原題:『Black Mass(黒ミサ)』
監督:スコット・クーパー
脚本:ジェズ・バターワース/マーク・マルーク
撮影:マサノブ・タカヤナギ
出演:ジョニー・デップ/ジョエル・エドガートン/ベネディクト・カンバーバッチ/ケビン・ベーコン
2015年/アメリカ
「田舎者たちのルール」の恐怖について
主人公のジェームズ・ジョセフ・バルジャーがウィンターヒル・ギャングのボス、弟のウィリアム・バルジャーがマサチューセッツ州の上院議長、そして幼なじみのジョン・コノリーがFBI捜査官となればそこにはびこるのは「田舎者たちのルール」である。つまり部外者にも理解を得られる道理ではなく、仲間内にしか通じない理屈で物事が進行してしまうのである。
その「田舎者たちのルール」が破られたチャンスがあったとするならば、ジェームズとリンゼイ・シールの間に生まれた長男のダグラス・グレン・シールだったはずなのだが、ダグラスは6歳の時にライ症候群という稀な病で亡くなってしまう。それでショックを受けたジェームズはタガが外れて誰にも止められなくなったのか、逆に後継者がいなくなって幸運だったのか微妙なところではある。
ジョニー・デップの「コスチュームプレイ」は相変わらずだが、コメディー作品よりもこのような、間を取りすぎてギャグが脅しに変化するシリアスものの方が合ってきているように感じた。
ところで本作では個人的に大好きなジョー・ウォルシュ(Joe Walsh)の「ターン・トゥ・ストーン(Turn to Stone)」が使用されており、実はそれだけで感激してしまった。以下、和訳。
「Turn to Stone」 Joe Walsh 日本語訳
井戸はどれも枯渇して
おまえの本のページは燃え上がる
壁に書かれてあることを読むんだ
大騒ぎは大詰めだ
どこを見ても誰かが戦っている
叫び声が聞こえてくる
戦いはますます酷くなり
俺はそんなに長く持ちこたえられず
やがて石と化すのだ
風が吹けば変化があるはず
兆しが嘘をつくことはない
こんな奇妙な気持ちを抱いてしまう俺は
ただ時間を費やしてばかりいる原因が分からない
裏庭にいる人々は一日中働いている
演説や
言葉にリズムを与えるためだけに
動機が変化し続けるあり方に飽きている
戦いはますます酷くなり
彼らをより長く走らせることができず
やがて石と化すのだ