原題:『序の舞』
監督:中島貞夫
脚本:松田寛夫
撮影:森田富士郎
出演:名取裕子/岡田茉莉子/水沢アキ/小林綾子/三田村邦彦/風間杜夫/佐藤慶
1984年/日本
女性の地位向上を描く女流画家が主人公の作品について
主人公の島村津也は実在した女性の画家である上村松園をモデルとしているが、彼女の半生が描かれているわけではない。
安政五年、貧しい農家の娘だった勢以は、9歳で京都の葉茶屋ちきりやに里子に出されたのであるが、勢以は自分を里子に出した親に恨みを抱いており、養父母も婿養子も亡くした勢以に対して実母の麻が次女の津也を里子に出すように促したことに激怒し、「九つの年で島村にもらわれて本当の親が恋しくてなんぼ泣いた。実の親と暮すことが一番幸せ。ずっと母親を恨んで育った」と言い放つ。しかしその勢以でさえ津也が師匠の高木松溪の子供を妊娠した時には、「島村家代々のご先祖様に対して死んでお詫びするしかない」と言って、津也が産んだ「盛子(みつこ)」と名付けられた女児を里子に出してしまうのである。
しかしその盛子が3歳で流行り病で亡くなったことを知った勢以は、再び高木の子を宿した津也に対して「家の中がぬくぬくしていたら外はみぞれでも雪でも十分幸せや」と言って、世間体を気にしないことを宣言する。女性の地位向上の過程が描かれているのである。