「星ちりばめたる旗」小手鞠るい
米国在住・小手鞠るいさんの新刊。
アメリカに渡った日本人3世代の物語。
戦前から戦中、戦後へと時代をどう乗り切ったのか?
「渾身の一作」というフレーズが大げさでない。
読んで良かったと思える作品だ。
P18
「何も考えてない。ただ、ぼーっとしてただけよ」
言葉とは裏腹に、私はさっきから胸のなかで、ゴーギャンの絵のタイトルを反芻していた。
『われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか』――
ボストン美術館所蔵 D'où venons-nous ? Que sommes-nous ? Où allons-nous ?
(なんとなく「忍者武芸帳―影丸伝」のラストシーンを思い出す)
P87
広島と長崎に落とされた原子爆弾は、ナバホ、ホピ、プエブロ、山岳ユテの人びとの暮らしている土地から無断で採掘されたウラニウムによって製造されたものであること。アメリカ政府による度重なるウラニウムの採掘――しかも、その危険性をまったく告知することなく――によって、先住民たちの癌や腎臓病の発生率が異常なまでに増加していること。核爆発実験、放射性廃棄物の格納場所として、常にネイティブアメリカンの保留地が選ばれてきたということ。
P367
「何者でもない者として生まれてきた小さき者が、何者かになろうとして懸命に努力し、結局、何者にもなれないまま死んでいったとしても、その人が生きてきた時間は、決して無駄なものではないのです。(後略)」(ここのところは、実際読んでみて)
【おまけ】
欲を言えば、日本人強制収容所の生活シーンをもう少し詳細に描いて欲しかった。
この箇所を切り取れば、「草花とよばれた少女」になるのでしょうか?
【新聞での紹介】
【ネット上の紹介】
1916年、既にアメリカに暮らす大原幹三郎のもとへ「写真花嫁」として嫁ぎ、佳乃は海を渡った。そこから全ては始まった。夢が叶うと言われる大地で日々を積み上げていく一家。彼らはやがて時代の激流に呑み込まれていく。日本人というルーツに苦しめられた祖母、捨てようとした母、惹かれる「私」―これまでの百年、そして今のこの世界の物語。