レンズーリの拡充学習について 3
で、次のようなことを書きました。
才能は誰かが設定した環境のなかにこじんまりと収まるものではありません。
「こんなことをやらせてあげよう」「こういう風に学ばせよう」という枠からあふれだしたり、ずれたり、反対方向に針が振り切れたりするところにこそ、
その子ならではの特別な能力が潜んでいるものですから。
「あふれだしたり、ずれたり、反対方向に針が振り切れたりするところ」に、もう少しつけ加えるとすると、
その枠内で評価される価値観で測れないため、価値があっても価値があるのだと気づかれない、意味があっても意味があるものだと理解されないところに個性的な資質や才能が潜んでいる
こともよくあります。
たとえば、こんな場合です。
年中のBちゃんは場の空気を読むのが上手な快活な女の子です。
模倣が得意なので、わたしが何かお手本を見せると、お手本通りにササッと仕上げるもののそれを広げたり深めたりする姿はありませんでした。
その後は、あちらの子が何か作るとそれを真似、こちらの子が何かやりはじめるとそれを真似て過ごしていました。
Bちゃんが年少の頃、Bちゃんのお母さんは、Bちゃんのことを認めつつも、「この子はあまり自分で考えようとしないのかな?この子はこういう子なんだろうなぁ」と言って笑っておられました。
確かに少し前までのBちゃんは、「独創的な何かを生み出すこと」や「ひとつのことにねばり強く取り組むこと」を基準に能力を見ようとすると、態度があっさりしすぎるようにも見えました。
でも、わたしは、Bちゃんという子を、今している課題に付随している価値感だけではかるなんて、意味のないことのように思われました。
模倣するにしろ、先生のも、あの子のも、この子のも……と真似られるのは、Bちゃんの好奇心の許容量の大きさがなせる業でしょうし、心の柔軟性や瞬時に物事の核心をつかむ能力とも関係しているでしょうから。
今回のレッスンに来た際、Bちゃんのお母さんが、「気づいたらBがこんなものを作っていてびっくりしました」と言って携帯で撮った写真を見せてくれました。
それはBちゃんが作ったパソコンで、ハッとするほどよくできていました。ひとつの作品のなかにさまざまなアイデアや工作技術が組み込まれています。
パソコン画面はストローで立たせてあり、お菓子の仕切りを裏返したものに文字を書き込んだキーボードとつながっていました。
「このストロー使うところとか、Cちゃん(同じグループの子)がストローで何でも作るのをよく見ていたんですよね」とお母さんがおっしゃいました。
この日のレッスンで、ポップアップ絵本を作っていたBちゃんは、いっしょについてきていた小学2年生のお兄ちゃんが基本の家をどんどん高くしていくのを見て、自分も高く積み上げていました。
「先生、本をこうやってしまったら、はみだしちゃう」と困っていたので、「はみ出した部分に紙を継ぎ足すといいかもね」
とアドバイスをしてから別の子の様子を見にいって戻ると、Bちゃんは自分ではみ出し部分を隠す半円の紙を貼っていました。
それでもまだ少しはみ出してしまったところがあったようで、さらに小さな紙を切り抜いて、見えないように隠していました。
Bちゃんは、人から学ぶ子で、他の人のよいところを自分の中に統合させていく力を持っているのでしょう。
また、することがとても的を得ていて、現実の生活で役立つような知恵が使える子なのだろうとも感じました。
その点、Bちゃんのお兄ちゃんは、Bちゃんの表紙の継ぎ足しを真似したもののほとんど隠す機能を持っていない形だけの真似に終わっていました。
手と目で考えていく作業は苦手だけれど、考えたり想像したりする頭の中の世界は大きく広がっているBちゃんのお兄ちゃん。
みんなで魔法学校のゲームをした後で、読みかけのハリーポッターの本をみせてくれました。
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