もう二年半ほどになるが、東京の千駄木でお茶のお道具やお軸などのご商売をなさっている F様から、毎月カタログをお送りいただいている。
いつもながらその品々に関する解説を読みながら、F様の目のたしかさとお道具に対する思いいれなどが感じられ、また選ばれたお道具のもつ表情に心豊かにさせられる。
今月のカタログの中に大和絵の画家・岡田華郷筆の「しずはた図」の短冊のお幅があった。
なたねに 蝶の ものくるい とある。 「蝶」の部分は文字ではなく、二匹のちょうちょが描かれている。
出典は長唄の「賤機(しずはた)帯」であるという。書かれた短冊をみていると、豊かな教養に裏打ちされたことを実感させられる。
謡曲「隅田川」が一中節「峰雲賤機帯(おのえのくもしずはたおび)」そして長唄「賤機帯」に派生したとされる。
名にし吾妻の角田川。その武蔵野と下総の、眺め隔てぬ春の色、桜に浮かぶ富士の雪 (中略)
鐘に桜のもの狂ひ、嵐に波のもの狂ひ、菜種に蝶のもの狂ひ。
何とすばらしい情景であろうか、その一部を切り取った句だが、周りのすべての情景を知るには相当の勉強を要する。
サイト:賤 機 帯 http://www.tetsukuro.net/nagautaed.php?q=68 を読んでみて、また感慨を新たにしている。
先人のなんと心豊かなことか、われわれも古典にふれ日本人としての感性を深めなければならないと感じた。