Sightsong

自縄自縛日記

渋谷毅のソロピアノ2枚

2008-01-07 23:59:07 | アヴァンギャルド・ジャズ

『ケンちゃんの晩めし前』(テレビ東京)に再出演した。排出権の話。録画しておいて、帰宅後見たら、やっぱり緊張していた(笑)。昨年収録時に、またテレビカメラをじろじろ見させてもらった。たぶん16ミリカメラで使われるCマウントはソニーマウントというそうだが、レンズはキヤノンのズームレンズ。200ウン十万円するそうだ。業務用は高い。

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渋谷毅のソロピアノ作が同時に2枚出た。『famous composers』と『famous melodies』(Yumi's Alley)だ。ソロピアノアルバムとしては、1982年の『渋やん』(アケタズディスク)、2002年の『Afternoon』(onoff)に次ぐものということになる。

ジャズピアニストの誰が好きかと言われたら、バド・パウエルと渋谷毅と答える。渋谷毅はよく新宿ピットインの後ろのほうでお酒を飲んでいる(もちろん本人以外の出演のとき)。ライヴとなると、曲やメンバーを照れくさそうに紹介したり、オーケストラではオルガンをファンキーに弾いたり、それでいつもボタンダウンのシャツにジーンズ。ピアノとなると、魅力を一言でまとめることが難しい。こけおどしとかハッタリとかいったものが全くなくて、テクの見せびらかしもなくて、和音の響きがたまらなく素敵で、メロディのつなぎがただ良くて、という感じだ。歌伴も巧くて、浅川マキとか酒井俊とか高田渡とか、とても素晴らしかった。

今回の2枚を何度か聴いてみて、これまでの作品よりもかしこまっているというのか、丁寧というのか、シンプルというのか、少し違う感覚をおぼえた。あらためて『渋やん』を聴くと、ノリや装飾音をこれまでになく感じるようになる。

『famous composers』ではなんといっても「Lotus Blossom」。渋谷毅オーケストラの『ホームグラウンド・アケタ・ライブ』(Platz)でも、1曲だけソロで演奏している曲だ。コード進行の練習のように循環し、発展していく演奏はなぜかしみじみとする。これも、今回のほうが丁寧にゆっくりと弾いている。

『famous melodies』には、浅川マキが繰り返し歌ってきた「My Man」が収められている。どうしようもない男のことを諦念にも似た感じで変に明るく歌うメロディで、エンディングはマキが歌い終わったときの様子を思い出させてくれる(徹夜明けで早朝の街を歩いている感じか・・・希望ではなく、妙に疲れて眩しくて高揚している雰囲気)。前ソロ作『Afternoon』でも、マキに関連の深い「Beyond The Flames」を演奏していたので、マキファンの自分にとっても嬉しいところだ。

「Polka Dots And Moonbeams」はビル・エヴァンスの『Moonbeams』での演奏と比べてしまう。腐りかけた果物(もちろん、褒めているのである)のようなエヴァンスの演奏よりもやはり端正だが、これも素晴らしい。

「Danny Boy」や「Jeanie with the light brown hair」は、森山威男とのデュオ『SEE-SAW』(onoff)でも演奏しているので聴き比べた。これはソロかデュオかという違いが大きいように思った。ドラムスとのデュオでは、今回のようにピアノソロだけで丁寧に構成するのとは違うということだろうか。ところで、『SEE-SAW』には坂本九の「見上げてごらん夜の星を」が入っているが、実は九ちゃんが歌ったときも渋谷毅が編曲を手がけていたということを、最近知った。

何度聴いても味わいがあって、良いものは良いのだ。


『famous melodies』と『famous composers』


『渋やん』


『Afternoon』