【ぼちぼちクライミング&読書】

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「星ちりばめたる旗」小手鞠るい

2017年11月27日 20時21分14秒 | 読書(英・米)


「星ちりばめたる旗」小手鞠るい

米国在住・小手鞠るいさんの新刊。
アメリカに渡った日本人3世代の物語。
戦前から戦中、戦後へと時代をどう乗り切ったのか?
「渾身の一作」というフレーズが大げさでない。
読んで良かったと思える作品だ。

P18
「何も考えてない。ただ、ぼーっとしてただけよ」
 言葉とは裏腹に、私はさっきから胸のなかで、ゴーギャンの絵のタイトルを反芻していた。
『われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか』――
Paul Gauguin - D'ou venons-nous.jpg
ボストン美術館所蔵 D'où venons-nous ? Que sommes-nous ? Où allons-nous ?
(なんとなく「忍者武芸帳―影丸伝」のラストシーンを思い出す)

P87
広島と長崎に落とされた原子爆弾は、ナバホ、ホピ、プエブロ、山岳ユテの人びとの暮らしている土地から無断で採掘されたウラニウムによって製造されたものであること。アメリカ政府による度重なるウラニウムの採掘――しかも、その危険性をまったく告知することなく――によって、先住民たちの癌や腎臓病の発生率が異常なまでに増加していること。核爆発実験、放射性廃棄物の格納場所として、常にネイティブアメリカンの保留地が選ばれてきたということ。

P367
「何者でもない者として生まれてきた小さき者が、何者かになろうとして懸命に努力し、結局、何者にもなれないまま死んでいったとしても、その人が生きてきた時間は、決して無駄なものではないのです。(後略)」(ここのところは、実際読んでみて)

【おまけ】
欲を言えば、日本人強制収容所の生活シーンをもう少し詳細に描いて欲しかった。
この箇所を切り取れば、「草花とよばれた少女」になるのでしょうか?


【新聞での紹介】


【ネット上の紹介】
1916年、既にアメリカに暮らす大原幹三郎のもとへ「写真花嫁」として嫁ぎ、佳乃は海を渡った。そこから全ては始まった。夢が叶うと言われる大地で日々を積み上げていく一家。彼らはやがて時代の激流に呑み込まれていく。日本人というルーツに苦しめられた祖母、捨てようとした母、惹かれる「私」―これまでの百年、そして今のこの世界の物語。


「実況中継トランプのアメリカ征服」町山智浩

2017年06月27日 19時17分31秒 | 読書(英・米)


「実況中継トランプのアメリカ征服」町山智浩

週刊文春連載「言霊USA」単行本化、第五弾。

P58
アメリカは先進国中最も10代の妊娠が多いが、それは圧倒的に南部に偏っている。地方議会を支配するウンターマンのような福音派の共和党議員によって、学校の性教育で避妊方法を教えることが禁じられているからだ。

監督ウォシャウスキー兄弟がウォシャウスキー姉妹になった話
P60
17年前の『マトリックス』公開時は兄弟だったが、まず兄ラリーが性転換してラナに改名し、次に弟アンディもリリーになった。これはちょっと意外だった。兄ラリーはのび太風インテリだったがアンディはまるでジャイアンだったから。

『あまちゃん』のヒロイン能年玲奈が事務所の同意なく独立したことについて
P182
『この世界の片隅に』は日本の民放ではほとんど告知されない。「のん」に対する芸能プロの団体「音事協』の圧力だ。ワイドショーでも、20歳かそこらの女の子が仕事と本当の名前すら奪われていることについて、誰も口にしない。暗黙の了解がメディアを支配している。

ポスト真実について
P196
「アメリカの都市部の暴力犯罪は史上最悪に増えている」実は史上最低に減っている。
「オバマはISの創立者だ」実は…なわけないだろ!
デタラメにもほどがある。ところが、これらの放言にトランプ支持者は熱狂した。真実より大事なのは人々が求めるもの。それがポスト真実だ。

P240-241
個人の大麻吸引や所有、譲渡を犯罪扱いする州は全米でもはやアイダホ、サウスダコタ、カンザス、イリノイ、ケンタッキーの5州だけになってしまった。(中略)
だが、州法ではOKでも、連邦麻薬取締法では大麻は依然としてヘロインやコカインと同じく危険な麻薬に分類されている。だから州法で認可された大麻店を連邦麻薬取締局が摘発する事態も続いている。

ツェッペリンについて
P50-52
たとえば、「ハウ・メニー・モア・タイムズ」はハウリン・ウルフの「ハウ・メニー・モア・イヤーズ」の。、「胸いっぱいの愛を」はウィリー・ディクソンの「ユー・ニード・ラブ」の、「ブリング・イット・オン・ホーム」はソニー・ボーイ・ウィリアムソンの「ブリング・イット・オン・ホーム」の、ギターリフばかりかメロディも歌詞も、曲名すら伝説のブルースメンたちの丸パクリだったのだ。(中略)
「幻惑されて」は、ジミー君と共演したこともあるアメリカのミュージシャン、ジェイク・ホームズの同名曲ほとんどそのまま。(中略)
「天国への階段」のイントロが、スピリットというグループのインスト曲「トーラス」と同じだったのだ。作曲者ランディ・ウルフは97年に波にさらわれた息子を助けようとして溺死したので、遺族が「天国への階段」発表から43年を経てレッド・ツェッペリンを訴えた。

【関連図書】
教科書に載ってないUSA語録 
第一弾…「教科書に載ってないUSA語録」町山智浩

第二弾…「知ってても偉くないUSA語録」町山智浩

第三弾…「マリファナも銃もバカもOKの国」町山智浩

第四弾…「トランプがローリングストーンズでやってきた」町山智浩

【その他関連図書】


【ネット上の紹介】
悪夢が始まった!狂乱のアメリカを現場からレポート!澤井健のイラストも完全収録。週刊文春連載「言霊USA」単行本化、第五弾!トランプ勝利に熱狂するオルタナ右翼!大統領就任式を襲撃するアナーキスト!8000本ものマリファナを路上でばら撤き!これが自由の国アメリカか…!?


「さらば白人国家アメリカ」町山智浩

2017年02月26日 11時07分26秒 | 読書(英・米)


「さらば白人国家アメリカ」町山智浩

アメリカ現状レポートでは定評がある著者。
予備選挙から本選挙まで。
トランプに敗れた候補者一人一人にも光を当てて、詳細に分析していく。
結果として、政治の仕組みを知ることになる。

P42
無理な理屈をこねてまでヘリテージが中国を擁護するのは、中国のWTO加盟に賛成し、中国製品の輸入を拡大したのがヘリテージ自身だからだ。その政策を提唱したのはエレイン・チャオという中国系のエコノミストだった。彼女の夫は共和党の上院院内総務のミッチ・マコネルで、チャオはブッシュ政権で労働大臣に任命され、中国からの輸入超過を放任し、アメリカの労働者から仕事を奪い続けた。ブッシュ政権の甘い中国政策は中国経済を大躍進させたのだ


世界破滅装置について
P43
ハドソン研究所のハーマン・カーンは、米ソ冷戦時代に戦略理論家として「ドゥームズデイ(世界破滅)装置」を発案したことで有名だ。敵から一発でも核攻撃を受けたら、保有する全核兵器が自動的に作動して地球を丸ごと破滅させるシステムで、これによって敵は攻撃できなくなる究極の抑止力だ。

スタンリー・キューブリック「博士の異常な愛情または私は如何にして心配するのをやめて水爆を愛するようになったか」のモデルは、ハーマン・カーン。
さらに、「ガンダム」の女戦士、ハマーン・カーンの名前のモデルとなったそうだ。

ホワイトエスニックについて
P329
ワーキング・クラスの白人たちの多くは、ホワイト・エスニックと呼ばれるスコットランド、アイルランド、ドイツ、イタリア、ギリシャ、ロシア、東欧各国から渡ってきた人々の子孫だ。彼らは19世紀後半にヨーロッパから移民してきた貧農小作人や農奴だった。既にアメリカの肥沃な土地はWASPの移民に所有されていたので、西部の開拓地を目指すか、都市に残って建設現場や工場で働いた。

ニクソンの「サイレントマジョリティ」について
P332
「1954年なら黒人のことをニガーと言えた。でも、1968年にニガーなんて言ったらおしまいだ。だから別の言葉に言い換えるようになったんだ」
1981年、共和党の選挙の裏工作人として悪名高いリー・アットウォータ-がうっかり口をすべらせた。つまりサイレント・マジョリティという言葉には「黒人の平等に不満だが、差別になるので、それを口に出せなくなった白人」という裏の意味が隠されていた。
こうした言い換えをドッグホイッスル・ポリティックス(犬笛政治)と呼ぶ。犬笛は人間には聞こえない超音波を発するので、犬だけが反応する。それを同じく、サイレント・マジョリティと言われるとブルーカラーの白人は「自分のことだ」と察する。トランプをこの笛を吹いたのだ。

【ネット上の紹介】
「二大政党の将来がどうなるかはわからない。ただ言えるのは、アメリカが白い肌に青い目で英語を話す人々の国だった時代は、確実に終わるということだ」――トランプ対ヒラリー、史上最悪の大統領選が暴いた大国の黄昏。在米の人気コラムニスト町山智浩氏が、党大会、演説集会をはじめ各地の「現場」で体感したサイレント・マジョリティの叫び! 1980年に人口の8割を占めた白人は、現在62%。やがて白人が人口の半分を割り、マイノリティへと転落する日がやってくる。白人たちのアイデンティティ・クライシスは、アメリカをどこに向かわせるのか!? シンクタンク、全米ライフル協会、アンチ人工中絶、スーパーPACと最高裁、肥満と大企業……「アメリカを操ってきたもの」たちの暴走と矛盾に斬りこむスーパーコラム。 


「トランプ現象とアメリカ保守思想」会田弘継

2017年02月09日 21時26分17秒 | 読書(英・米)


「トランプ現象とアメリカ保守思想」会田弘継

EU離脱、トランプ当選、と続いた。
これはいったい何なのか?
トランプとは何者なのか?
ポピュリズムだけで説明出来るのか?
アメリカ思想史での位置づけは?

P23
「昼間に労働で汗を流した人びとは、夜、生活のことで冷や汗を流すべきでない」ということばがトランプの発想のすべてを語っている。
 特徴的なのは所得税へのゼロ税率の導入だ。独身で年収が2万5千ドル以下、あるいは既婚で5万ドル以下のときは所得税を免除するとしている。

P157
共和党は基本的にはアメリカの「メインストリート」からの支持を基盤としてきた。アメリカ中の小さな町のメインストリートには、商店があり、工場経営者のもつ事務所がある。アメリカの資本主義を実際に動かしているアメリカ中の多くの中小企業家たちを指すことばが、「メインストリート」だ。それこそが共和党の中核なのだ。





【ネット上の紹介】
「アメリカ・ファースト!」「移民排斥!」「日米同盟廃棄!」25年前、トランプとまったく同じ政策を掲げた大統領候補がいた。ニューライト、レーガン革命からティーパーティまで右派政治運動史と、ネオコン、リバタリアンだけではない知られざるアメリカ保守思想の最深部から、トランプ現象の真の意味を探る。

[目次]
第1章 壊れゆくアメリカ(トランプ現象があぶりだすもの
トランプはいかにして指名を獲得したのか
いま、アメリカに何が起きているのか)
第2章 トランプという男
第3章 トランプの反動思想(保守派の願望
再び混迷する保守思想
トランピズムに流れ込む反動思想) 


「トランプがローリングストーンズでやってきた」町山智浩

2016年09月14日 20時19分14秒 | 読書(英・米)


「トランプがローリングストーンズでやってきた 言霊USA2016」町山智浩

現在米国事情、シリーズ4作目。

P18
アメリカ労働局の調査では、2012年の女性の平均賃金は、男性のそれの80.9%しかない。ただ、1979年には、わずか62.3%だったのだから、この三十数年間で着実に改善されている。ちなみに日本の場合、79年は51.1%で2012年は53.3%。ほとんど変化なし。

P175-177
ゲイやレズビアンに対する人々の理解は広まった。愛や欲望にはいろんな形があるのだと。だが、ちょっとわかりにくいのが、アセクシャルだ。このア(A)は否定の意味で、アナーキー(無政府状態)の「ア」。だからアセクシャルは「無性愛」。男にも女にも性的な感情を抱かない。
(中略)
その苦しみを描いたのがディズニー・アニメ『アナと雪の女王』ではなかったか。王女エルサは国のために結婚することが使命だった。しかし、男性を受けいれることができない。彼女が触れるものは皆、凍りついてしまう。『アナと雪の女王』の原題はフローズンFrozen(凍りついて)だが、「性的に感じない」という意味もある。
(中略)
『アナと雪の女王』のエルサは誰とも結婚せず、「ありのまま」に生きていくことを選び、家族にも認められてハッピーエンドになる。
(中略)
しかし『アナ雪』を合唱していた人々はいったいエルサの「ありのまま」を何だと思って歌ってたんだろうね。
(『ガープの世界』のガープの母ジェニー、シャーロック・ホームズ、アイザック・ニュートン、哲学者カントが、アセクシャル、と言われている)

[目次]
セルマは今ですbyジョン・レジェンド
現実離れしてスケールの大きな
ジャンボ=巨大。もとはサーカスの象の名前
みんな俺が殺した。決まってるだろbyロバート・ダースト
他人種といっしょ
クリアーになる。サイエントロジーで魂を浄化すること
ゼフ。南アフリカの貧乏白人独特の文化
政府の貧困層向け食費援助額で実際に暮らしてみる実験
私たちはマウナケアだ
女優にセックスの対象としての役が来なくなる日〔ほか〕

【ネット上の紹介】
世界のバカはアメリカをめざす! 過激で“使えない”新語・失言がてんこ盛り! サブカルから政治まで、マッドなアメリカがほとばしる、週刊文春の人気連載「言霊USA」単行本化、いよいよ第四弾に突入! アメリカ在住映画評論家の町山智浩さんが、いまアメリカで起きているおバカな出来事、日本では考えられないハチャメチャなニュースを、現地で流行ったスラング、失言、名言をもとに面白おかしく、かつ歴史的な背景も絡めながら解説します。今回は大統領選やフランスのテロ、スターウォーズの新作映画(『フォースの覚醒』)や移民排斥問題など、ホットな話題が満載。また、ショーン・ペンのメキシコ麻薬王訪問の舞台裏や、知る人ぞ知るテキサスの「おっぱいレストラン」、ハッパでキメながら大統領選に立候補宣言したカニエ・ウェストなど、サブカルから政治まで、町山さんの幅広さと持ち味、ユーモアが存分に詰まった、ファン必読の一冊となっています。シリーズ本第四弾にして、町山さんの鋭い毒舌、切れ味抜群のギャグが、よりいっそう過激に炸裂しています!澤井健氏の爆笑イラストもあわせて、ぜひお見逃しなく! 


「マリファナも銃もバカもOKの国」町山智浩

2015年07月05日 08時42分21秒 | 読書(英・米)


「マリファナも銃もバカもOKの国」町山智浩

「USAシリーズ」(私が勝手に命名)が出たら読むようにしている。
その辺のアメリカ評論より、よっぽど的を射ているから。

アメリカ版「どっきりカメラ」が「What would you do?」。
但し、日本のよりずっと「毒」がある。
P94-96
こういう番組は日本では作れないだろう。市井の人々、善男善女の心に潜む偏見や差別を暴いてしまうから。たとえばレストランで白人の娘が父親に「この人と結婚したいの」と黒人の恋人を紹介する。父親は「黒人なんか許さん!」と反対して、娘たちを追い返す。すると周囲の客が「同じ親としてわかりますよ」「大事な娘さんを黒人なんかに渡せません」と父親に味方する。そこにさっきの黒人俳優がカメラと一緒に入ってきて「全部ビデオに撮ってましたよ」と言うのだから、気まずいったらありゃしない。
 ベーカリーの店員が、英語が話せないメキシコ系の客を「不法移民は出て行け」と追い返したり、コンビニの客がアラブ系の店員に「お前らイスラム教徒はテロリストだ。アメリカから出て行け!」と嫌がらせする仕掛けには、何人かの白人男性が「その通りだ!お前らはアメリカ人じゃない!出て行け!」とヘイト・スピーチをかぶせたりする。
「ここはアメリカだ。何教徒だっていい!」と叱ったのは軍服を着た兵士だった。「あんたはイスラム教徒と戦ってるんだろ!」と言い返された兵士は「どんな宗教を信じても許される自由のために戦っている!」
 番組のクライマックスはここだ。普通の人が、少数民族や障害者への差別に我慢できず、ついに行動を起こす。

P176
芸能界にはノーズ・ジョブという言葉がある。鼻の整形のことだが、アメリカでは高くすることよりも、逆に高すぎる鼻を低くすることが多いという。特にバーブラ・ストライザンドのように大きい鼻は「ユダヤ鼻」と呼ばれ、ユダヤ系のステレオ・タイプとされる。
 ジェニファー・グレイもそんな鼻の持ち主だが、彼女が主演した『ダーティ・ダンシング』(87年)はアメリカでは女性のためのカルト映画として愛されつづけている。女性向けTVコメディで『ダーティ・ダンシング』ネタのない番組は存在しないと言ってもいい。
(知らなかった!カルト映画だったのか?・・・私は映画館でも観たし、DVDも持っている)

【参考リンク】
「知ってても偉くないUSA語録」町山智浩
「教科書に載ってないUSA語録」町山智浩
「99%対1%アメリカ格差ウォーズ」町山智浩

【ネット上の紹介】
アメリカ人も困る驚くべき実態を緊急レポート!澤井健の超美麗&爆笑イラストも完全収録。週刊文春人気シリーズの第三弾が待望の単行本化!!

[目次]
バイクをウィリーさせて、ほとんど垂直に立たせたまま走ること
グラウンドホッグ・デー
クリプトカレンシー=暗号貨幣
医療用マリファナ?それとも娯楽用?
3月の狂気
殺人の演技、殺人という行為
ワシントン・レッドスキンズ・アメリカ先住民基金
ノームコア=ノーマル+ハードコア。過激に普通。ファッションの最新トレンド
よもぎの反乱、ソヴリン市民
この国では、バカでも許されるんだby NBAオーナー、マーク・キューバン〔ほか〕


「知ってても偉くないUSA語録」町山智浩

2014年07月01日 21時33分49秒 | 読書(英・米)


「知ってても偉くないUSA語録」町山智浩


今年5月12日に紹介した「教科書に載ってないUSA語録」の続編。→「教科書に載ってないUSA語録」町山智浩
流行している言葉、話題になった語彙からアメリカの現状をレポート。 
面白くて、知識も増える、一挙両得。

P282-286
第二国歌と言われる『アメリカ・ザ・ビューティフル』を様々なルーツを保つアメリカ人少女が歌っていく。
(中略)
この歌詞を、少女たちはそれぞれの言葉に訳して一説ずつ歌う。メキシコ系はスペイン語で、ユダヤ系はヘブライ語、中国系は北京語、アラブ系はアラビア語、アフリカ系はセネガル式のフランス語、そして先住民プエブロ族はケレス語で。
(中略)
「せっかくの名曲が台無しだ」「ここはアメリカだ。英語が嫌なら出て行け!」などのヘイト・コメントがYouTubeやフェイスブックにあふれた。
(中略)
で、コカ・コーラの多言語CMだけど「ここはアメリカだ!英語で話せ!」と怒るのもおかしな話だ。英語ってイギリス語じゃん。このCMで歌ってる先住民の言葉、ケレス語のほうが、本当のアメリカ語だからね!

【参考リンク】・・・問題のCM
Coca-Cola - It's Beautiful - Official :60

【参考リンク】2
アメリカの美しさ」を表現したコカコーラ社のCMに賛否両論 ...

【ネット上の紹介】
気鋭の映画評論家・コラムニストの町山智浩氏による 「週刊文春」人気連載の単行本化、第二弾! アメリカの政治・経済・エンタメを現地リアルタイムレポート。澤井健氏の爆笑イラストも収録しました。(「まえがき」より要約) アメリカで話題の言葉は、面白い。面白くて怖いーー。「共和党の候補だったミット・ロムニーは、20億ドル以上を投じた2012年の大統領選を、たった二つの失言でしくじりました。本書では政治家の発言以外にも、『トロフィー・ワイフ』のように学校や職場では使うのをためらう言葉、『フォトボム』などネットとスマホの時代に生まれてアッという間に広がった新語も紹介しています」 〈本書に登場するUSA語録〉 レッドネック=貧乏白人 キッズヴォート=こども投票 マンスプレイン=男がドヤ顔で講釈垂れること ドーマ=結婚防衛法 パンプ&ダンプ=ボロ株を使った詐欺 プライムエア=アマゾンの無人ヘリによる宅配 デトロピア=デトロイト+デストピア など 全74のキーワードを収録。


「教科書に載ってないUSA語録」町山智浩

2014年05月12日 21時00分06秒 | 読書(英・米)

教科書に載ってないUSA語録 
「教科書に載ってないUSA語録」町山智浩

流行している言葉、話題になった語彙からアメリカの現状をレポート。
415ページの分厚い本だけど、最後まで楽しく読めた。
その辺の大学教授や新聞記者より、よっぽどアメリカの実情をとらえている、と思う。

P44
フレネミーとはFriendとEnemyの合成語で、「友達ぶった敵」という意味。アメリカでは50年代からある言葉らしいが、最近TVドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』で使われ流行した。

P179
マリスト大学が1020人のアメリカ人にアンケートして集計した「イラっとさせられる言葉」の第1位はWhatever(何でも)だった。
WhateverはWhat(何)の強調。「たとえ何が起きても君を守る」とか「あなたの作る料理なら何でも好き」みたいなポジティブな「何でも」もあるが、イラつくのは投げやりな「何でも」。
「君のためを思って言ってるんだよ」という彼氏に対して、彼女はそっぽを向いて「Whatever(何でもいいわ)」と言い捨てる。つまり「どうでもいい」「勝手にすれば」。これをWhatever!と強く言ったら完全にキレている。女性は「ファック・ユー」の代わりにこれを使う。

ちなみに、2位から5位の“イラつく言葉”は次のとおり。(P176-178)
2位・・・Like(みたいな~)(えーと)
3位・・・You know what I mean?(言ってることわかる?)
4位・・・Actually(実際)
5位・・・To tell the truth(実を言うと)

P186
「血の中傷(Blood Libel)」は、かつてヨーロッパで流布した「ユダヤ人は祭りで食べるパンに、殺害したキリスト教徒の血を混ぜている」というデマを指す言葉で、ユダヤ人迫害を助長した。
・・・ペイリンはこの言葉を不用意に使用したそうだ。
この本には、ペイリンが数多く取り上げられるが、もうボロクソ。
本人が悪いというか、自爆のタネを自分で蒔いているのだけれど。

P226
南北戦争観の対立は、大東亜戦争をアジアの開放と見るか侵略と見るかの対立に置き換えるとわかりやすいだろう。日本も南部も「合衆国」に徹底的に焼き尽くされた。150年経っても南部は恨みを忘れない。日本は?

P296-298
スティーブ・ジョブズについて書かれている・・・印象が180度変わる
英デイリー・メイル紙が中国のiphone工場に潜入取材した記事は衝撃だった。
24時間年中無休の工場で16歳以下の少年少女たちが1日15時間働かされている。2010年に労働者が10人以上自殺し、アップルは労働環境改善に乗り出したが、労働環境基準に達している工場は半分にすぎない。
ジョブズはアメリカの従業員に対しても容赦なかった。フォーチュン誌によると、ジョブズは、失敗したクラウドサービスMobileMeの担当者を他の社員たちの前で、30分にわたって徹底的に罵倒してから更迭した。彼はコントロール・フリークだった。何でも自分の思いどおりに支配したい。だからアップルの互換機を他社に作らせない。関連商品も自分の許可なしに売らせない。

【ネット上の紹介】
連載中の人気コラム「言霊USA」、待望のペーパーバック化です。新聞、テレビ、ウェブでは分からない超大国アメリカの素顔を、現地在住の著者がレポートしています。登場するのは、イスラム教徒扱いをされるオバマ、トンデモ発言でおなじみのペイリン、上場が落胆に終わったフェイスブック、過激なティーパーティ勢力、ウォール街のプレイヤー、民主主義を主張するレディ・ガガ、ギャル語を話すアメリカの女子高生など。本書のポイントは、「日本人の知らないアメリカ語」を引きつつ解説しているところです。Frenemy (フレネミー)=友だちぶった敵、Chinamerica (チナメリカ)=中国とアメリカの運命共同体、Greater Fool Theory(グレーター・フール・セオリー)=もっとバカがいる理論、Nothing,,, (ナッシング)=別に、、など。アメリカ国内を騒がせたこれらの名言、失言、流行語を通して、政治や経済の仕組みから、キリスト教原理主義、ネット業界の最新動向、陰謀論の真偽、今のアメリカを知ることができます。ちなみに映画監督クリンスト・イーストウッドの「アメリカは今、ハーフタイムなんだ」という言葉に、自信を失ったアメリカ国民はみな涙を流したとか。連載でタッグを組んでいる漫画家・澤井健さんによる、ギャグセンスあふれる爆笑イラストも収録しました。まさに町山ワールド全開!一級のアメリカ批評本です。


「99%対1%アメリカ格差ウォーズ」町山智浩

2013年10月03日 21時11分54秒 | 読書(英・米)

「99%対1%アメリカ格差ウォーズ」町山智浩

著者はアメリカ在住の映画評論家。
映画だけでなく、政治ネタにも詳しい。
ニュースで伝わってくる裏にあるものを、素人にも分かりやすく説明。
これが出来る方は少ない。池上彰さんクラス。
さらに、矛盾をつっこんで笑いにしているのがすばらしい。

P13 
ニュー・ディールとは、トランプでのカードの配り直しのことで、富の再分配によって、開いてしまった貧富の格差を減らして、全員をスタート地点に並ばせようとするニュアンスがある。つまりニュー・ディールは資本主義と社会主義の折半のような「社会自由主義」である。リベラリズムとは本来、「自由主義」という意味だが、現在のアメリカでは、リベラルというとこの「社会自由主義」を意味するようになった。

P170
カク博士はサンノゼ生まれの日系人だ。「活断層のあるカリフォルニアになぜ原子力発電所を建設したのでしょう?」というウーピー・ゴールドバーグの素朴な疑問に博士は「ファウストの取引です」と答えた。
「ファウストが現世の夢をかなえるために悪魔に魂を売ったように、豊かな生活に必要なエネルギーを得るためにリスクを冒したのです」

P228
アメリカの上位わずか1%の富裕層が国全体の富の40%を独占しているというデータがあり、「我々は99%だ」は「国民の大半を占める“持たざる人々”である」という意味になる。

モルモン教の教祖はジョセフ・スミス。
なぜモルモン教徒は他のキリスト教徒から浮いているのか?
P260
モルモンと他のアメリカ人が対立した最大の理由は一夫多妻だ。もともとモルモンの教義には一夫多妻はなかったが、スミスが密かに女性を複数抱えていることが発覚してから教義を修正した。殺された時には少なくとも20人の妻がいて、そのうち2人は14歳の少女だったという。
(現在は、一夫一婦制)

【参考リンク】
町山智浩『99%対1% アメリカ格差ウォーズ』 

【ネット上の紹介】
「貧乏人に医療保険を与える奴は殺せ!」巨大資本に操られるインチキ政治運動、デマだらけの中傷CMをぶつけ合う選挙戦、暴走する過激メディアまで、日本人が知らない「アメリカの内戦」を徹底レポート。
[目次]
序章 オバマ大統領就任式―「自由」と「平等」のハルマゲドン―2009年1月;第1章 医療保険改革とティーパーティーの誕生―2009年12月~2010年5月 オバマのお辞儀を批判するFOXと過激なデマゴーグたち;第2章 保守vs.リベラル壮絶メディア・バトル―2010年5月~12月 中間選挙で民主党敗北;第3章 オバマがイスラム教徒だと信じるアメリカ人―2011年1月~6月 ギフォーズ議員狙撃からビン・ラディン殺害まで;第4章 1%が動かす茶会と99%の占拠運動―2011年6月~11月 共和党大統領予備選から「ウォール街を占拠せよ」運動まで;第5章 「ハゲタカ」ロムニーと「ヘタレ」のオバマ―2012年2月~7月 ロムニーの大統領候補選出からオバマケアの最高裁判決まで