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「令和を生きる」半藤一利/池上彰

2019年08月07日 20時36分17秒 | 読書(昭和史/平成史)
「令和を生きる」半藤一利/池上彰

P79
池上:中曽根康弘さんから話を聞いたことがあります。そのとき日本の原子力政策を推進したと自負する中曽根さんが、原発事故を受けて「原子力の平和利用には失敗もあった」と言った。
半藤:ほう、「失敗」という言葉を使いましたか。中曽根さんはたしか、初めて原子力発電研究に予算をつけたのではなかった?
池上:そのとおりです。昭和29年に国会に予算案を提出して成立させた。その額じつに2億3,500万円。なぜその金額なのかと国会で問われた中曽根さんが「原子力発電に使われるウラン235からとった」と答えて、議場からドッと笑いが起きました。

P133
池上:9.11のあと、ブッシュ大統領はあろうことか、テロとの戦いについて「十字軍の戦いだ」と言ったんです。側近たちはさすがに泡を食って訂正させたのだけれど、もうそれを聞いたアルカイダは大喜びですよ。かつてキリスト教社会が、平和だったイスラム教世界に突然攻め込んだのが十字軍でしたからね。

P137
半藤:じつはわたし、昨年平成30年8月15日の終戦記念日に、秋篠宮様の坊や、悠仁くんに昭和史の講義をいたしました。2時間半やってくれと頼まれて、宮邸に出かけて行った。(中略)
質問がありますかと聞いたら「なぜアメリカは広島に原子爆弾を落としたんでしょうか?」と。(中略)
言いたいことは要するに、日本の国防は非常に難しいということなんです。しかもいまはその海岸線に原発がずらり。

P141
半藤:いま国防予算は5、6兆円ですよね。(中略)
もし仮に日米安保を破棄して日本が自主防衛するために独自の国防力をもつとなったら、どのぐらい金がかかると思います?防衛大学校の教授二人がその場合のシミュレーションをやった。それによると23兆円もの金がかかるんだそうですよ。これは核兵器をもたない場合の予算です。いわんや核兵器なんかをもつなんて言ったらとんでもないことになる。核兵器をもつとなると、核拡散防止条約から外されて、たちまち経済封鎖。経済封鎖を食らったら日本の国はもうお手上げです。
(中略)
池上:日本が核ミサイルを持つならば、ディーゼル型の潜水艦は長期間潜っていられませんからイギリスとおなじように原子力潜水艦をつくる必要が出てくる。経済制裁でウランが入って来なかったら原子力潜水艦の原子炉の燃料をどうします?
半藤:原子力潜水艦がなければ抑止力にならないんです。要するに、北朝鮮が何もアメリカにできないのは、原子力潜水艦がないからです。
池上:ええ。しかもその運用ということになると、つねに日本海溝なり日本海に潜ませておくためには一隻ではダメ。最低、三隻必要なんです。原子力潜水艦三隻を運用して、初めて最低限の核抑止力が完成する。さあ、日本はそれができますか、ということでしょうね。(中略)
半藤:借金大国の日本がね、それだけの予算をほんとうに投入できるんですか、ということなんです。

P212
池上:不思議に思うのですが、中国にとっても日本の天皇は特別なんですね。歴代、国家元首になる前に、まず日本に来て天皇と会っている。国家元首になるのは、そのあと。習近平も、国家元首になる前の段階で天皇に会いたいと言ってきた。

安倍政権は、言葉の入替をなぜするのか?
P145
戦闘→ 武力衝突
共謀罪→ テロ等準備罪
情報公開を拒む→ 特定秘密保護法
武器輸出→ 防衛装備移転
カジノ法→ 統合型リゾート実施法(IR法)
移民→ 外国人材
単純労働者→ 特定技能者
ヘリ搭載の護衛艦を空母化→ 多用途運用護衛艦
安全保障関連法→ 平和安全法、積極的平和主義

【感想】
とても良い対談で会った。
読んで損はない、と言うか、多くの方に読んで欲しい内容だ。
関係ないけど、表紙の写真は二人がにこやかに笑っておられる。
対談の雰囲気が伝わってくるような写真だ。
これが佐藤優さんとの対談になると、なぜか池上さんは、柔らかな表情をされない。むしろ、睨み付けるような表情をされる。編集部の意向なのか?

【蛇足】
P215
権威の二元化の弊害などないスムースな移行であったと・・・
スムース→スムーズ、と表記誤り
発音記号smúːðだから。
細かい事を言って申し訳ないが・・・気になる。
(但し、これは難しい問題で、一概に言えず揺れている)
https://mayonez.jp/topic/1019991

【ネット上の紹介】
平成元年、ベルリンの壁とともに世界秩序も崩壊したことに気づかず、バブルに浮かれていた日本人。バブル崩壊後も、相次ぐ大災害と長きデフレにより、目先の生活を守ることに追われて、志向はさらに内向きに。そして日本は、理念を持たない「戦争ができる国」となり、「デマと差別が溢れる国」となった。その姿は、国際社会から取り残され、無謀な戦争に突き進んだ戦前の日本とあまりに重なる。過たずに済む分岐点はどこだったのか。昭和史研究の泰斗と現代を代表するジャーナリストが、平成の失敗を徹底的に検証した白熱対談。
第1章 劣化した政治、最初の岐路
第2章 災害で失われたもの、もたらされたもの
第3章 原子力政策の大いなる失敗
第4章 ネット社会に兆す全体主義
第5章 誰がカルトを暴発させたのか
第6章 「戦争がない時代」ではなかった
第7章 日本経済、失われつづけた三〇年
第8章 平成から令和へ―日本人に天皇制は必要か
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