Sightsong

自縄自縛日記

トニー・ウィリアムスのメモ

2008-01-02 23:38:52 | アヴァンギャルド・ジャズ
天才ジャズドラマー、トニー・ウィリアムスは、1997年に51歳で亡くなった。別の手術のときに心臓発作が起きたという理由だったと思う。昼ごはんを食べながらスポーツ新聞を開いたら突然の訃報、あまりにも驚いたことを覚えている。あれからもう10年以上が経つわけだ。

亡くなる前年の1996年、青山のブルーノート東京に、トニー・ウィリアムスを聴きに行った。マルグリュー・ミラー(ピアノ)、アイラ・コールマン(ベース)とのトリオだった。新生ブルーノートレーベルから何枚も公表していたグループから、ウォレス・ルーニーやビリー・ピアースのフロントが抜けてシンプルになった形だった。初めて実際に観るトニーのドラミングは、文字通り目が覚めるようだったが、なんだか精気がないように見えた。

張りきって早めに入った自分の席は、マルグリュー・ミラーの大きな尻の真後ろ。演奏が終ったとき、ピアノから曲目を書いたメモが足元に落ちたのを拾った。あっと思って拾い、何となくそのまま大事に取っておいた。さっき当時の日記帳を開いてみたら、まだあったので嬉しくて笑ってしまった。しかし、トニーが書いたものか、マルグリューが書いたものか、他の人によるものか、わからないままだ。

曲は、①グリーン・ドルフィン、②フール・オン・ザ・ヒル(ビートルズの曲)、③エインシェント・アイズ、④ジス・ヒア(ボビー・ティモンズの曲)、⑤ピアノソロ、⑥クリアウェイズ、となっている。これを書くだけでも、透明感があって鮮烈な演奏が甦るようだ。裏にはたぶん別のステージでの曲目が書かれていて、例えばディア・オールド・ストックホルム、イエスタデイズ、リラクシン・アット・カマリロなんかの曲も演っている。いまさら無理だが、それらも聴いてみたい。

 
トニーのライヴメモ(表と裏、1996年拾う)

トニーの最後の頃は、「トニーがトニーの真似をしている」といった批判をする人もいた。あの演奏を生み出したのは、パイオニアとして他ならぬ彼なので、あまりにもオリジナルな演奏をマンネリとされるのは聴き手の勝手な理屈だろうと思った。その一方で、たしかに、突き破るようなインパクトが薄れていたことも事実だろう。

その意味で、1995年にデレク・ベイリー(ギター)、ビル・ラズウェル(ベース)と組んだグループ「アルカーナ」による録音『The Last Wave』(DIW)は、メンバーの組み合わせ、演奏の衝撃ともに驚きだった。聴くたびに脳を揺さぶられるような快感を覚える。そのデレク・ベイリーも既に鬼籍に入っている。トニーの参加したアルバムは数多くあり、そのごく一部しか聴いていないが、私はこれがもっとも好きだ。


アルカーナ『The Last Wave』(DIW、1995年)