作品の冒頭は主人公の小石川光希が友人の秋月茗子と共に下校しているシーンであるが、ここから既に長回しのワンシークエンスショットで、本作で多用されている演出方法である。恋愛映画においてこのような演出は顔のアップが少なくなるために避けられているのだが、ベテラン監督だから好きなように撮ることができているのであろう。 この演出がなかなか冴えていると思う。例えば、自分の父親ではないかと思って建築家の三輪由充に会いに行った後に、松浦遊と小石川光希が海岸で会話をするシーンもワンシークエンスショットで撮られており、急に遊が光希を抱きしめて自分の気持ちを吐露するのであるが、遊が「人を信じることが怖くなった」と言ったと同時に、光希も遊を抱きしめるのである。名シーンだと思う。 さらにそのようなワンシークエンスショットの間に挟まれる顔のアップが秀逸で、例えば、遊の元カノだった鈴木亜梨実にカフェで光希が声をかけられた後に、立ち去っていった亜梨実を目で追いながら光希が振り向くシーンと、教師と交際していることがバレて校長室から出てきた秋月茗子に光希が声をかけた際に、冷たい言葉を言って立ち去っていく茗子を目で追いながら光希が振り向くシーンが全く対照的に撮られていることに刮目するべきであろう。 遊が光希に手製のシチューを振る舞う時に、テーブルを挟んで対面する二人のシーンは小津安二郎的なものさえ感じさせる。 途中まではこれは良質のアメリカンニューシネマかATGのような傑作なのかもしれないと思って観ていたのだが、ラストのオチの親子のコミュニケーション不足は度が過ぎて、本作をターゲットとしている女子高生は納得しても、個人的には破顔をこらえきれなかった。 本作で使用されているカーペンターズの「愛は夢の中に(I Won't Last a Day Without You)」を和訳しておきたい。
「I Won't Last a Day Without You」The CARPENTERS 日本語訳
原題:『Jumanji: Welcome to the Jungle』 監督:ジェイク・カスダン 脚本:クリス・マッケナ/エリック・ソマーズ/スコット・ローゼンバーグ/ジェフ・ピンクナー 撮影:ギュラ・パドス 出演:ドウェイン・ジョンソン/ジャック・ブラック/ケヴィン・ハート/カレン・ギラン 2017年/アメリカ