Sightsong

自縄自縛日記

『科学の眼 ニコン』

2008-01-15 23:59:37 | 写真

科学映像館」の配信映像に、『科学の眼 ニコン』(1966年)が加わっていた(>> リンク)。何日も前から観ようと思っていたのだが、今日、帰宅時の電車で隣に立ったおじさんが、バライタ紙の技術的な解説などの本を読んでいた(何というタイトルだろう?)ので、なぜか気分が盛り上がり、さっき観た。

これが本当に面白い。小倉磐夫『国産カメラ開発物語』(朝日選書、2001年)で読んだことがあるだけの姿を、映像としてみることができた。

まず、昔の「坩堝(るつぼ)法」による光学レンズの製造からはじまる。巨大な湯飲み茶碗のようなこの坩堝は粘土で作られていて、成型から焼き上げまでに数ヶ月を要したものだ。それが炉の中に入れられ、スコップのようなものでレンズ材料が投入され、出来て冷えたレンズ塊は坩堝ごと豪快に壊される(!)。もうニコンにも、坩堝は残されていないそうだ。白金坩堝といえばフジノンレンズが有名だったようだが・・・。

その大きな破片から、まともな箇所だけを切りとり、サクマドロップのような形にし、研磨し、精度をチェックする。これらの作業も、ニコンFの製造も、多くの工員が淡々と作っている。40年以上を経てネット経由で観ているこちらは一々興奮する。

映画では、医学用カメラ、顕微鏡、双眼鏡などいろいろな製品を紹介しているのだが、なかでも、ミリあたり1260本もの解像力を達成した(普通のカメラ用レンズは1桁落ちる)、ウルトラマイクロニッコール29.5mmF1.2の映像もばっちり登場する。

私はニコンにはそれほど縁がなくて、使ったことがある8ミリカメラ(ニコンR8)やフィルムスキャナなどもう手元にない。唯一、引き伸ばし用レンズのスタンダードともいえるEL-Nikkor 50mmF2.8だけは定期的に使っている。それでも面白いのだから、ニコンファンにはたまらないだろう。博物館に行った気分だ。


小倉磐夫『国産カメラ開発物語』(朝日選書、2001年)


関係ないが、ニコン大井町工場の前は「光学通り」。去年所用で訪問した際に忘れず撮影した(笑)。