「平成史」保阪正康
平成元年(1989年)と、平成7年(1995年)が節目として語られている。
平成元年(1989年)は、(当たり前だけど)昭和天皇崩御があり、天安門事件、ベルリンの壁が崩壊、冷戦終結宣言、チャウシェスク大統領夫妻処刑。日本では、宮崎勤逮捕、女子高生コンクリート詰め殺人事件、田中角栄政界引退。物故者は、手塚治虫、松下幸之助、美空ひばり。
平成7年(1995年)は、阪神淡路大震災、2か月後に地下鉄サリン事件。
8月には「村山談話」が発表され、著者曰く、これにより『昭和の残滓をすべて捨てて、このときから平成という時代をスタートさせた』、と。
P53
昭和天皇にとってもっとも重要な教えは、皇太子時代のヨーロッパ訪問時にイギリスのジョージ五世から直々に教えられた次の言であった。
「君主は君臨すれども統治せず、という教えに従うといい。直接に全面に出て政治・軍事の差配はすべきではない」
2001年誕生日、天皇記者会見
「私自身としては、桓武天皇の生母が百済の武寧王の子孫である、続日本紀に記されていることに、韓国とのゆかりを感じています。武寧王は日本との関係が深く、この時以来、日本に五経博士が代々招へいされるようになりました。また武寧王の子、聖明王は、日本に仏教を伝えたことで知られております(後略)」
P85
そしてもうひとつ、歴史修正主義者にはある特徴があった。「自虐史観」という語を用いて、歴史を客観的に分析する手法へケチをつけるのだ。史実を丹念に検証したうえで、やはり日本にはあの戦争の時代の行為や思想には反省すべきところがある、などといった結論に達するのは、自虐史観の持ち主ということになる。歴史修正主義者はこうして旗を立てるのと、ある種の史観に難癖をつけることで自らの正当性を主張するわけである。(「村山談話」をきっかけに「新しい教科書をつくる会」のような組織が目立ってきたそうだ)
P159
今の政権にはとにかく武器を売り、日本の財政をアメリカの軍事力の一部に回すことが至上命令というのがトランプ政権の本質であり、日本はまさにいいように利用されているということだろう。
【参考】
P125を読むと著者と西部邁氏は、同じ中学で、朝夕同じ電車で通学した、書かれている。思想も政治的立場も異にする二人だが、興味深い事実だ。
【感想】
後藤謙次の「10代に語る平成史」の方が汎用性が高い内容と思う。
本書は天皇と政治と事件を中心で経済への言及は少ないが、内容は興味深く、おもしろい。両方、押さえておいて損はないと思う。
【参考リンク】