![]() | 「問題解決力」がみるみる身につく本―ケーススタディで基本手順がよくわかる (PHP文庫) |
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ビジネスの現場では、何も問題がないといったことは、まず考えられない。毎日のように大小色々なトラブルが発生してくることの方が、むしろ当たり前の状況だろう。それは、コミュニケーションの齟齬の問題だったり、技術的な問題だったり、いわゆるヒューマンエラーだったりと、様々な様相をとって私たちの前に現れてくる。次々に起こってくる問題を、快刀乱麻、バッサバッサと解決していけるなら、どんなに気持ちが良いことだろうか。
積読本の中から出て来たこの「『問題解決力』がみるみる身につく本」(奈良井安:PHP文庫)。山のように積読本を抱えている身ながら、ちょっと興味が湧いたので、先に読んでみることにした。
本書は、ケーススタディと銘打って、ビジネス現場でのワンシーンを示しながら、そのやり方は正しいのか、問題点があるとすれば、どういったものなのかを示しながら、問題解決の流れに沿って解説が行われていく。
あまり、問題解決の経験がない新人サラリーマンには、問題解決の基本的な流れを掴む上では有効であると思うし、ベテランにとっても折に触れて基本を再確認することは役に立つことだろう。しかし、本書を読んだだけでは、タイトルのように「問題解決力」が「みるみる身につく」ことはないだろう。紙面の都合もあったのかもしれないが、一番肝心な、原因を追及して解決策を見つけ出すというところに、抽象的なことしか書かれていないからだ。
問題が発生したら、ぱっと最良の解決策が頭に浮かんでくるという神さまのような人はほとんどいない。普通の人がやみくもにやっても、大したことは出てこないのである。だから、「なぜなぜ分析」、FMEA,、FTAやQC手法といったものが開発されてきたのだ。しかし、本書には、こういったことは触れられていない。
原因を追及して、解決策を見つけ出すのには、結構年季がいるものだ。問題解決の基本手順をなぞるだけでなく、いろいろな問題解決の手法も身につける必要がある。何事も、地道な鍛錬が必要であると言うことは忘れてはならないだろう。
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※本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。