ガトー・バルビエリのDVD、『Live from the Latin Quarter』(Image Entertainment、1999年録画)を観る。ガトーは1932年生まれだというから、このとき60代後半である。
ジャケット写真と実際の映像とは違うのだが、まあ似たような伊達男ぶりで、黒い帽子、サングラス、赤い柄物のマフラー、はだけた胸元と胸毛、ぴしりと折り目のついたズボン、サックスを吹きながらも手からはなさない煙草。『LEON』のチョイ悪オヤジなんてどこかに吹き飛んでいくし、「スターにしきの」よりも遥かにエグい。
コールマン・ホーキンスとはまた個性の違う塩っ辛いサウンドは相変わらずだ。いきなりロングトーンばかり、うわこれはずっとロングトーンで通すつもりかこのオヤジ、と怖れながら聴いていると、一応細かなフレーズもまじえてくる。そしてときどき意味不明な叫びを発する。ほとんどこれは、最初から最後までクライマックスのようなものだ。もしかするとこのオヤジは、黒メガネの向こう側で、自ら感涙を浮かべているのではないか。
そして十八番の「Last Tango in Paris」。これまでヨアヒム・キューンのピアノトリオによる演奏が好きだったが、やはり本家は盛り上がる。
黙っていてもここまで意味不明な存在感を発散できれば本望である、キャラ違いの私には永遠に無理だろうが。
●参照(ガトー・バルビエリ)
○ザ・ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ
○ドン・チェリーの『Live at the Cafe Monmartre 1966』とESPサンプラー
○スペイン市民戦争がいまにつながる