一、御宿入御注進ニ而、御居間之御庭御中門内御右側ニ罷出御駕拝見候所二て下坐御駕近付候節御辞宜申上候得ハ御戸明
ル、夫より御居間之方向居被為入之上立御供中江会尺いたし御用人間江引取候事
お茶屋にご到着の報を受け、お茶屋お居間のお庭のお中門の右側にまかり出、御駕を拝見できる場所に下座し、御駕が近づいてきたらお辞儀
を申し上げると駕籠の戸が明く、
但御居間御次より下り候而御着之上元の通上り候、右之下口ニハ草履段々出有之、雨天之節ハ手傘ニ而罷出候是
等之儀御次小姓御次坊主等江申付候へハ都合能取計候、又ハ右御路次江罷出候儀御玄関より致出入候茂支無之其時
者残置之側役并草履取召連 御見懸ニ而無之所江退去御着之上御中門外ニ早速罷越候様申付置候事
お居間お次より下がって、御着の上元の通り上がる、下の口には草履が並べられ、雨天の時は手傘にて罷りで、これらの事は御次小姓や
お次坊主へ申し付ければ都合よく取り計らってくれる。または御路地へ罷り出るのに御玄関より出入りするのも支障なく、その時は残っ
ている側役や草履取りを召し連れ、殿様のお目かかりにならないように退去し、御中門外に罷り超すように申し付け置いている。
一、御着座之上御用人より案内有之御居間御入側之入口二枚屏風之側江脇差を脱、入口之御敷居内御入頬にて御辞儀申上
御障子際御敷居之所まてニ罷出是江登御意之上御居間江摺入、御一ト通御意被為在御手熨斗頂戴之仕、左江開下り御次
ニ而帯剣御用人間江参り候事、付札此召出より御人払ニて候事
殿様お着座の上用人から案内がありお居間お入側の二枚屏風の側へ脇差を置き、入り口敷居内に入りお辞儀申し上げ、障子きわの敷居の所まで
まかり出、入るように御意があってお居間に摺り入り、一通りの御意がありお手熨斗を頂戴し、左へ下がりお次の間にて脇差をさし、用人の間
へ参ること、この召し出しは御人払いの上である。
但此熨斗之跡ニ而御人払之御用も有臨時之御模様ニ可應事
この熨斗の跡に別に御人払いの御用も臨時にあることもあり対応すべきこと
一、右之通ニて被相済、猶被召出御吸物御酒御肴一種御祝被遊右之御残於御前頂戴被仰付候間暫御咄申上下り候上、御用
人江御禮申上候事
以上のように相済み、御吸物やお酒・肴一種お祝い遊ばされ、残りをご前にて頂戴を仰せつけられ、しばらくの間お話申し上げ、下がったうえ
で用人へお礼(挨拶)をすること
但此召出之節ハ初之通御辞儀申上直ニ御縁側御向通宜キ程之所江罷出候事
この召し出しの時は、はじめの通りお辞儀し縁側むこうへ通り、よきほどの所へまかり出ること
一、右畢而於御用人間猶御吸物御酒御肴一種一汁三菜之支度をも被下候間、頂戴之上猶御礼申上候事
以上のことが終わって、用人の間で猶御吸物やお酒・肴一種一汁三菜の支度もあり、これを頂戴しお礼申し上げること
但是ハ御前ニて之頂戴已前ニ頂戴之事モ有之候、尤此頂戴ハ御断申上候儀茂不苦候事
但しこれは、ご前で頂戴する以前に頂戴することもある、これは御断りしてもよい
一、本行御前通りニ而頂戴ハ以前より之御極ニて、文化十一年之各別御倹約中茂御様子違不申候事
これらのことはご前で頂戴することは以前からの決まり事で、文化11年の格別のご倹約中も様子は変わることはない
一、右相済御用不被為在候ハゝ引取可申旨御用人江懸合、御様子ニ應し引取候尤於熊本御意伝之稜付御用人より受取候事
これらの事が終わり御用もない様であれば引き取るべく用人に懸けあい、様子に応じ引き取ること、熊本への御意伝達のことがあれば、用人よ
り受け取ること。
一、御茶屋引取於旅宿衣服初之通着替直ニ出立私宅江着之事
お茶屋を引き取り旅宿で衣装などを着替え出立し自宅へ帰ること。
一、帰宅之上何時比被遊御着奉恐悦候、例之面々江御意之趣於御花畑可相達旨御用番江申越候得者御用番より廻文有之候事
帰宅の上いつ頃御着されるか恐悦奉る例の面々へ、御意の趣をお花畑邸へ達するべく御用版へ申し達せば、御用番より回し文が行われること。
(この項了)