金木犀、薔薇、白木蓮

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49:中田永一 『くちびるに歌を』

2012-06-02 11:58:29 | 12 本の感想
中田永一『くちびるに歌を』(小学館)
★★★★☆

長崎県五島列島にある中学校。
合唱部顧問の松山先生が産休に入るため、代理教員として
彼女の中学時代の同級生である柏木先生がやってくる。
五島から東京の音大に進んだという美しい柏木先生を
目当てに、女子部員しかいなかった合唱部に男子生徒が多数入部。
夏のNコン(NHK全国学校音楽コンクール)に向けて
練習を始める合唱部だが、
まじめに練習しない男子部員と女子部員が対立するようになり……

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プッシュされているようで、雑誌の広告でよく見かけていたのだが、
先輩が買ったというので貸してもらった。
粗は多いんだけど、特に気になったのは以下3点。

・自分たちで作詞した歌詞が結局明らかにならない。
 あえて自分たちで作詞するというエピソードを挿入しているのだから、
 ちょっとは触れてもいいと思うのだが……
 明かされるものだと思っていたので肩すかし。

・視点が変わるのはいいけど、誰の視点なのか、しばらく読み進めないとわからない。
 あえて伏せる、という書き方もあるけど、これはそうする理由がないよね。

・「ドロップを拾う男の子」のエピソードに、
 そこまでの効果があったのか謎。二人をつなぐ意味も謎。

もうちょっと人物の書き込みがあったらもっと良かったんじゃないかなあと
思うんだけど、普通にみんなが「いい話だな~」と思うような話ではある。
「田舎」に「中学生」というノスタルジーを感じさせるような設定で。
「合唱」っていうのが、中学生チックでいいよね。
片想いあり、お決まりの「ちょっと男子、まじめにやりなさいよ!!」もあり、
個々の人物が一つの目的のために集まって関係を変化させていくという、
青春もの・部活もののポイントも押さえていて、
いや~中学生も悪くないね!とにっこりしちゃうような話であった。
桑原サトルを語り手の一人にしていたのが特にいい。
未来がすでに決められていることに対して思うところを書いていた
手紙の内容には、ちょっとしんみり。
コメント
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