浦安市郷土博物館は、わりに近いところにあるので、休日にときどき遊びに行く。今日は、苗木の無料配布があるというので散歩と買い物を兼ねて、午後行ってみた。凄い行列だったが、紫オモトをいただき、ついでにオリーブとブルーベリーの苗木を買った。どちらも千円だった。
それにしても、毎年の植木市といい、この立派な博物館(無料)といい、東京ディズニーランドを抱える浦安市の財政的な余裕が感じられる。100円のコミュニティバスである「おさんぽバス」も赤字だと聞いたが、隣の市川市がコミュニティバスの赤字についてことさらに問題視するのとは対照的に見える。(赤字になることは最初から充分予想されたことであり、そもそも、コミュニティバスはそのようなものではない。黒字化に向けた努力は当然だが。)
浦安市郷土博物館の常設スペースは充実している。昔の家や町並みを再現した空間、漁業に使っていたべか舟や漁具、生活の様子、三番瀬や境川の生態系などが展示されていて、ひとつひとつに見入ってしまう。何によらずそうかもしれないが、三番瀬の保全が保証されていないいま、機能や経済性などを云々する前に、このようにミクロな視点から実感することはとても大事なことだとおもう。(余談だが、堂本千葉県知事は、三番瀬の大規模埋立を止めたことの功績があったが、そのあとの議論が進展を見せていない。第二湾岸を三番瀬の上か地下につくるという噂も消えていない。来年の千葉県知事選が不安である。)
博物館の常設展示解説書(とても良く出来ている)
現在は、『浦安の魚たち』と題した企画展もやっている。小ぶりな企画展示室だけなのだが、何周もしてしまうくらい面白い。オリエンタルランドが潰した「大三角」の先、新浦安近辺まで埋立てられていなかったころの空中写真が展示されていて、海苔養殖の網が整然と配置されている様子が一目でわかる。山本周五郎『青べか物語』でも、「先生」がべか舟に乗って逍遥していたあたりでもある。このあたりの写真―――貝をとったり、投網をしたり、海苔養殖の世話をしに来たり―――も、わかっていても驚いてしまう。
魚そのものは、剥製や標本や模型が飾られている。イシガレイと、環境変化に伴いイシガレイにとってかわったマコガレイ。江戸川や境川にまだ多くいるマハゼ。東京湾を代表するスズキ。高級寿司ネタとなってしまっているギンポ。そして、絶滅危惧種となっているアオギス。
特に、このアオギスのことを、博物館では指標生物的に捉え、活動しているようだ。「小さないのち」が消えゆきつつあることは、人間には直接関係しないかもしれないが、実は生態系、地域環境、地球環境、精神、すべてにおいて影響しているという考えであり、これを重視するか軽視するか、が指標となるわけだ。これが言わなくてもわかる類の話ではないことは明らかだ。
●参考 『青べか物語』は面白い