『けーし風』(新沖縄フォーラム)の読者の集いに参加してきた(2008/4/26、神保町区民館)。参加者は6人+2次会に1人と少な目。
●やんばるの森にこっそりと、しかし実は激しく作られている林道について
本誌の記事においては、補助金頼みのいびつな構造のことが書かれている。実際には、日本の林業全体を覆う問題だと捉えるべきだろう。建設の目的が曖昧で、しかもその目的に見合うかどうかもわからない、作ること自体が目的化している自然破壊は、土建国家である日本の構造であることは明らかだ。かつて本多勝一は、『日本環境報告』(1992年、朝日文庫)などにおいて、足元の環境破壊を見ることを敢えて回避し、しがらみのない世界の環境破壊についてのみとりあげる「先生方」や報道のあり方を批判していた。
勿論、日本に遍く存在する問題であり、やんばるについても同様にとりあげられるべき問題であることは当然である。森林経営の補助金ひとつにしても、日本共通の問題と、やんばる独自の問題とに分けて考えるべきと思うわけだ。たとえば下刈りなどの森林管理も、やんばるの亜熱帯照葉樹林ではタブーな方法が多くあるとされているが、どうも補助金適用など事業実施にあたっては、本土と同様の一律な考えがなされているのではないかという疑念がある。
会では、「見えない世界のなかで道路事業を展開するのでなく、明示しなければならない」、「森林が多くクルマ社会の欧州においてどのような解決策が考えられているのか探るべき」といった意見が出された。後者についてはいままで思いつかなかった見方であり、ちょっと調べてみようと思う。
●米兵の起こす犯罪という「構造的問題」について
先日の北谷の事件を契機に気づかされたことだが、米軍兵が基地外に住み、基地に外から通っているという実態。「良き隣人」でありながら住民登録もされていないので、全貌が把握されていない。住宅は1軒1軒造られるので、規制が困難ということが、本誌においても書かれている(北谷町砂辺区長)。
会では、「貸家だろうし、オーナーは住民票のない者に通常貸すわけはないから、「思いやり予算」の使われ方などを明らかにすべき」という意見があった。「思いやり予算」で基地外住居を作らせておきながら、米兵が事件を起こしたら「勤務外」だとするのは矛盾だという指摘もあった。
2008年3月23日の沖縄県民大会で、自らの性的暴力による被害を語ったオーストラリア人・ジェーンさん(仮名)の件について、参加者から教えていただいた(→沖縄タイムスの記事)。加害者の米兵は、東京地裁に300万円の支払いを命じられながら逃亡・帰国し、そのまま行方不明となった(※)。この支払いを、日本の予算から行うという検討がなされているようだ。この場合、なぜ国税を充てるのか、障壁なく受け取ることができるのか、といった問題があるということになる。そのような歪みの前の大きな歪みについて、もっと一般的に周知されるべきということか。
(※)最初、「亡くなった」と誤記していました。誤解でした。
【参考】
●『けーし風』2008.3 米兵の存在、環境破壊
●『けーし風』読者の集い(4) ここからすすめる民主主義
●『けーし風』2007.12 ここからすすめる民主主義、佐喜真美術館
●『けーし風』読者の集い(3) 沖縄戦特集
●『けーし風』2007.9 沖縄戦教育特集
●『けーし風』読者の集い(2) 沖縄がつながる
●『けーし風』2007.6 特集・沖縄がつながる
●『けーし風』読者の集い(1) 検証・SACO 10年の沖縄
●『けーし風』2007.3 特集・検証・SACO 10年の沖縄