NHK・ETV特集で放送された『ガタロさんが描く町~清掃員画家のヒロシマ~』を観る(2013/8/10)。(>> リンク)
広島市営の「基町アパート」。戦後の復興事業として建設された「小さなまち」であり、その中には、商店街がある。
ガタロさんの名前は自分で付けた渾名。川が好きな彼は、川に棲むという「河太郎」こと「ガタロ」を自分になぞらえた。
もう30年もの間、ガタロさんは、ひとりで商店街の清掃を請け負っている。月給15万円、仕事はきつい。ごみが捨てられ、ガムがこびりついている通路。それだけでなく、いくつも設置されているトイレ。ガタロさんは、猛スピードで、しかも丁寧に、綺麗にしていく。真冬でも素手でこなし、しかも、手を抜いてもいいような便器の金属パイプまでひとつひとつ磨く。文字通り、真似できない仕事ぶりである。
この仕事に就いた当初、長くは続かないだろうと思ったという。しかし、ガタロさんを支えたのは、商店街の人びととの触れ合いであり、仕事のあとに描く絵であった。
商店街の一角にあつらえた「アトリエ」において、ガタロさんは、掃除用具の絵を描いていく。掃除と同様にスピーディーな手業で、拾ってきた画材をつかって、掃除用具をいとおしむように。ガタロさんにとって、掃除用具は人生の大事な伴侶なのである。決して借り物ではない芸術の世界がそこにある。
この6月に、記者のDさんに、この基町アパートを案内していただいた。シャッターを下ろした店が多いものの、思い返してみれば、確かに手が行きとどいている「人間のまち」だった。その、人間の手こそが、ガタロさんの手でもあったとは。
番組では、商店街の上につくられた歩道が紹介されている。団地や商店街を見渡せるように設計されたものであったという。わたしが歩いたときにも、お年寄りがおしゃべりをしていたり、背伸びをしたい若者が集まっていたりした。設計思想は、いまも生きているということか。
Dさんご夫妻と一緒に入った「華ぶさ」で食べたオコゼは、旨かった。また行きたくなってくる。
ところで、そのDさんが昨日教えてくれた。NHKで8月24日(土)23時から、『ドキュメンタリードラマ・基町アパート』が放送される(>> リンク)。アパートの成り立ちや特徴を生かしたドラマのようで、これは見逃せない。
●参照
○旨い広島