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「中野京子と読み解く運命の絵」(2)中野京子

2019年05月14日 19時50分15秒 | 読書(絵画)
「中野京子と読み解く運命の絵」(2)中野京子

けっこう以前に読んでいたのだが、アップするタイミングが遅くなり、今日になった。
 
P11
マネの同時代人であり、マネ同様フォリー・ベルジェールを熟知し、さらにマネ同様、梅毒で若くして命を落とすことになるギー・ド・モーパッサンは、マネの死の二年後に長編小説『ベラミ(=美貌の男友達)』を刊行している。(おそらく当時は、相当数の娼婦がいたと思われる、それだけ貧しく、女性の職業も限られていたのでしょう)

ゴーギャンについて
P78
前から患っていた心臓病、慢性の皮膚病やアル中で身体はぼろぼろだったが、生活が安定するや、隣のヒバ・オア島へ移住して十四歳のマリーを新現地妻にする。誰がどう弁護しようと、現代人の目から見て彼が気色の悪いロリコンであったのは確かだが、それと作品の価値とは関係ない。(もし逆に、彼が年寄りの女性好き、ババコンと言うのだろうか、だったらここまで言われなかったかもしれない)

P107
当時のイギリス(19世紀後半)では娼婦の営業許可は13歳からなので、16歳は十分大人といえた。そしてまたこの時代では初老というべきワッツとの年齢差も、現代人が感じるほど奇異というわけでもなかった。女性の働く場がほとんどないため、安定した生活を送りたければかなり年長の男の妻になるのが一番楽で、だからこそ繰り返し愛のない結婚生活が小説の題材になったのだ(『ボヴァリー夫人』しかり、『アンナ・カレーニナ』しかり)。

P197
当時のフランスでは、女性の男装(とりわけズボン)は禁じられていた。これは1800年に発布された警察令をもとに、1804年のナポレオン法典で明文化された法律で、違反者には罰金や禁固刑が科せられた。例外は健康上の理由など特殊な場合のみで、警察に申請して「異性装許可証」を取得する必要があった。1850年代の取得女性がわずか12人というから、ハードルは高い。

【ネット上の紹介】
誰もみな、堕ちては昇る―。世紀を越えた名画が私たちに突きつけるコントロール不能な、人生の流転。ナポレオンにオーラを授けたグロ奇跡の一枚、ゴーギャンの遺書になり損ねた大作、シェフェールがエロティックに描いた死に向かう乙女、ターナーが戦艦に重ねたイギリスの栄枯盛衰、バーン=ジョーンズの真に迫る運命の車輪ほか、オールカラー絵画32点で読み解く17の運命。『怖い絵』『名画の謎』に続くシリーズ第2弾。
若さと綺麗な顔だけを武器に―マネ『フォリー・ベルジェールのバー』/ロートレック『二日酔い(シュザンヌ・ヴァラドン)』
車輪は廻り続ける―バーン=ジョーンズ『運命の車輪』
生還できるか―ホーマー『メキシコ湾流』『ハリケーンの後で』/ジェリコー『メデュース号の筏』
日比谷公園との関係―ルーベンス『ロムルスとレムス』
駄犬じゃけえ…―ブリューゲル『雪中の狩人』
遺書になりそこねた大作―ゴーギャン『我々はどこから来たのか我々は何者か我々はどこへ行くのか』『レ・ミゼラブルの自画像』『死霊が見ている』
死びとは駆けるのが速い―ヴェルネ『レノーレのバラード』/シェフェール『レノーレ―死者は駆けるのが速い』
敗戦の将をいたわる―ベラスケス『ブレダ開城』/ルーベンス『侯爵夫人ブリジーダ・スピノラ=ドーリア』
表現者になるため生まれてきた―ワッツ『選択』/サージェント『マクベス夫人に扮したエレン・テリー』
聖書を破り捨てて―ムンカーチ『死刑囚の監房』『ハンガリー軍服姿の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世』
大金持ちのゴミ屋敷―モロー『ユピテルとセメレ』
若き英雄の誕生―グロ『アルコレ橋のナポレオン』『ヤッファのペスト患者を見舞うナポレオン』
老兵はただ消え去るのみ―ターナー『戦艦テメレール号』
久米仙人との違い―ボス『聖アントニウスの誘惑』/テニールス『聖アントニウスの誘惑』
胸塞がる物語―ティツィアーノ『マルシュアスの皮剥ぎ』/ペルジーノ『アポロンとマルシュアス』
メガミとイージス艦―クリムト『バラス・アテナ』/ルーベンス『メドゥーサの首』
荒々しい馬市―ボヌール『馬市』『バッファロー・ビル肖像』