「勝利の方程式」という言葉があります。
今も時々聞くことがありますが、個人的には、案外広がらなかったなあ、という気がしています。
この言葉を私たちがよく耳にするようになったのは、おそらく、1993年頃のプロ野球において、巨人の長嶋監督や横浜の近藤監督などが使い始めたのが最初のようです。リードしている試合において、終盤の2~3イニングを守り抜いて勝利を手にするための、定石のリリーフ態勢のことを指したキャッチコピーです。
それ以前は、チームの柱となるエース投手の場合は、完投するのが当然の責務と考えられていた感がありましたが、この頃からは、当然のように完投できる投手にだけ頼っていては、長いシーズンを戦い抜くことは出来ない、という考え方が広がったように思われます。
その後、この言葉は、他のスポーツや、営業戦略の場面で使われることがあったようですが、いずれも定着しなかったようで、今では、プロ野球以外ではあまり使われることはないようですし、この言葉自体も輝きを失いかけているような気がします。
営業戦略として、特に顧客が関わる戦略にこの言葉を取入れるには、よほどしっかりとした企画と細心の注意を払わなければ、顧客に誤解を与える可能性があるように感じられるのですが、この言葉が広がりを持たなかった理由はその辺りにも原因しているのかもしれません。
「勝利の方程式」という言葉は、キャッチコピーとしてはすばらしいと思うのですが、「相手を打ち負かす」ための戦略ですから、味方には心地よく聞こえても、相手方にとってはおもしろくない表現ということになります。
数学の「方程式」をうまく説明することは出来ないのですが、単純に「X」なり「Y」なりを求めるものと考えた場合、私たちの生活や計画の中に、この「勝利の方程式」という考え方は、使えるような気がします。
例えば、私たちが一年の計画を立てる場合、別にしっかりとしたものではなく、ごく漠然と思い描く場合でも、「a - b - c 」と言ったように組み立てていきますが、その中には、確実でない要因の「X」や「Y」が含まれていることが多く、それにどう対応するかということも、計画を立てることの意味の一つといえましょう。
若い人であれば、その「X」や「Y」は、大きな意味を持つことが多く、まさに勝利するための方程式になるかもしれません。
ただ、いわゆる現役から離れて、悠々自適とは言えないまでも、まあまあマイペースの日々を送っている人の場合は、「X」や「Y」が達成できなくても、「XX」や「YY」に設定し直せばいいのですから、気楽なものです。
しかし、同時に、そういう立場になればこそ、どんなに小さな物でも良いので、挑戦すべきもの、そして未知のものである「X」や「Y」を含んだ、「勝利の方程式」を思い描く必要があるように思うのですが、いかがでしょうか。
( 2024 - 07 - 26 )
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