牛込・神楽坂 酒問屋 升本総本店の別館「涵清閣」 主人が語る

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酒道楽

2008-03-05 10:18:45 | 酒の本棚(書評?)
憂さ晴らしに酒を飲んでもむしろ逆効果?
嫌なことを思い出した直後にアルコールを摂取すると、かえってその記憶が強められることが東大教授らのラットの実験で明らかになった、という記事がありました。

いやぁな記事ですが、こんな感じで酒の悪に関する研究・事例を並べ立ててお説教をする新聞小説があります。

村井弦斎(1915):酒道楽(岩波文庫緑175-3)、岩波書店、458p

1902(明治35)年に報知新聞で連載された新聞小説です。岩波文庫としての出版が2006年12月ですから、100年越しでの文庫化となります。

内容は、、、主人公の二人の酒飲み(二人とも教師というのも「らしい」です)の酒を巡る失態、失敗、大失敗を書き連ね、最後に酒飲み達も改心・禁酒に至る滑稽小説。
ちょっと、フランス啓蒙主義的なところもあります。

酒に関する失態、失敗と併せ、冒頭のような酒の害悪に関する説教が続きます。

妻君非常の熱心を以って一部の雑誌を二人の前に突きつけ「これは済生学舎の医事新報ですがこの中に東京医学会の宿題報告で医学博士片山国嘉君がアルコール中毒と精神病の関係を論じてあり、医学博士呉秀三君がアルコール中毒の解剖学的変化を講演してあります、先ず片山博士の報告から読んで御覧なさい、最初の処に、エート、(中略)一回の酩酊にても身体組織は異状を呈するものにして即ち大脳皮質に於て神経節細胞に変化を起こすと知れりと、一回の酩酊でも器質的に変化があるのですから貴方方のように幾千百回の酩酊を重ねた人は脳の組織が大変化を起こしていましょう、よくお分かりになりましたか、それからこういう大切な事があります、、、、(後略)

全190話、およそ半年分。この間、こんな話をネタに毎日叱られていた酒飲みって、いるんだろうなぁ。

文庫本の巻末の解説。2006年末ということもあり、飲酒運転による死亡事故の厳罰化など、時勢も反映し、禁酒の話。最後には「大酒家や酒癖の悪い人には、ビールのジョッキ一、二杯分の費用を本代に回して、この小説をぜひとも一読していただきたいものである」と結んでいます。

はーい。

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