青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

フード・風土

2008年12月13日 22時12分48秒 | 日常

(画像:癒しの湯処)

久々に何にも予定のない週末の一日を得た。
こんな日は、前ならば夜明け前に起き出してどこかへ向かっていたものだが、最近眠気に勝てない場合もままあります。
今日もそんな感じで、午前4時に目覚ましをかけて起きたのだが、グズグズしているうちに再眠。

 二回目のおはようは午前8時。
すっかり遠出のタイミングを逸してしまった。
さりとて何もせぬのは勿体ないとも思い、もはや常連として通い詰めている山梨県は山梨市「正徳寺温泉・初花」へ。
相変わらずのゆったりしたぬるめの温泉で、タオルを枕にまどろみリラックス。

 

ここに来ると、昼くらいまでお湯に浸かって湯上がりに鰻を食って帰るのがデフォ。
いつもは「うな重(並)」を頼んでいるのだが、今日は「白焼き丼」にしてみた。
鰻ってのはある意味タレが付いてて当たり前だと思うのだが、タレなしのウナギってどんなもんなんでしょ。

白焼きは、ワサビとさらしネギを薬味に醤油を付けながら食べる。
大半の人にとっては鰻=蒲焼きって感じだと思うのだが、
タレがないので「ああ、鰻ってこう言う味をしていたんだね」と言う発見が(笑)。
脂の乗った焼き魚って感じだが、薬味を効かすとさっぱりと食べられなかなか美味しいもの。

そのまま甲州街道で戻っても良かったんだけど、帰りは久々に青梅街道へ。
R20甲州街道に対してR411は甲州裏街道と呼ばれ、
大菩薩嶺の北側から多摩川の源流に沿って走る山岳国道。

塩山市街から、サミットの柳沢峠まで一気に駆け上がります。
久し振りに通ったら、道がずいぶん付け替えられて高規格道路に変貌していたのにびっくり。
オメガループの橋なんか出来ちゃってたりして。

柳沢峠を越えると、道は多摩川の源流に沿って深山の中を走る。
紅葉も終わり、色をなくしたセピアの山はすっかり冬の雰囲気。
丹波渓谷のあたりは紅葉の時期はかなりの人出があるんだけど、
もうこの時期になっちゃうと車通りすらまばらですね。

丹波山村の物産館で夕飯のおかずを購入。
夕暮れの奥多摩湖は、不思議な青い霞に包まれていました。
湖畔を抜け。、氷川へ下るとようやく街の灯り。
青梅から八王子市内にかけてガッツリ渋滞に捕まってしまったw

丹波山村の物産館で買ったじゃがいも。
この地域では「せいだ」とか「せいだいも」と呼ばれているじゃがいもです。
普通のじゃがいもと比べるとコロコロと小さく丸いのが特徴。
小菅、丹波山、上野原あたりの北都留郡地域でしか売ってるのを見ません。

天明の大飢饉によって壊滅的な打撃を受けた山間部の農村地域に、
当時の甲府のお代官様だった中井清太夫(なかい・せいだゆう)と言う人が持ち込んだものだそうで。
清太夫さんのイモだから、せいだいも。

今の世の中、こんな小イモをチマチマと作っていてもいくらの収入にもならないと思う。
見栄えもしないし、実際袋に一杯入って100円だったしw
ただ、食べてみると甘みと粘り気が強く歯ごたえがあって美味いんですよ。
ちっちゃい分、味がギュッと詰まってるような感じで…
免許を取った直後に、丹波山の隣の小菅村までドライブに来た事があって、
確かその時にちょうど村の物産市かなんかが開かれてたんだよね。
その時に初めて食べて以来、このじゃがいものファンなんですw

ちなみに、丹波山村の物産館で売ってるコロッケも美味いのだが、
たぶんこのイモのおかげだと思っている(笑)。
まあ料理するのも面倒な大きさなんで、普通に茹でて皮むいて食べるのが一番かな。
結構おつまみ感覚でポイポイと食えてしまう。
塩でもいいが、ミソを付けて食べるのがこの地域の食い方。
北海道バターとか間違ってもつけちゃダメですw
素朴に、シンプルに食うのが美味いんだから。

多摩川の深い谷底に寄り添ったような集落形成を見せている丹波山や小菅では、
今でも農業と言えば急斜面にわずかに拓いた耕地があるのみです。
水に乏しい急斜面の痩せた土地にも、天候不順にも強いこのイモは、山間部の農村の危機を救いました。
過酷な条件下でも安定した収穫を得られると言う事で、秩父や群馬の南部にも「甲州イモ」の名前で伝播して、飢饉にあえぐ山村を救った。
北都留郡の中心都市である上野原の寺には、中井清太夫とこのイモが「芋大明神」として祀られているそうだ。
この小さなイモには、そんな偉大な業績があるらしい。

こんな事を紹介して何になると言う感じのマニアックな話をしてしまったが、
こう言う死ぬまで役に立たなそうな無駄な蘊蓄がことのほか好きなのだからしょうがない(笑)。
行った場所の風土に触れる事が好きなのでね(笑)。
特に食べ物は、その場所の風土とリンクしている場合が多いから。
こう言う話に興味のある人は、私といい友達になれると思うw

誰も買って帰らない見栄えの悪い小イモを、こっそり買って帰って夕飯に。
山梨の歴史の味がします。

コメント
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