ブラックボックス

知り合いのお子さんが亡くなった。

目を離した隙に事故に遭われたらしい。
Ａさんはどんな顔して通夜に行けばいいんだ、行けないと言う。
そして「子供が居ない奴には分からないんだ。（だから普通に行けるんだ）」と言った。
オレだったら許さない。夫婦の仲もおかしくなるだろう、と言う。

私は一生懸命想像しても想像できなかった。
Ａさんの言う事はよく分かる。でも、自分だったらどうだろう。

「ねぇ、そこまでではないけど、kekeも父親を亡くしたんです。どっちが辛いでしょうか。」
「父親は死んでないよ。会おうと思えば会えるんだ。」
「亡くしてもその先があるのではないでしょうか。夫婦で支えあっていくとか。私のように一人ぼっちで子供が亡くなってしまったら、それは辛いことだけれども、二人なら支え合えます。」
「どうだろうね。これがまだ全然他に理由があって矛先があるなら違うけど。」

そこまで人の痛みに共感して怒ったり考え込むＡさんが不思議に思えた。

私だったらどうだろう？
kekeが居ない毎日なんてありえない。

どんなに想像してもブラックボックスだ。

でも、まさか一生そのままではあるまい。
そんな事ばかりを思う。

頭では分かる。
どうしようもならないこと。
おそらく一生逃れる事ができないこと。

でも、そのままではあるまい。

誰かが居れば。
そう思った時、すぅーっと自分の孤独がブラックボックスに入っていく。

自分の事しか考えられない私は少しおかしいのだろうか。
でも、さして違いはあるまい。
結局、他人がどうこうできる事ではないんだから。
何をしたって、起こってしまった現実は変えられない。

私は気持も分からない代わり、蔑みも同情も責めもないだろう。
一生懸命考えて、自分がもしも、もしもそうだったら、同じように愚鈍で、それでも一応は神妙な顔つきで居てくれる人間の方が楽なような気がした。

求められた時だけ、ただただ聞く。
あとは何も想像つきません。
素直に、「ゴメンね、想像つかないんだよ」

そう言われた方がうれしいような気がした。