MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『となりの怪物くん』

2018-05-11 00:27:26 | goo映画レビュー

原題:『となりの怪物くん』
監督:月川翔
脚本:金子ありさ
撮影:鍋島淳裕
出演:菅田将暉/土屋太鳳/古川雄輝/山田裕貴/池田エライザ/浜辺美波/速水もこみち
2018年/日本

情が薄い怪物くんの言動について

 主人公の水谷雫は他人を信用することなく、友人関係はドライで自分を裏切らない勉強する努力を惜しまず続けている。一方で、もう一人の主人公の吉田春は学年一番の秀才なのであるが、喧嘩っ早いが故に周囲に恐れられているために不登校になっている。つまり雫と春は対照的なキャラクターとして描かれているのである。
 そこで重要となるアイテムとして雫が持っている金魚鉢が描かれている。まだ幼かった雫には棚の上にあった金魚鉢は手の届かないもので、それはいくら勉強しても一番になれない自分自身の今の状況を暗示している。ところが春の喧嘩別れした父親の吉田泰造は大物政治家で春を後継者にするつもりでおり、既に全てを手に入れているにも関わらずその全てを拒絶している春を雫は理解できないのである。
 ラストにその金魚鉢が登場する。行方をくらましていた春が雫の前に二匹の金魚を持って現れ、二人は結婚するのであるが、よくよく考えるならばこの比喩が何を指しているのかよく分からないのである。二匹の金魚は2人を表しているとしても、雫が手を伸ばしても取れなかった金魚鉢は一体何を表しているのだろうか?
 仮に金魚鉢を「家庭」と捉えるとしても、春の兄の吉田優山は実は弟想いの優しい兄だったのだが、具体的な和解の様子が描かれることはなく、三沢満善の夏目あさ子に対する態度も妙に冷たく(ゲイなのか?)、あるいは春と雫の母親も最後まで現れることなく中途半端なものになっていると思う。そもそも原作の吉田春というキャラクターは複雑な性格(発達障害?)で、菅田将暉の演技が「正しい」のかどうかは判断が分かれるところではあろう。


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『ちはやふる -結び-』

2018-05-10 00:17:04 | goo映画レビュー

原題:『ちはやふる -結び-』
監督:小泉徳宏
脚本:小泉徳宏
撮影:柳田裕男
出演:広瀬すず/野村周平/新田真剣佑/上白石萌音/賀来賢人/松岡茉優/松田美由紀/國村隼
2018年/日本

広瀬すずと「天才」の物語の相性について

 前2作の完結編の本作は期待以上の出来だった。何といっても主人公の綾瀬千早を演じた広瀬すずの天性の才能が如何なく発揮されているように思う。
 東京大学の医学部を目指していた真島太一が部活を離れ、名人の周防久志の塾講師のアシスタントをしながら、指を負傷していた大江奏の代わりに最後の全国大会の団体戦の藤岡東高校との決勝に戻って来た際に、残った二札を巡って太一は敢えて自分たちに不利な札を選ぶのであるが、これが功を奏して端沢高校は優勝するのである。この時、かるたに関してあらゆる手段を尽くした太一の「感」が冴えたのだという話は『ラプラスの魔女』(三池崇史監督 2018年)の主人公の甘粕謙人の才能と規模は違うとしても同じものではなかっただろうか。


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『ラプラスの魔女』

2018-05-09 01:10:13 | goo映画レビュー

原題:『ラプラスの魔女』
監督:三池崇史
脚本:八津弘幸
撮影:北信康
出演:櫻井翔/広瀬すず/福士蒼汰/志田未来/佐藤江梨子/玉木宏/檀れい/豊川悦司
2018年/日本

ベテラン映画監督の謎の演出について

 東野圭吾のミステリーを原作としたものという以外には情報を得ないまま観に行ったのだが、その演出方法に驚いた。やたらと顔のアップが多く、それに伴うように登場人物に動きが感じられず、まるで舞台を見ているような気分にさせられるのである。
 こんな下手くそな演出をした監督は誰なのかと思ってエンドロールの最後を見たら、何とベテラン映画監督の三池崇史だったのである。ということは何らかの意図があって顔のアップを多用したのだと思う。確かに「アイドル映画」であるならば『ママレード・ボーイ』(廣木隆一監督 2018年)のような斬新な演出よりも本作のような演出の方が正しくはあるだろうが、それ以外にどのような意図でもって顔のアップが多用されたのかよく分からなかった。監督の体調でも悪かったのだろうか。
 よく分からなかったといえば、本作は2月に起こった出来事を描いているはずなのだが、それが2017年なのか2018年なのかもよく分からなかった。


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『ママレード・ボーイ』

2018-05-08 01:47:20 | goo映画レビュー

原題:『ママレード・ボーイ』
監督:廣木隆一
脚本:浅野妙子/廣木隆一
撮影:鍋島淳裕
出演:桜井日奈子/吉沢亮/優希美青/佐藤大樹/筒井道隆/谷原章介/檀れい/中山美穂
2018年/日本

 コミュニケーション不足で台無しになる演出について

 作品の冒頭は主人公の小石川光希が友人の秋月茗子と共に下校しているシーンであるが、ここから既に長回しのワンシークエンスショットで、本作で多用されている演出方法である。恋愛映画においてこのような演出は顔のアップが少なくなるために避けられているのだが、ベテラン監督だから好きなように撮ることができているのであろう。
 この演出がなかなか冴えていると思う。例えば、自分の父親ではないかと思って建築家の三輪由充に会いに行った後に、松浦遊と小石川光希が海岸で会話をするシーンもワンシークエンスショットで撮られており、急に遊が光希を抱きしめて自分の気持ちを吐露するのであるが、遊が「人を信じることが怖くなった」と言ったと同時に、光希も遊を抱きしめるのである。名シーンだと思う。
 さらにそのようなワンシークエンスショットの間に挟まれる顔のアップが秀逸で、例えば、遊の元カノだった鈴木亜梨実にカフェで光希が声をかけられた後に、立ち去っていった亜梨実を目で追いながら光希が振り向くシーンと、教師と交際していることがバレて校長室から出てきた秋月茗子に光希が声をかけた際に、冷たい言葉を言って立ち去っていく茗子を目で追いながら光希が振り向くシーンが全く対照的に撮られていることに刮目するべきであろう。
 遊が光希に手製のシチューを振る舞う時に、テーブルを挟んで対面する二人のシーンは小津安二郎的なものさえ感じさせる。
 途中まではこれは良質のアメリカンニューシネマかATGのような傑作なのかもしれないと思って観ていたのだが、ラストのオチの親子のコミュニケーション不足は度が過ぎて、本作をターゲットとしている女子高生は納得しても、個人的には破顔をこらえきれなかった。
 本作で使用されているカーペンターズの「愛は夢の中に(I Won't Last a Day Without You)」を和訳しておきたい。

「I Won't Last a Day Without You」The CARPENTERS 日本語訳

来る日も来る日も私は見知らぬ人たちが住む世界と対峙しなければならない
私は仲間にしてもらえない
強い人間でもないのに
私が救いを求めればいつでも心配してくれる人がいることが
分かっていれば安心する
あなたはいつもそばにいてくれる

あの虹を越えられそうになく
私のほんの些細な夢がどれも実現しそうにない時には
世界が強要してくるあらゆる狂気を受け入れることはできても
私はあなたがいなくては一日でさえも耐えられないだろう

この街は顔なじみがいない孤独な場所のように何度も感じている
私が必要とする時にはあなたがいつもそばにいてくれることが
分かっていれば安心していられる
あなたがいつも笑っていてくれることがこの上ない幸せなの

あの虹を越えられそうになく
私のほんの些細な夢がどれも実現しそうにない時には
世界が強要してくるあらゆる狂気を受け入れることはできても
私はあなたがいなくては一日でさえも耐えられないだろう

私に触れてくれるならば私は歌っていられるし
問題はどれも解決して消え去っていくだろう
あなたは持ってきた愛で私に触れてくれる
あなたがそばにいてくれるなら私は本当に元気でいられる

もしも私の友だちがみんな約束の半分を忘れてしまったとしても
それは彼らに思いやりがないということではなく
ただ気づきにくいということなの
あなたをひと目見れば
私は休むことなく生きられることを学べるだろう
私は最高の存在を見つけた

あの虹を越えられそうになく
私のほんの些細な夢がどれも実現しそうにない時には
世界が強要してくるあらゆる狂気を受け入れることはできても
私はあなたがいなくては一日でさえも耐えられないだろう

あの虹を越えられそうになく
私のほんの些細な夢がどれも実現しそうにない時には
世界が強要してくるあらゆる狂気を受け入れることはできても
私はあなたがいなくては一日でさえも耐えられないだろう

CARPENTERSさん『I Won't Last A Day Without You』の歌詞
アイウォウントラストアデイウィズアウトユー
words by ポールウィリアムズロジャーニコルズ
music by ポールウィリアムズロジャーニコルズ
Performed by カーペンターズ

The CARPENTERS -" I Won't Last A Day Without You " REMASTERED HQ


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『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』

2018-05-07 22:29:13 | goo映画レビュー

原題:『I, Tonya』
監督:クレイグ・ガレスピー
脚本:スティーヴン・ロジャース
撮影:ニコラス・カラカトサニス
出演:マーゴット・ロビー/セバスチャン・スタン/アリソン・ジャネイ/ジュリアンヌ・ニコルソン
2017年/アメリカ

「跳梁跋扈」の魅力について

 アメリカの女子フィギュアスケート選手のトーニャ・ハーディングの半生を描いた物語が本人や母親のラヴォナ・ゴールデンや元夫のジェフ・ギルーリーのインタビューなどを交えながら再現されているのであるが、暴力と憎しみが渦巻く生活の中であれだけの結果を残せたことは奇跡と言えるのではないだろうか。
 ハーディングが審査員の一人に直談判するシーンが印象的である。彼はハーディングに「私たちはアメリカの見本的な家族像を望んでいるのだが、あなたはそれを演じることを拒絶している」と言うのである。確かにハードロックを選曲してしまうハーディングに健全な家族像を演じることは無理だったのだが、間違いなくハーディングは「もう一つ」の典型的なアメリカの家族像を体現していたはずなのである。
 しかし日本人の観客にとっては見逃せないシーンがある。1992年のアルベールビルオリンピックにおいてメダルを取った日本人選手は佐藤有香ではなく伊藤みどりである。これはリサーチ不足なのか、あるいはトリプルアクセルを巡るトーニャ・ハーディングに対する「忖度」なのかよく分からないのだが、それぐらいの「いい加減さ」がハーディングと同様に本作の魅力なのではあろう。
 エンディング曲はイギー・ポップではなくスージー・アンド・ザ・バンシーズのカヴァーによる「パッセンジャー」である。ハーディングの立場に立ったように和訳しておきたい。

「The Passenger」 Siouxsie and The Banshees 日本語訳

私は旅人
私は色々と乗り継いで
裏町を通っていく
空に現れる星々は
深淵の明るい空を見せる
今夜はとても素敵に見えるはず

私は旅人
車のフロントガラスの下で座っている
窓を通して見るととても明るい
今夜は星が眩しいから
荒れ果てた裏町から見る空は
深淵で明るい
今夜は全てが良く見えて
思わず歌ってしまう

車に乗るならば
私たちは旅人になり
今夜は街を走り抜けて
荒れ果てた裏町を見て
深淵で明るい空を見て
輝きを増した星を見るだろう
それらの星は今夜私たちのために生まれたんだ

旅人よ
乗り心地はどうだろう
旅人よ
次々と乗り継いでいく
窓を通じて彼は何を見るのか?
道路標識や深淵の空を
今夜輝く星を
荒れ果てた裏町を
曲がりくねった海沿いの大通りを見る
全てはあなたと私のために作られたのよ
その全てがあなたと私のために作られたのよ
だって全てはあなたと私だけに相応しいのだから
だから乗っていきましょう
私のものを見せてあげるから
思わず歌ってしまう

Siouxsie And The Banshees - The Passenger


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『アンロック/陰謀のコード』

2018-05-06 00:52:11 | goo映画レビュー

原題:『Unlocked』
監督:マイケル・アプテッド
脚本:ピーター・オブライエン
撮影:ジョージ・リッチモンド
出演:ノオミ・ラパス/オーランド・ブルーム/マイケル・ダグラス/ジョン・マルコヴィッチ
2017年/アメリカ・イギリス

「レッド・スパロー」になれなかったCIA局員について

 監督はベテランのマイケル・アプテッド、主演はノオミ・ラパスで、さらに脇を大物の俳優陣で固めた本作は誰もが大きな期待を持って観に行くはずである。ところがこれが見かけ倒しの酷い出来なのである。
 例えば、時限爆弾の起爆装置を解除するために主人公が赤か青のどちらかのコードを切るというシーンがお馴染みのものになっている。それは観客に緊迫感を持たせるための「鉄板」の演出だからである。ところが本作は主人公のアリス・ラシーンが、マイケル・ダグラスが扮する敵方のエリック・ラッシュが手にしている細菌をばらまく起爆装置を奪い取ると、ギリギリのところでスイッチを切ってしまうのである。何と起爆装置に「オフ」のスイッチがついており、それまでもご都合主義的なものを感じてはいたのだが、ここで完全に白けてしまった。
 そもそもタイトルの「unlocked」とは「完落ち」という意味なのであるが、アリスは「完落ち」に失敗してCIAを辞めてケースワーカーとして働いているのだから、再び尋問官に選ばれる意味が分からない。どうしてこのような不完全な脚本が映画化されたのだろうか。


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『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』

2018-05-05 00:14:06 | goo映画レビュー

原題:『The Post』
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:リズ・ハンナ/ジョシュ・シンガー
撮影:ヤヌス・カミンスキー
出演:メリル・ストリープ/トム・ハンクス/サラ・ポールソン/ボブ・オデンカーク
2017年/アメリカ

「ポスト」の重圧について

 ワシントン・ポストの社主で発行人だった夫のフィリップ・グラハムが拳銃で自殺した後に、妻のキャサリンが夫の会社を引き継いだ年は1963年で、正式に就任したのは1969年。
 1971年にニューヨーク・タイムズが「ペンタゴン・ペーパーズ」をスクープした時にワシントン・ポストの一面は要人の娘の結婚式に関するものだったらしい。ワシントン・ポストという地方紙が当時どのような性格の新聞だったのかよく分からないのだが、本作を観る限りではキャサリンは地元に根差した「アット・ホーム」なものを目指していたのではないだろうか。
 ここで気になるのが原題の「ザ・ポスト」である。それはもちろんワシントン・ポスト紙を指しているのではあろうが、「Post」には「郵便」という意味もある。つまり本来ならばキャサリンは自分の好きなように編集したかったはずなのに、「郵便」として突然届けられた「ペンタゴン・ペーパーズ」を巡っていきなり「報道の自由」という重い責任を強いられる地方紙が混乱する「不条理劇」が二人の大物俳優を中心に描かれているのではないだろうか。
 作品冒頭で使用されていたクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルの「グリーン・リヴァ―」を和訳しておきたい。

「Green River」 Creedence Clearwater Rivival 日本語訳

冷たい水が流れているところへ俺を連れて行って欲しい
俺が愛しているものを忘れさせないでくれ
ナマズが食いつく丸太小屋に泊まって
夜に川沿いを歩いていくと
月明りの中で裸足の少女たちが踊っている

ウシガエルが俺を呼んでいる声が聞こえる
俺が木にかけたロープはまだあるだろうか
浅瀬に向かって飛び跳ねるのが何より好きなんだ
黒砂糖入りのパイやトンボがおまえに母親を思い出させる
平べったい石を拾い上げると
グリーン・リヴァ―に向かって投げて跳ねさせる

コーディ・キャンプで俺は時を過ごした
そこには無賃で貨車に乗る者たちや
枕木の上を歩いて旅する者たちも一緒だった
コーディ親子が俺を連れて言ったんだ
「おまえは世界がくすぶっていることを知るだろう
もしも途方に暮れてしまったならば
我がグリーン・リヴァ―に戻ってこいよ」と

Creedence Clearwater Revival - Green River (Lyric Video)


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『レディ・プレイヤー1』

2018-05-04 00:48:14 | goo映画レビュー

原題:『Ready Player One』
監督:スティーブン・スピルバーグ
脚本:ザック・ペン/アーネスト・クライン
撮影:ヤヌス・カミンスキー
出演:タイ・シェリダン/ベン・メンデルソーン/オリヴィア・クック/サイモン・ペッグ
2018年/アメリカ

結局解けなかった「ローズ・バッド」の謎について

 『パシフィック・リム: アップライジング』(スティーヴン・S・デナイト監督 2018年)の時代設定が西暦2035年で、本作がその10年後の2045年なのだが、製作会社も配給会社も違うからたまたまなのだろう。本作はマシ・オカがコンサルタントとして参加しており、日本に関する描写は正確だったように思う。
 しかし物語設定は『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(ジェイク・カスダン監督 2017年)と類似しており、その2045年のオハイオ州のコロンバスの荒廃とした街並みは、ラストで映される幼き頃のジェームズ・ハリデーの室内そのもので、まさに「オタク」と化した世界なのであるが、オグデン・モローと共に創り上げた「オアシス」と呼ばれるバーチャルネットワークシステムの後継者を巡る覇権争いが物語の主軸となる。
 どうもラストシーンに説得力が欠ける理由として、あれほど有名キャラクターを登場させて目くるめく世界を描いた後に、ウェイド・ワッツとサマンサ・クックのカップルや一緒に戦った仲間たちを通して「リアル」の大切さを強調するのであるが、それならば設立者であるジェームズ・ハリデーの孤独な人生とは何だったのかはっきりとしないことで、本人が何も語らないまま子供の頃の彼自身と共に自分の部屋(=世界)を去っていってしまったところにある。本作が「子供向け」とは言わないまでも「大人向け」とは言えない原因がここにある。


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『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』

2018-05-03 00:22:11 | goo映画レビュー

原題:『Jumanji: Welcome to the Jungle』
監督:ジェイク・カスダン
脚本:クリス・マッケナ/エリック・ソマーズ/スコット・ローゼンバーグ/ジェフ・ピンクナー
撮影:ギュラ・パドス
出演:ドウェイン・ジョンソン/ジャック・ブラック/ケヴィン・ハート/カレン・ギラン
2017年/アメリカ

「ゲーム性」を楽しむために

 ストーリーとしてはゲーム性のある面白いものかもしれないが、例えば、気弱のゲームオタクだった主人公のスペンサー・ギルピンが「ジュマンジ」というゲームの中ではムキムキの筋肉を持つスモルダー・ブレイブストーン博士という正反対のキャラクターになるとしても、そのアバターは「出落ち」でしかなくその後のストーリーに活きていないと思う。例えば、ブレイブストーン博士にスペンサーの声をアフレコしたならばキャラと本音のギャップが楽しめたのではないだろうか。
 ゲーム性の物語はそのゲーム性の故に、「直線的」なもので捻りがない。子供向けの作品と割り切って観る以外には、IMAXや4DX(最近ではハプティックベストというのもあるらしい)で観た方が制作意図に合っているのかもしれない。
 しかしラストシーンを見て、本作とは全く関係ないのだがかつてテレビドラマとして放送された『猿の軍団』のラストシーンを思い出した。『猿の軍団』の物悲しさに比べるならばこのハリウッド作品はもちろんハッピーエンドである。


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『パシフィック・リム:アップライジング』

2018-05-02 00:27:12 | goo映画レビュー

原題:『Pacific Rim: Uprising』
監督:スティーヴン・S・デナイト
脚本:エミリー・カーマイケル/スティーヴン・S・デナイト/T・S・ノーリン/キラ・スナイダー
撮影:ダン・ミンデル
出演:ジョン・ボイエガ/スコット・イーストウッド/ジン・ティエン/ケイリー・スピーニー/菊地凛子
2018年/アメリカ

SF映画の「類似化」について

 今回の主人公はスタッカー・ペントコストの息子で黒人のジェイクと少女のアマーラ・ナマーニで、これは『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(J・J・エイブラムス監督 2015年)頃から始まった少女がヒロインとして活躍する傾向を踏襲したもので、ジェイクに至っては『フォースの覚醒』に登場するフィンも演じているジョン・ボイエガで、差別化を図るにはストーリーが弱いような気がする。
 それにしても後半になって舞台が日本になったあたりからどうも日本人としてはその描写にも違和感を抱かざるを得ない。もちろん舞台設定は西暦2035年だからその頃には東京にもあれほど多くの高層ビルが立ち並んでいる可能性はなくはないだろうが、例えば、「目玉電気」という広告看板が存在するとは思えないし、「くすり」とだけ記された看板は何のために立てられているのかさっぱり分からない。だからといってギャグでもなさそうなので意図が分からない。
 おそらく中国資本で製作されているためだと思うが、それならば中国を舞台にすればいいし、あるいは『ジオストーム』(ディーン・デヴリン監督 2017年)のように優秀な日本のエキスパートを参加させればいいのである。


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