サンシャイン・クリーニング
2008年/アメリカ
「サンシャイン」という‘見栄’について
総合 80点
ストーリー 0点
キャスト 0点
演出 0点
ビジュアル 0点
音楽 0点
学生時代に花形チアリーダーとして人気者だったローズ・ローコウスキが30代半ばのシングルマザーになっても、かつての恋人だったマックと別れられない理由は、自分の華やかなイメージを失いたくないという思いからだと思うが、チアリーダーにしてもハンサムのボーイフレンドにしてもローズが拘るイメージは、仕事よりも友人たちの出産祝いパーティー(Baby Shower)を優先させるように、他者に対する見栄であり、自身が心から欲したものではないだろう。幼少の頃に自死で母親を失ったローズは‘理想の女性像’を描けずにいたのである。ローズが‘事件現場清掃業’に興味を抱いた理由も、自死した母親のイメージを‘払拭’しようという思いがあったように思う。
同じ思いは妹のノラ・ローコウスキにもあったが、ノラの関心は、リンに対する態度から判断するならば、母親のイメージの払拭というよりも、リンが写真を見てノラに感謝するという、母親に対するイメージの‘洗練’だったのであろうが、ノラがリンの母親の死を知らせた時に「私自身に興味があったのではないのね」というリンの言葉は意外と重い。私たち観客も例えばオスカー自身ではなくて彼の注意欠陥障害(ADD)に、あるいはウィンストン自身ではなく、彼が失った左腕に興味が行きがちだからである。得てして‘正確’なイメージは確立しにくく、そもそもイメージに‘正確’などあるかどうかも怪しい。
だからノンクレジットの出演ではあっても、ローズとノラの母親がウエイトレス役で笑顔で「ペカン・パイをお薦めします」というセリフを言っているドラマのワンシーン(=イメージ)をようやく見つけた時、かつて確かに自ら道を選び輝いていた母親を認めた2人は、他人の価値観に左右されない自分の道を歩み始められるのである。
ノラはネコを連れてクルマで旅に出て、ローズは父親と改めて‘事件現場清掃業’を始める。もはや会社名に「サンシャイン」という‘見栄’は必要なく、自分たちの名字である「ローコウスキ・クリーニング」として再出発するのである。
泉ピン子、オセロ中島について「騒ぐと出づらくなるよ」(サンケイスポーツ) - goo ニュース
報道陣から長期休養中のお笑いコンビ、オセロの中島知子について問われた泉ピン子が、
「そっとしておいてあげるのがいい。人がとやかく言うことじゃない」と話したことに激怒して
いたのが、中島と彼女と同居している女性占い師と2010年11月17日に一度会った事が
ある中尾彬である。中尾は『知っとこ!』という生番組で司会の中島と一緒に出演していた
のであるが、大病を患って三ヶ月の間、番組に出られなかった時に、番組を通じて中島に
励ましてもらったことを恩に感じているようで、「人がとやかく言うことじゃない」と簡単に
片付けられないとして『ミヤネ屋』の生放送で直接本心を訴えたかったようである。中尾彬
にはとても誠意を感じるのであるが、「みんな悩んでる」という人生相談の著書を出版した
泉ピン子に相談を寄せた人たちのその後の人生は果たして大丈夫なのかと案じてしまう。
メランコリア
2011年/デンマーク=スウェーデン ほか
映像美の行き着く先
総合 80点
ストーリー 0点
キャスト 0点
演出 0点
ビジュアル 0点
音楽 0点
本作は2部構成で、パート1が「ジャスティン」、パート2が「クレア」とされている。パート1では姉のクレアの豪華な邸宅で妹のジャスティンの結婚式が行われるのであるが、ジャスティンと婚約者のマイケルが遅刻してしまう辺りから既に怪しい雰囲気が漂い、ジャスティンの悪態でもって会社の昇進も結婚そのものも御破算となってしまうのであるが、それは惑星メランコリアの接近によるジャスティンの精神不安というよりも、ジャスティンがガラスビンに入れた豆の数を正確に言い当てたところから判断するならば、メランコリアが地球に衝突することが分かっていたために、敢えて全ての人間関係を清算したと見倣すべきであろう。実際に、パート2で人生を諦めたジャスティンとは対照的に、夫のジョンや息子のレオなど守るべきものを持つクレアは完全に取り乱すことになる。メランコリアの接近を確かめるために、クレアが使う丸めた針金や、最後にメランコリアから身を守ろうとするために、ジャスティンとクレアとレオの3人で入る木の枝の‘テント’など、真面目にふざけているところは見ていて面白いし、いまさらハリウッドではこのようには撮れないと思う。
冒頭の8分間とラストシーンの細密な映像と、空撮を除く、その間に挟まれたハンディカメラによるラフな映像のコントラストの意図がよく分らない。冒頭の8分間の映像はその後の映像の‘ダイジェスト版’であり、ラース・フォン・トリアー監督の「同じものをどのようにでも撮れる」というアピールにも見えるが、活劇を生み出すものはその間にあるはずの‘ショット’だと思う。ハンディカメラのぶれる映像は確かに人々の不安を表現するには適した方法ではあるが、いかんせん長過ぎて見ていて疲れる。
冒頭の8分間の映像の中にはピーテル・ブリューゲルの「雪の中の狩人」が紛れ込んでおり、『ブリューゲルの動く絵』(レヒ・マジュースキー監督 2011年)を観たばかりで、精密な映像を作ろうとするとブリューゲルの絵画に行き着くという事実から、改めてブリューゲルの偉大さに驚かされた次第である。
AKB快挙!6作連続ミリオン(日刊スポーツ) - goo ニュース
AKB48の25枚目のシングル「GIVE ME FIVE!」のミュージックビデオは『北の国から』
などのテレビドラマを手掛けた演出家、映画監督の杉田成道で、3日間で撮影されたものの
かなり手の込んだものだった。定時制高校に通うAKB48のメンバーたちがバンドを組んで
卒業式で新曲を披露するまでの過程が描かれているのであるが、陣内孝則が扮する担任
の教師が柴田翔の小説「されど われらが日々」を引用しながら“困難”をキーワードに、
60年代学生運動と東日本大震災を繋げるという、意外とかなり重いテーマを扱っている。
さすがにいくら弟という設定であっても、前田敦子が演じる主人公が卒業式に呼び出した、
青森に住む弟を最後まで登場させない演出はファン心理を的確に捉えていると感心した。
アフロ田中
2012年/日本
アフロという‘嵩上げ’
総合 80点
ストーリー 0点
キャスト 0点
演出 0点
ビジュアル 0点
音楽 0点
題材としては『モテキ』(大根仁監督 2011年)と同じであるが、『モテキ』の主人公である藤本幸世が31歳であるのに対して、『アフロ田中』の田中広はまだ24歳であるためなのか、エンディングが対照的なところが興味深い。
じっくりと間を取りながらのギャグと過多のボイスオーバーが効果的で、例えば居酒屋における、無断欠席を‘認める’田中と、田中に謝罪させようと粘る旭工務店の社長の対決シーンなど笑える人は笑える。
田中広は自分の‘身の丈’を勘案しながら生きているが、どうも自身のアフロによる‘嵩上げ’が判断を誤らせることになり、当初は加藤亜矢に冷静に対処していたにも関わらず、加藤亜矢が魅せる媚態に完全にやられてしまうが、結局は亜矢の「自分が許せない」という訳の分からなさで失恋させられ、最終的には「気持ちが悪い」と言われ顔面にハイキックをもらってしまう。その後友人に電話をした田中は帰り道で3人組のバンドのアフロを見て「気持ちが悪い」と言って立ち去ってしまう。得てして他人のことは分かっても自分自身のことは分らないものなのである。
鳩山元首相改名に「虚構新聞?」の声(R25) - goo ニュース
「由紀夫」から「友紀夫」に変更する考えを表明した鳩山由紀夫元首相に真偽を確かめる
ために2012年2月20日の毎日新聞夕刊がインタビュー記事を載せている。「ところで、
いつから『友紀夫』になるんですか」という質問に対して、本人は「今、一気に戸籍名まで
変えなきゃならんとは思っていません。次の衆院選は新しい名前でやりたいけれど、
事務所のスタッフとも相談したい。改名は政治活動のためというより、自分自身の心の
問題なんです。だから無理のない範囲で変えていければと考えています」と回答している。
常識で考えるならば、鳩山の回答は“名前”ではなくて“性別”を変えるようなトーンである。
天野教授、卓越した技術 天皇陛下手術に異例の参加(朝日新聞) - goo ニュース
天皇陛下の診療はこれまで、主に東京大学や東大出身の医師が担ってきたのであるが、
今回は陛下の心臓の病気を診てきた東大の永井良三教授(循環器内科)が「非常にいい
成績を残されている」と評価した順天堂大の天野篤教授を招いて東大と順天堂大学との
合同チームという異例の治療態勢になったようである。山崎豊子の長編小説『白い巨塔』は
既に昔の話なのかもしれないが、東大の3人の教授はどのような思いで執刀を他大学の
教授に譲ったのか興味深い。万が一のことが起こった場合の“言い訳”としてなのか、
あるいは本来であるならば最高学府としてはあってはならないことなのであるが、残念な
ことにかなりの高度な技術を東大の3人の教授は持ち合わせていなかったのか
TIME/タイム
2011年/アメリカ
「In Time」という原題の真意
総合 80点
ストーリー 0点
キャスト 0点
演出 0点
ビジュアル 0点
音楽 0点
どうやら近未来は遺伝子研究の成果によって25歳以降は老いることがなくなるのであるが、その代償として残りの寿命は時間の取り引きによって左右されることになり、新たな貧富の格差が生じている。主人公のウィル・サラスはスラム街に住んでおり日々‘時間稼ぎ’に追われているのであるが、ある日生きることに疲れ果てていた裕福層の住人であるヘンリー・ハミルトンから大量の時間を貰い受けて、スラム街から脱出し、人質として捕らえたシルヴィア・ワイスと共に‘タイムシステム’そのものの破壊を目論む。
ストーリーのアイデアは良いと思うが、観ているうちにだんだんと違和感がもたげてくる。スラム街の住人たちの普段の所有時間が余りにも短すぎて、同じような立場に置かれたら冷静に生きていけないと思うが、これ程貴重なはずの時間がいとも簡単に手を通じて移し替えられることも奇妙で、それはクライマックスのウィル・サラスとギャングのフォーティスとの、腕相撲にさえ見えない‘タイムファイト’と呼ばれる緩い勝負にも当てはまる。
確かに時間を持て余したことで裕福層のヘンリー・ハミルトンは自殺したのであるが、たった10年を与えただけでウィルの親友であったボレルは働かなくなり過剰な飲酒で死んでしまうのだから、決して大量の時間が人生の保障には繋がらないことはウィルには良く分かっている。因ってウィルが‘タイムシステム’を破壊しようとする動機がいまいち明確にならないのであるが、原題を確認することで自分の勘違いに気づいた。
原題の「In Time」とは「間に合う」という意味であり、要するに走りまくることで時間の奪取に間に合えばいいだけの話であり、手の動きの緩さは、脚の俊敏さを強調する伏線であることが分かるのである。ストーリーのディテールを犠牲にしてまでも‘奔走劇’に徹するならば映画として文句は言えない。
「有罪になる」検事、録音止め威圧…弁護側抗議(読売新聞) - goo ニュース
現住建造物等放火罪に問われている21歳の男性被告の起訴前の取り調べで、福岡地検
の男性検事が今年1月5日の午後2時半から録音・録画を始め、午後3時半頃、検事から
「取り調べは終了」と告げられて撮影も止められたが、この後も検事は「この事件で有罪に
なると思う。いや有罪になるけど、君の今後に影響することだとわかっているの」などと
発言し、約20分間取り調べを続け、更に1月12日にも撮影終了後に「もっと真剣に思い出
せよ」と強い口調で告げたらしい。17日に東京地裁で開かれた民主党元代表の小沢一郎
被告の第14回公判において、元秘書の石川知裕衆院議員を任意で聴取した際に、
田代政弘検事が作成した捜査報告書に、石川知裕衆院議員の“隠し録音”から石川議員が
小沢被告の関与を認めた経緯について、実際にはないやり取りが記載されていることが
発覚し、その後、調書への署名などについても実在しない記載があることが判明したばかり
なのであるが、検事の“録音対策”が“止めた後の取り調べ”だとは想像もしていなかった。
逆転裁判
2012年/日本
‘無難な演出‘の是非
総合 70点
ストーリー 0点
キャスト 0点
演出 0点
ビジュアル 0点
音楽 0点
元々は法廷バトルアドベンチャーゲームである『逆転裁判』は、主人公の弁護士の成歩堂龍一を初めとする登場人物たちが非常に濃いキャラクターであるが故に、ストーリーも相当シュールなものになるのであろうと想像していたのであるが、意外と真っ当な法廷劇が展開された。
急増する凶悪犯罪に対応するために政府が、3日間で弁護士と検事が証拠と証拠をぶつけあいながら判決を下す制度である『序審裁判』を導入したという伏線は、やがて法を犯してでも容疑者を起訴しようとする狩魔豪という、40年間無敗の経歴を持つ伝説の検事を生み出すことになるのであるが、御剣怜侍の父親である弁護士の御剣信が、狩魔豪が裁判で提示した証拠の銃痕の真偽を確かめるために、裁判を通じて明らかにすればいいはずなのに、密かに法廷内の証拠保管場所へ行って確かめようとする意図が不明である。
小学生の時の矢張政志の窃盗から狩魔豪の証拠改ざんまで、実は‘悪者’は常に成歩堂龍一の目の前にいる信頼していた人間であることや、霊媒師の綾里舞子を通じた御剣信や、御剣怜侍の誤解など、‘正義’も勘違いするという皮肉が効いてはいるが、キャラクターやゲーム性を活かすことを優先させた演出により、せっかくの真っ当な法廷劇のスリリングさが失われているような気がする。
使われているギャグも古臭いように思う。例えば、フリーの雑誌記者の小中大を演じた鮎川誠が法廷で2度も自分が飲んだレモンティーに言及している理由は、鮎川がギターを務めるシーナ&ザ・ロケッツの代表曲に「レモンティー」があるからなのだが、このギャグを理解出来る若者が多いとは思えない。観客層のターゲットをどこに絞っているのか判断に苦しむが、三池崇史監督が今後このような‘無難な演出’に甘んじるほど落ちぶれていないことを信じたい。