救命センターに勤務していた頃には何例かこの大動脈解離による心タンポナーデによるショックで搬入される患者も診療した。通常、ショック状態とは血圧が低く、手足が冷たく白くなる。そして冷汗著明で体表面の血管は虚脱して見えることはない。ところがこの心タンポナーデによるショックは異なるのである。通常は頸静脈は虚脱して見えなくなるのであるが、だれが見ても分かるくらい累々と膨らんで怒張するのである。ショックなのに頸静脈の怒張・・・これは心タンポナーデしかないという連想は救急救命士国家試験でも、毎年当たり前のように出題されるヤマなのである。今回この事件において原因病名(胸部大動脈解離)がかなり早い段階からすでにマスメディアに発表されている。通常、発表に至るまでには間違いがないようにかなり時間をかけて確認してから発表するので2~3日かかることも多い。しかし病名発表は事故当日で、かなり早く数時間後位だったと思う。なぜこんなにも早かったのであろうか?