青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

白鳥の夜は雨音と共に

2019年07月25日 17時00分00秒 | 長良川鉄道

(しとどの雨の終着駅@北濃駅)

北濃駅で折り返し18:00発の20レを待つ。駅に着いたとたん雨脚は激しさを増し、叩き付けるような雨粒が間断なく終着駅の駅前広場を濡らす。北濃の駅は周辺に民宿やスキーで有名なひるがの高原などの観光地へ向かうバスなどのアクセスルートにもなっていて、シーズンならもう少し賑わいを見せても良いのだと思うのだけど、いかんせん土砂降りの雨でこんな時間では駅に訪れる人もなく、駅舎も雨の中でじっと押し黙っているようであった。

この辺りの標高は約500m。さすがに都会よりは日中の気温も低いと見えて、すっかり街場では見頃の終わってしまった紫陽花が未だに花を付けている。昭和初期に開業した越美南線、開業当時は当然ながら蒸気機関車の出番が多かったようで、終点の北濃駅には機回し線と転車台が設けられていました。 乗客のみならず、長良川沿いの耕地で作られた農産品や、山から切り出された木材などの物資を乗せた貨物の扱いも多かったようです。貨車を牽引するのは美濃太田機関区にいたC11などのタンク車で、あまり大きな機関車は入れなかったみたいですね。

雨の中、子供は早々にエンド交換を終えて折り返し準備の終わったレールバスの中に入ってしまった。終点であれば、乗務員の詰所みたいなものくらいはあって、そこで折り返しまでのしばしの休憩でも取れたりするのだけど、ここ北濃の駅はそういう場所はないらしく、折り返しの30分弱のインターバルを乗務員氏も車内の椅子に座って過ごします。いつもはこの時間の上り列車なんか乗客いないんだろうけど、この日は我々親子のせいであまり休めなかったかもしれない。ダイヤ的には、乗務員の行路は関と美濃白鳥で区切られているように見えます。

紫陽花の咲き乱れるホームで写真を撮っていると、出発の時間が近付いてきました。ドアから顔を出して「お父さん早く乗らないと!」と催促する子供。乗り遅れたら確かに大変。美濃白鳥から先、ここ北濃まで来る列車はさらに少なく一日7往復のみ。終列車は19:47発という駅の掲示を見た子供が「終電はやっ!」と驚いていた(笑)。

北濃18:00発20レは、雨の中を淡々と走って10分、18:10に美濃白鳥の駅に到着しました。今日の乗り鉄旅はここでおしまい。明日も朝早くから鉄道旅だ。さすがに子供も朝からの乗り鉄旅に少しへばっているかと思いきや「お腹空いた」だとさ。ある意味頼もしいな。

今日のお宿は、駅から歩いて3分くらいの駅前旅館・浅野屋旅館さん。白鳥町の旅館として、おそらく古くからこの街で商売をなさっていたのだろうと思われる雰囲気のある和風旅館である。駅前旅館だから商人宿っぽいのかな、なんて勝手に想像していたのだが、通された離れの部屋に行く途中には中庭にある池に架かる太鼓橋を渡って行くのだが、澄んだ水に錦鯉が泳ぐ様は風流この上ない。昼間に訪れた郡上八幡の街のようで、気持ちが安らぎます。

明日の出発も早いので、今回は素泊まり。「料理屋旅館」と名乗るだけあって、郡上アユを使った料理でも有名な旅館だそうだ。オトナ旅なら文句なく一泊二食にするんだけど、正直コドモには旅館の料理って凝り過ぎててせっかくお願いしても箸が進まないものが多いし、そもそも郡上アユの味が分かるのかという問題はあるのでねえ・・・(笑)。という訳で、近所の焼き肉屋で軽く夕食。宿に戻って親子で風呂に入り、甲子園のオールスターを見ていたらいつの間にか子供は寝てしまったらしい。トタン屋根を叩く雨音は激しさを増している。明日も天気悪そうだなあ~、なんてひとりごちながら、部屋の電気のヒモを引く。おやすみなさいませ。


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