先代院長である父の命日は5月である。先だって5月の好日に法事をおこなった。そのあとに精進落としというわけではないが、霊園近くのお寺の境内にあるレストランにいった。開店まで時間があったので店前のベンチに座り待機していたのである。当日はかなり日差しが強かったものの、そのベンチは大きな木の下で木陰になっており、静かで心地よい風が吹き抜けてとても居心地がよかった。しかもすぐ真上では木の中で鶯が数羽鳴いており、この薫風の爽やかさと耳から入る数羽の鶯の協演によって、この半径10m程度の空間は極楽浄土(大袈裟な!)になっていたのである。しばらくの間、この空間にいる自分を含む7~8名の来訪者は、この静寂の中に聞こえる何とも洒落た歌声によって癒しのひと時に浸っていたのである。ところがである。急に「パチパチパチ・・・」という音が聞こえた。なんと隣のベンチに座っていた初老とおもわれる二人連れご婦人のうち一人が拍手をはじめ、この静寂をやぶり始めたのである。<o:p></o:p>