MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『狼の王子』

2016-02-22 23:44:18 | goo映画レビュー

原題:『狼の王子』
監督:舛田利雄
脚本:田村孟/森川英太郎
撮影:間宮義雄
出演:高橋英樹/浅丘ルリ子/石山健二郎/加藤嘉/川地民夫/鈴木瑞穂/垂水悟郎
1963年/日本

不明瞭な「愚連隊」と「暴力団」の違いについて

 主人公の日下武二は北九州で戦争で親を亡くした戦災孤児だった。実の幼い息子を亡くしていた日下組の日下万蔵に拾われて育てられるが、万蔵は武二の目の前でライバルの加納組の刺客に刺殺されてしまう。しかし裁判で加納組の非を咎められることがなかったために武二は裁判所内で犯人と加納武松組長を射殺する。
 自身は刑務所に入るものの、これで日下組は安泰だと思っていた武二に対して面会に来た文五郎は石炭の不景気により日下組が請け負っていた若松港の荷役に仕事が無くなったことと、それとは裏腹に二代目の組長の下で加納組はさらに勢力を拡大しているという現実を知らされる。文五郎の言い分によるならば金になることなら何でもする盗人やごろつきが集っている愚連隊のような加納組に対して、仕事師の集団である日下組では太刀打ちできないということである。
 ところが出所後、加納組に命を狙われていたために上京していた武二の下に文五郎がやって来て、
万蔵の追善供養を盛大にするために戻ってくるように乞われたのだが、武二は「男伊達や正義や勇気でまかり通ったこの稼業の時代はとっくに過ぎた」という理由で断る。実際に、東京で武二は島原組のボディーガードをしているのであるが、学生運動などが活気づく中、争い事は避けて生きていた。しかし文五郎は武二の言葉に納得できず、武二が本当のヤクザかただのバカ野郎か確かめたいと言い出すのである。
 個人的にはここの文五郎の理屈が解せない。文五郎は「愚連隊」なダメだが「暴力団」は良いのだと言っており、私にはその違いが分からないのであるが、結局、賭博場に殴り込みに行った文五郎が無残に殺され、武二が所属していた島原組も寝返ったため、武二が裁判所で見せたように加納組の事務所に一人で乗り込んで二代目組長と他の親分を射殺するという同じ過ちを繰り返してしまわざるを得ないというラストシーンが胸を打つ。
 菊池葉子を演じた浅丘ルリ子が女の子たちに混じって縄跳びをするシーンが素晴らしい。何気ない小さな楽しいことに幸せを見いだすのであるが、女の子の一人が「おばさん、飛んでもいいわよ」というセリフが気になる。当時23歳の浅丘ルリ子はどう見ても「お姉さん」だからである。今ならぶん殴られていてもおかしくない。


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