![]() | 趣味は読書。 (ちくま文庫) |
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筑摩書房 |
斎藤美奈子さんの「趣味は読書」(ちくま文庫)。実は、これまで、ずっと思い違いをしていた。著者のことを、てっきり北杜夫氏の娘さんかと思っていたが、あちらは斎藤由香さん。こちらの父上は、物理学者で宮沢賢治の研究家でもある斎藤文一氏。共通点と言えば、父上が、文理両道の人で、本人はふたりとも、成城大学出身というところか。
ところで、この本だが、元々は平凡社のリトルマガジン「月刊百科」で、「百万人の読書」として連載されていたもので、忙しい皆さんに変わってベストセラーを読んで内容を報告しようという趣旨で始めたらしい。
ベストセラーを対象にしているだけあって、名前は知っている本が結構あるが、不思議に殆どの本は読んだことが無い。全部で49冊の本を、以前読んだ「誤読日記」と同じく、シニカルでツッコミに満ちた筆致で、バッタ、バッタと切っていく。まさに、すがすがしいほどの切れ味(笑)。著者は、これらの本を次のような六類型に分類して紹介している。
1.読書の王道は現代の古老が語る「ありがたい人生訓」である
2.究極の癒し本は「寂しいお父さん」に効く物語だった
3.タレントの告白本は「意外に売れない」という事実
4.見慣れた素材、古い素材もラベルを替えればまだイケる
5.大人の本は「中学生むけ」につくるとちょうどいい
6.ものすごく売れる本はゆるい、明るい、衛生無害
つまりは、これらが、ベストセラーを生み出すために心に留めなければならないことだということだ。本好きの割には、私はベストセラーと言われるものは、ほとんど読まないのだが、なんとなく頷いてしまう。それにしても、49冊も紹介しているのに、この本を読みたいという気にさせないのはさすがである(笑)。
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※本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。