噺家の故・桂歌丸師匠は岩魚釣りの名人でもあったと言う。その師匠が書いた岩魚釣りを中心とした釣り談義。釣り自体だけでなく、釣り友達、釣り道具、そして釣る環境まで話は多岐にわたる。
そもそも落語を愉しむことがないため、師匠の人となりについてもTV番組「笑点」でみたことくらいしか知らない。その番組のスタート時から50年も出演していたことすら、巻末の解説を読むまで知らなかった。そんな大御所が、こんな釣りの大家でもあったとは驚き。師匠の釣りも、もはや一芸の域に達していたことが本書で容易に知れる。
マジメな内容もユーモラスな書きぶりで読み易いが、釣り用語については多少の知識が必要。特にエサとなる虫などは地域ごとの呼び名があることもあり、数回ネット検索した。そこまで調べなくても、そういうエサがあると読み進めれば良いのだが。全般に楽しいが、環境や釣り人のマナーの悪化に関する稿は筆鋒鋭く、容赦はない。ぴしゃりって言葉が似合いそうな。
釣りも歌丸師匠も知らない自分だが、十分に楽しめた。
2023年12月28日 自宅にて読了