ハノイに行くのだと言うと、師匠の松風鉱一さんが、巧い親子のサックス奏者がいるらしいとチェンマイで聞いた、と教えてくれた。それで、旧市街にある「Jazz Club Minh」に出かけた。
ライヴは9時からだ。8時前には客がひとりもいない。店内には、そのマエストロがウェイン・ショーターと並んで撮られた写真が飾ってあった。コーラを飲みながら待っていると、欧米人がだんだん集まってきた。
編成は、クエン・ヴァン・ミン(アルトサックス)と息子のクエン・ティエン・ダック(テナーサックス)、それからキーボード、エレキベース、ドラムス。スタンダードばかり、「ディサフィナード」、「イージー・リビング」、「リカード・ボサノバ」、「イン・ザ・ムード」なんかを演奏した。
はっきり言って、ベースとドラムスはリズムを単調に刻んでいくだけでまったく面白くない。息子のテナーはどうもはっきりしない感じで、時に良いアドリブ・フレーズを吹くが、響く低音やフラジオ奏法による高音を混ぜるのがあざとい気がして、好きになれない。ムード歌謡を聴きにきた気分だ。ところが、親父のアルトサックスだけは綺麗な音色、澱みないアドリブなど巧く、別物だった。
帰る際にCDを買った。いくつも書いてあってわけがわからないので、クエン本人にフェイヴァリットを尋ねて、『Birth '99 The Traditional Music of Viet Nam with Jazz Style』というのにした。ちょっと話したが、やはりチェンマイで「Bamboo Sax」を作っているドイツ人は良く来ると言っていた。また、日本人なら廣木光一と演奏したことがあるぞ、とのことだった。
帰国してから聴いた。最後に1曲、「ミスティ」を廣木光一とデュオで共演している。どうもこのCDは、唯一日本で発売された『バース』(PIRKA MUSIC)と同じもののようだ(>> リンク)。本人はそんなこと覚えていなかったに違いない。いい加減だなあ(笑)。
ところで、ライカのレンズ、ズミターを使って撮影してみた。光がまわらないような状況で、このオールドレンズを解放で使うとどんなものかと思ったが、やはり、限界がもろに出ている。ボケも煩雑だ。しかし、クエンも1950年代生まれのようだし、敬意を表して1951年製造のレンズを使ったということでよしとする。それに、50年前に感度3200のフィルムなんて考えられなかったのだ。その意味では、当時ありえない撮影条件でレンズを使っていることになる。
クエン・ヴァン・ミン Leica M4、Summitar 50mmF2、TMAX3200、オリエンタル・ニューシーガルVC-RPII、3号フィルタ
グラス Leica M4、Summitar 50mmF2、TMAX3200、オリエンタル・ニューシーガルVC-RPII、3号フィルタ
クエン・ヴァン・ミンとその息子 Leica M4、Summitar 50mmF2、TMAX3200、オリエンタル・ニューシーガルVC-RPII、3号フィルタ
本を読む客 Leica M4、Summitar 50mmF2、TMAX3200、オリエンタル・ニューシーガルVC-RPII、3号フィルタ
ハノイの夜 Leica M4、Summitar 50mmF2、TMAX3200、オリエンタル・ニューシーガルVC-RPII、3号フィルタ