原題:『祇園囃子』
監督:溝口健二
脚本:依田義賢
撮影:宮川一夫
出演:木暮実千代/若尾文子/進藤英太郎/河津清三郎/菅井一郎/田中春男/浪花千栄子
1953年/日本
祇園で飛び交う言葉にフランス語が混じる理由について
メインストーリーとは直接関係の無い話をしてみたいと思う。
祇園で売れっ子の芸妓である美代春のもとに栄子という少女が舞妓志願に訪れ、一年間の舞妓修行を経た栄子は美代栄として見世出しするのであるが、その晩から飲み過ぎて酔いつぶれて帰宅する。その様子を見て「やっぱり、あんたアプレや」という美代春に対して、美代栄は「姉ちゃんはアヴァンゲールや」と言い返し、「何え、それ?」と訊ねた美代春に美代栄は「古いっていうこと」と返すシーンがある。
若い人は特にここの2人の会話がよく理解できないかもしれないのだが、「アプレ」とは「アプレゲール(après-guerre)」というフランス語の略で、第二次世界大戦後という意味で、「アヴァンゲール(avant-guerre)」というフランス語は逆に戦前を意味するから「古い」という意味に転じているのである。
依田義賢の脚本であるから、実際にこのような会話があったのだと思われるのだが、疑問に思うことは何故英語ではなくフランス語が使われるようになったかということである。答えは持ち合わせていないのだけれど。