新宿武蔵野館で、ソイ・チェン『アクシデント(意外)』(2009年)を観る。ジョニー・トー製作作品である。入場したらクリアファイルをもらった。うふふ。
ルイス・クー率いる殺し屋集団の物語。『ピタゴラスイッチ』もかくやと思わせるトリッキーかつアクロバティックな殺しは、美学さえも感じさせるものだ。手下にはやはりトー映画常連のラム・シュー、敵とみなされる保険会社の男は『ブレイキング・ニュース』が印象的だったリッチー・レン。殺しの途中で誤算と事件が重なり、クーの中で疑念が増幅していく。
確かに殺しの手口は映画においてしか成り立ちえない見事さであり、それを披露する映画的手法もまた見事。疑念が狂気に昇華していく様は、フランシス・フォード・コッポラ『カンバセーション・・・盗聴・・・』を思わせるもので、どこに世界が転んでいくのか、寸止めのため、なかなか息をつくことができない。
勿論、傑作である。もっとも、「どうかしている」くらいに映画的な仕掛けと倒錯を詰め込むのがジョニー・トーの映画だと断言していいわけであり、ここでは、監督という地位を得ていないためか、そこまでの世界は構築されていない。
今回は、新たなそっくりさんを見出すことはできなかった(笑)。またカメラネタも、昔の安いコンパクト・レンジファインダー機がぶらさがっている中古カメラ店が一瞬登場したのみ。
ところで、来春に『Triangle/鐡三角』(2007年)が日本公開されるようで、これでまた生き延びる甲斐ができたというものだ。
●ジョニー・トー作品
○『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』(2009)
○『文雀』(邦題『スリ』)(2008)
○『僕は君のために蝶になる』(2008)
○『MAD探偵』(2007)
○『エグザイル/絆』(2006)
○『エレクション 死の報復』(2006)
○『エレクション』(2005)
○『ブレイキング・ニュース』(2004)
○『柔道龍虎房』(2004)
○『PTU』(2003)
○『ターンレフト・ターンライト』(2003)
○『スー・チー in ミスター・パーフェクト』(2003)※製作
○『デッドエンド/暗戦リターンズ』(2001)
○『フルタイム・キラー』(2001)
○『ザ・ミッション 非情の掟』(1999)