Sightsong

自縄自縛日記

前泊博盛『沖縄と米軍基地』

2011-10-06 01:29:12 | 沖縄

前泊博盛『沖縄と米軍基地』(角川書店、2011年)を読む。

本書には、普天間基地移設問題が、米軍のグアム移転や辺野古の高機能な新基地建設のオカネを日本政府が出す仕組に他ならないこと、在沖米軍の扱いが治外法権的であること、沖縄の基地依存経済は意図的に作られたものであることなどが、裏付けとなる情報とともに示されている。仮に沖縄では常識であっても、ヤマトゥでは常識か否かを問う以前に、無関心とエゴイズムが充満している。

いくつか発見があった。

○沖縄の海兵隊の主力部隊が1956年に岐阜県と山梨県から移転してきた理由は、戦略上の理由ではなく、海兵隊の「素行の悪さ」にあった。すなわち、根本的な原因は絶たれることはなく、そのまま犯罪が沖縄に輸出されたということである。
○普天間移設のすべての計画はオスプレイ配備のためである。事故の多いオスプレイを配備するためには、海上ヘリ基地が望ましい。せっかく開発した輸送機を配備するためだ、とは本末転倒である。
○日米両政府は、グアム移転費用の日本政府負担割合を小さく見せるため、架空予算を計上するという共謀を行っている。
○米国は近年明らかに世界戦略を変更し、在沖米軍兵力の削減を進めてきている。それを隠して水増ししたグアム移転費を日本政府が支払うとは、どういうことか。
○現在でも在沖米海兵隊不要論が米国で出ているが、米国は90年にも米海兵隊の全面撤退を検討していた。
○米国は、ペリーが日米条約締結に失敗した場合、琉球を占領する予定だった。
○沖縄国際大学への米ヘリ墜落事件を経て、事故現場への米軍の立ち入りを「事前承認を受ける暇がないとき」に限って認めるとの「改善」がなされた。しかし、米軍に渡してある「本物の合意事項」は、「事前の承認なくして」と密約文書のままであった。国民の眼を欺いてのその場しのぎでは、次に墜落事故が起きても同じような横暴な対応が取られるだろう。
○沖縄の基地依存経済は自然発生的に生まれたのではない。すなわち、生産抑制、米国からの輸入促進、円高政策による産業空洞化など、米軍なしにはやっていけない社会を創り出してしまった。しかし、現在の依存度は低くなり、他の用途で使ったほうが遥かに大きい経済効果が得られるl。
○経済自立化を目指すはずの振興予算を得た市町村では、振興策をこなすために借金をして逆に市債残高が増え、失業率が増大し、法人税の減少による「基地依存度の上昇」を招く結果となっている。
○沖縄に向かう飛行機が本島に近付くと低空飛行するのは、嘉手納などの米軍機に安全な航空路を奪われているせいで、決して「観光客にきれいな海を見せる」サービスではない。
○日米地位協定は圧倒的に日本が不利な取り決めである。ところで、例えばジブチで自衛隊基地の整備が進められているが、それに関するジブチ政府との取り決めは、日米地位協定の米軍の立場に自衛隊を置き変えた形になっている。これまで差別・抑圧されてきた側が加害者の側に立つという形は、まるで『人類館』ではないか。

●参照
屋良朝博『砂上の同盟 米軍再編が明かすウソ』
渡辺豪『「アメとムチ」の構図』
○シンポジウム 普天間―いま日本の選択を考える(1)(2)(3)(4)(5)(6
押しつけられた常識を覆す
『世界』の「普天間移設問題の真実」特集
大田昌秀『こんな沖縄に誰がした 普天間移設問題―最善・最短の解決策』
オスプレイの模型