ほしおさなえ『紙屋ふじさき記念館 物語ペーパー』
★★★★☆
【Amazonの内容紹介】
大手紙企業「藤崎産業」の記念館でバイトをする百花は、
前社長夫人薫子に気に入られ夕食に誘われる。
そこで、孫で館長の一成が幼い頃から薫子に育てられ
紙への愛情が深くなったことを知る。
ある日、彫金デザイナーの雫を伴い
本社営業課長の浩介が記念館に現れる。
彼は社長の息子で、いとこの一成を敵視し、
記念館不要論を唱えていた。
しかし、百花が和紙を使った新商品のアイディアを
雫に提案したことで、事態は思わぬ方向へ。
『活版印刷三日月堂』に続く、やさしい絆の物語。
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今回も紙の魅力は十分に伝わってきた。
紙商はもうかっても、職人が豊かではなかったというの、
他の品でも見られる現象で、これはシステム的に
どうしようもないのかなあ。
歴史上、商人が目の敵にされて、襲撃の対象になっていたのも
わからないでもない。
生産者が直接売買するのは、今よりずっと難しかっただろうし、
だから商人の存在は不可欠だったのだろうけれども、
「楽して上がりをはねている」という印象は
どうしてもぬぐえない。
実際は販路の開拓ひとつとっても、全然楽じゃないと思うけど。
主人公の自分を卑下する癖は減って、
前向きにいろんなことを考え、アイディアを出し、
それを実現していく様子にわくわく。