のものとは思われぬ呻き。
 中暖簾を隔てた店の奥から、嘔吐物の臭いが濃く漂い出していた。
 昼餉の膳を蹴散らし、胸をかきむしって倒れている十人ほどの男たち。
 苦し紛れにかきむしったのか、畳にはあちこちに深い爪痕が残されていた。

福寿草(元日草)を用いた薬種問屋成田屋殺し。お内儀・お香津と奉公人・お雪が捕縛され、六角牢屋敷に収監された。

昼餉に毒を、汁に福寿草を混ぜたのだったl

福寿草は全草に猛毒があり、素人には手に負えない危険な毒草だったとは知らないでいた。
福寿草の蕾をフキノトウと間違えて食べ、死人が出ることも珍しくなかったという。
知らなかったな。知らないのは私だけかもな…。

     
『ふたり女房 京都鷹峯御薬園目録』(澤田瞳子)を読み始めたところでのでのお話でした。
コメント (8)
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