牛込・神楽坂 酒問屋 升本総本店の別館「涵清閣」 主人が語る

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日本酒の賞味期限(その1)

2008-03-29 11:51:36 | 酒の情報(酒エトセトラ)
仕事が終わった後の会社の休憩室。
ちょっと一杯、という光景もしばしば。

多くは試飲用のサンプルが評価のため開けられるのですが、時には「ちょっと日付が古いので」という場合もあります。
先般も新潟のある蔵の生酒が冷蔵庫に眠っていました。製造日付は一年前。

眠らせた張本人のH課長。普段はとても厳しい批評家なのですが「コクが出ておいしくなっているねぇ?」
「自分の責任だからそんなこと言っているんじゃない?」とK顧問ですが、彼も「本当だ、○○さん(蔵元さん)には一年寝かしたほうがおいしい、ってアドバイスしておこうか」という会話が交わされていました。

確かに、時間の経過に対し、品質が劣化しないばかりか、良くなるお酒って、確かにあります(主として冷蔵倉庫保存の場合です。温度もさることながら、光による劣化って結構あるようです)。
事実、最近では長期熟成酒も人気が高まっていますし、「ちょっと熟成」の年代別飲み比べセットもあります。ワインでは垂直試飲というやつですね(素敵な在庫処分、という声もありますが)。

ただ、その多くは「蔵元熟成」で、「出荷後熟成」はちょっとマニアック。

その関連でよく聞かれるのが「日本酒って賞味期限ってあるのでしょうか?」という質問。

個人的には
「もともと、冬に醸して搾り、夏を越えたものが『ひやおろし』『秋上がり』としてもてはやされたのですから、これくらいの時間経過はプラスに働きます」
「出荷後1,2年というのは保存状態によって微妙ですが、味は変わるけど良くなる場合と悪くなる場合があります」
「自分では白鷹の生しぼり原酒はケース買いして、4年もの、3年もの、2年もの、1年ものと、並べて楽しんでます」
「封がしっかりしていたのであれば、とりあえず開けて試してみてはいかがですか?開けた瞬間、飛んでもない味だとかよほどのことが無い限り、毒じゃあありませんから」
と答えています。

で、他の方はどのようにお答えされているのでしょうか?ブログとかではなく、メーカー等、それなりにオーソライズされているHPからちょっと整理してみました。

もちろん、ブログの中にも薀蓄は満載!!賞味期限って言及されていますか?酒ブログへ!!

まず、大手では月桂冠さん。Q&Aの中にありました。


Q.日本酒の種類によって賞味期間は異なりますか?
A.はい、異なります。繊細で香りの高い吟醸酒、しぼりたてのフレッシュな風味の生酒など、それぞれの酒の持ち味を楽しんでいただくために月桂冠の商品については、以下の期間をおすすめしています。
本醸造酒・普通酒・・・製造年月から約1年間
吟醸酒・純米酒・生貯蔵酒・・・製造年月から約10ヶ月間(冷蔵保管をおすすめします)
生酒(常温流通可能な商品)・・・製造年月から約6ヶ月間(冷蔵保管をおすすめします)


ふむふむ、常識的ですね。

次に、石川の天狗舞さん。詳しく書かれています

(火入れしたものは)お家の中で比較的温度が低く、光が当らない場所に日本酒を保管していただいたとして、10ヶ月から1年が日本酒の賞味期限の目安となるでしょう。(もちろん開栓前です。)<中略>
通常の保管方法で1年が過ぎたからといって日本酒は飲めなくなるというものではありません。もし、おいしくないな、とお感じになった日本酒はお料理にお使い下さい。ご飯を炊くときにも少し日本酒を使うことで味わいが増します。

生酒には
① 日本酒の原料である米麹に含まれていた糖化酵素などの酵素が多く含まれる
② 日本酒を白濁させる「火落ち菌(乳酸菌の一種)」が存在する
  ことにより日本酒が劣化するのを防ぐためです。
日本酒の温度を下げることにより①②の影響を小さくすることが出来ます。
家庭の冷蔵庫(2~3℃)の場合、生酒の賞味期限は6~8ヶ月程度と考えます
日本酒が生酒の場合、どのような品質の劣化が起こるのかご説明します。
① による影響は、日本酒の成分が酵素により変化を受けることで香りや味わいが劣化するというものです。
具体的には、新酒らしい香りが次第に薄れ、ナッツ類が連想できる重い香りへと変化します。また、ブドウ糖分が増加し甘味が増します。
適度であれば口当たりがまろやかに感じられるのですが、度を越えると甘くだれた味わいの日本酒になります

② による影響は、「火落ち菌」が繁殖することで白濁し、日本酒の香味が悪くなります。
また、火落ち菌は乳酸菌なので繁殖により乳酸が増加し日本酒の酸味が増します。
このような劣化が起こった日本酒は当然おいしくありませんし、お料理に使うこともおすすめできません。


ちょっと長くなったので、お後は別の機会に。

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