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「教養としての宗教事件史」島田裕巳

2023年01月09日 07時56分50秒 | 読書(宗教)


「教養としての宗教事件史」島田裕巳

457Pで読み応えがあった。
中身も充実している。

P207
『歎異抄』を禁書にしたのが、蓮如である。蓮如としては、門徒たちが、悪人正機の考え方を勝手に解釈し、悪人の方が往生がしやすいのなら、むしろ積極的に悪をなした方がいいと考えるようになることを恐れたのであろう。

P252
朝鮮王朝(李氏朝鮮)の時代になると、儒教が国教に定められ、仏教は弾圧を受けて衰退した。
儒教は基本的に男性のための宗教、上層部のための宗教であり、女性や下層階級はその枠のなかから排除されてしまう。朝鮮半島でも仏教の信仰が衰えなかったとしたら、それは女性や下層階級を含む民衆を救済する役割を果たし、宗教的な空白を作ることはなかったであろう。ところが、空白が存在したために、代わってキリスト教がそれを埋めることになったのである。(日本では仏教が受容されていて、空白はなかった。それ故、日本でのキリスト教は1%、韓国は約30%)

P203
密教の形成に影響を与えたヒンズー教は、仏教とは異なり、空の考え方をとらず、むしろ実在論の立場にたつ。したがって、仏教が密教の方向に向かっていくという事は、ヒンズー教にかぎりなく接近していくことを意味した。仏教が密教の性格を強めれば強めるほど、ヒンズー教との区別はなくなり、やがて密教化した仏教は、ヒンズー教の世界のなかに溶け込んでいってしまった。

P274
彼らは、国教会に従わなかったため、「非国教徒」、あるいは「ピューリタン」と呼ばれる。ピューリタンには、もともと杓子定規とか、偽善者といった必ずしも肯定的でない意味が込められていたが、やがてはあくまで純粋な信仰を求める人々の意味で使われるようになっていく。(この説明は納得!)

P277
クリスマスがヨーロッパの異教の祭りを取り入れて成立したものであるため、それを祝うことは神への冒涜とされ、19世紀になるまで、意外にもアメリカでクリスマスは祝われなかったのである。

P322
近代において、忘却されていた神なり、神に近い存在がいきなり政治的に復活をとげたという点で、明治維新は、イランにおけるイスラム革命と似ていた。

P370
自前の財産を持たず、その存在を全面的に国に依存している日本の皇室は、いわばフルタイムの公務員のようなもので、そこには民主主義の国家に属する人間なら誰にでも保証された自由や人権は存在しない。
しかも、皇室の場合には、皇籍という特別な戸籍が存在し、一般の国民とは区別されいる。そのため、イギリスの王室とは異なり、離婚の自由も事実上妨げられている。これでは、イギリス並みに開かれた皇室であることなど、どう考えても不可能なはずである。

P372
天皇制とともに長い歴史を歩んできた日本人にとって、天皇の存在しない日本という国を思い描くことは難しい。国の省庁が消え去ったとき、いったい何を国の中心に据えたらいいのだろうか。

【ネット上の紹介】
現代人にとって、宗教についての知識・教養はもはや必要不可欠。49の最重要事件を取り上げながら、スキャンダラスな面もふくめて、歴史に登場する宗教に生の形でアプローチ。ぐいぐい読めてためになる、学生もビジネスパーソンも必読の宗教入門。
人類はいったいいつ宗教をもったのか
壁画が物語る宗教の発生
謎に満ちた巨大ピラミッドの建設
ゾロアスター教が後世に多大な影響を与える
一神教が誕生し、偶像崇拝が禁止される
老子、釈迦になる
結集から、仏教の歩みがはじまる
パウロとアウグスティヌスの回心が、キリスト教という宗教を生む
新しくやって来た仏教とそれを迎え撃つ神道との対決
三蔵法師、天竺を旅する〔ほか〕