牛込・神楽坂 酒問屋 升本総本店の別館「涵清閣」 主人が語る

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技術者の自己満足は面白い!/大草昭:ビール・地ビール・発泡酒

2008-03-12 09:57:34 | 酒の本棚(書評?)
商売柄、書店で酒関連のタイトルの本は、とりあえず手に取ることにしています。
この本もその一冊。

エンジニアらしく、きちんと文献をあたり、しっかり書かれています。

文芸社という出版社、ご存知の方も多いと思いますが、いわゆる自費出版系、持ち込み原稿系の出版社です。

たまに「先般、知人の○○さんが小説を出版されまして、、」と、ご紹介頂く(あるいはご謹呈頂く)ことがあります。
こうした本の幾つかはこの「文芸社」が版元です。

自費出版の本、なかにはベストセラーになった例もあるようですが、目にした限りではストーリーも文章もこなれていない、場合によっては変にペダントだったり、自己満足的なものが多いようです。
(ちょっとエラそうですね。ごめんなさい)。

で、「お酒の本で文芸社かぁ」と思って期待せずに手に取ったのですが、パラパラと眺め「案外面白いかも」と思い、結局買うことになったのがこの一冊。

帯には「ドイツ、日本を主としてビール全般にわたり、その歴史、製造方法、特徴をわかりやすく解説。また、ビール王国ドイツのビール見聞記や、発泡酒・地ビールについても詳しくレポートする」と書いてあります。
編集者(かな?)の愛のなさを感じさせる、テキトーな帯書きです。
(重ね重ねごめんなさい!)。

ところで、本日の別館、ブログランキングの順位はいかほど?

著者はアサヒビールを定年退職された技術者の方。主たる部分は、彼の目を通じたドイツを中心とする海外のビール事情・ビール紀行で、全体の三分の二くらいのボリューム。
実はこの部分は結構自己満足的で、「ふーん」という感じ(ごめんなさい)。
興味深いのは、これらビール紀行の前に置かれている、日本の発泡酒の歴史。
エンジニアらしく、きちんと文献をあたり、上手に引用をとりまぜながら、しっかり書かれています。

発泡酒と、いってもホップスに始まる最近の歴史ではなくて、戦後の「ビールみたいなもの」の歴史です。日本酒でいう「合成清酒」ですね。

イモを使った「イモ・ビール」、イモ・ヒエに加え屑麦を加えた「うまくて、安くて、ビールの倍、酔えます」という「ミリオン・ビーヤ」など。

ミリオン・ビーヤを評する当時の雑誌記事が引用されています。
「値段が安く、アルコールの度が高い、人呼んでデフレビール。(中略)澱粉質八十五%を含む雑酒であるからビールは一本あたり税金が七十円、雑酒は四十円。風味はビールに劣る。これまでのイモ・ビールに比すれば格段の進歩を見せているとはいえ、品質の向上に一層の努力が望まれる。(中略)」

ホップスに始まる発泡酒には、こんな歴史があったんですね。
勉強になりました。

酒ブログランキングにエントリーしてみました→さて、順位はどの位?

牛込・神楽坂 酒類卸 升本総本店
http://e-masumoto.com/default.aspx

コメント
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