![]() | 挑戦〈新たなる繁栄を切り開け! 〉 (大前研一通信 特別保存版 PartVII) |
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ビジネス・ブレークスルー出版 |
「大前研一通信」の特別保存版Part.Ⅶとなる「挑戦 新たなる繁栄を切り開け!」。内容を、一言で言えば、日本の教育制度批判である。
大前氏によれば、日本の教育は、大量生産・大量消費を前提とした社会のニーズに応えるため、平均値の高い国民をつくるために行われてきたという。しかし、それでは、これからの日本に必要な「答のない問題」に対応していけるような人材を輩出することはできない。氏は、そんな日本の教育の問題点を、諸外国の教育制度と比較しながら論じる。
確かに、大前氏が指摘する日本の教育制度の欠陥は、私も常日頃から感じていることだ。私が嫌いな言葉に、「習う」とか「教わる」というものがある。幼稚園や小学校ならともかく、高等教育や企業内でも、この言葉を平気で使う人間が多いことに愕然としてしまう。この言葉は、知識やスキルは、誰かが教えてくれるものであるということが前提だ。進学するための勉強は、塾で教えてもらう。会社に入ってからは、手取り足取りの研修で知識やスキルを教えてもらう。社会がどんどん受け身の人間を作っているのだ。本書から一つ引用してみよう。世界で通用する人材を育てるためには、どうすべきかについて書かれた部分である。
<1つしかない答えを教え、覚えさせるための{Teach(教える)」という概念から脱却し、複数の答えの中から議論や想像を通じて独自の答えを1つ選び、行動し成果を出す訓練を行う「Learn」を重視することだ>(p98)
単に多くのことを知っているだけの「物知り博士」になることにはもはや何の意味もない。そんなことは、これからはコンピュータがやってくれる。大事なのは、いかに自分で考えて、判断していくかなのである。ただそうは言っても、それぞれの方面での基礎と呼ばれることだけは徹底的に身に付けないといけないのだが。基礎もないのに、自分の意見を感覚的に主張しているだけの人物ほど、いらっとさせられるものはない。
気になるのは、本書全体がビジネス・ブレークスルー大学の宣伝のためのパンフレットを読んでいるような気にさせられるというところだ。色々と日本の教育の欠陥を述べて、これからの日本に必要な教育はこうで、それをやっているのが、我がビジネス・ブレークスルー大学だという論理構成になっている。また、途中から、(株)ビジネス・ブレークスルーが提携してイいるBond-BBT MBAの話が出てくるのだが、関係者以外の読者には、「これ、ビジネス・ブレークスルー大学と何が違うの?」といった思いがするのではないだろうか。
※本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。