吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

大阪梅田の自動車暴走事故 その2

2016年03月05日 05時24分49秒 | 日記
 TVでコメントしていた医療関係者はみな「胸部大動脈解離で・・」といっていた。確かに原因はそうである。いきなりこれでショックにもなる。

 しかしショックにはなるが、異変を感じて路肩に停車していたにもかかわらずパーキングブレーキすらかける余裕がなかったのは、急激に意識を失ったからであろう。程度にもよるが心タンポナーデではいきなり発症後、僅か数秒で意識消失にまでは至りにくいと思うのである。

 数秒、あるいはものの1秒でもあれば意識消失に至る病態は、大動脈解離が同時に順行性に進み頸動脈起始部を解離させ脳への血液循環が絶たれたことが原因と推察する。

 脳への血液循環が数秒でも立たれれば意識は瞬時に消失する。格闘技などで首を絞め両側の頸動脈を抑えて脳血流を遮断させ一気に失神させる所謂「落ちた」状態である。

 この事例はまずパーキングブレーキに入れる時間的余裕すらなかったのは、瞬間的に意識消失したからであろうと考えるのである。
 そしてその後に心停止に至ったのであるがたぶん心停止はもっとあとであろう。事故直後かあるいは救急隊到着時はまだ心拍動はみられていたかもしれない。