
(青空に一本紅葉@荏原踏切)
急峻な箱根のカルデラをよじ登るように走る箱根の登山電車。撮影をする場所となると概ね限られてしまうのですが、大平台駅~上大平台信号場~大平台隧道にかけては撮影のポイントが点在しています。上大平台の信号場からちょこっと登った場所にある荏原踏切を、マルキューこと109号が降りて行きます。ここには踏切の隣に一本の紅葉の木があって、春の新緑・秋の紅葉といつも通りがかる人を楽しませてくれるのですが、え?夏は?…夏は、紫陽花があるからねえ(笑)。

「あじさいの小径」と名付けられた大平台の路地。路地ですが、そこは天下の嶮のど真ん中。ふらりと散歩するには躊躇しかねない心臓破りの坂などもあったりして。荏原の踏切の小径は姫之湯の裏手から結構な急坂を登った先にあって、機材を担いでの登坂は普段の運動不足の身には堪えます…

大平台周辺で撮影をしていると、あっちこっちから山に反射した登山電車の音が聞こえて来ては消える。荏原踏切のような四種踏切で撮影する時は、大体の通過時刻と音を頼りに聞き分けて準備をするんだけど、これが上下で複数の方向から聞こえて来るので、接近方向を誤ったりすることもあって安全確認には気を使います。濁点が消えて「てんしゃにちゅうい」になってしまった踏切の横を、HiSE塗装の2000型サンモリッツ号が降りて行きます。紅葉を窓辺に映して。

国道1号線から離れれば静かな大平台の温泉街。宿泊客がチェックアウトすれば温泉旅館は掃除の時間。浴場のお湯を落としたのか、路地を流れる水から湯の香が漂って来ます。荏原踏切を登って来たのは再びサンモリッツ。サンモリッツは3編成のうち2編成が2両固定なので、土休日は単行のアレグラとコンビを組んで輸送力を確保しています。2000型だけどサンモリッツ、ここ、試験に出るで(笑)。

鮮やかな大紅葉の下をくぐって、列車は大平台隧道へ吸い込まれて行きます。大平台の隧道は長さ302m。登山電車はトンネルの数こそ多いものの長さはさほどでもない。長いトンネルを掘らず、「箱根八里」に歌われるような羊腸の小径を等高線に沿ってクネクネと登って行くルートは、特に仙人台信号場から強羅にかけては「トンネルを掘って温泉の湯脈が絶たれたらどうするんだ!」という地元の意向に沿ったものだとされています。
紅葉は、表の葉っぱにそのまま太陽が当たるより、こういう透過光で裏側が輝いている方が好き。
暖かく緩やかな時間の流れる大紅葉の下で、いつ終わるとも知れない落葉を、のんびりと地元の古老が片付けていました。