青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

水都大垣夏風趣

2019年07月28日 17時00分00秒 | 養老鉄道

(中京圏のスタンダード@313系特別快速)

美濃太田から岐阜、そして岐阜からは東海道本線でさらに西に向かいます。やって来たのは中京圏のスタンダード、というかJR東海のスタンダード313系です。JR東海においては、新幹線はN700系、在来線は313系、ローカル線はキハ25系と基本的に車種の統一が進んでいますが、徹底的な合理化と保守管理の共通化を図る企業哲学が伺えます。趣味的には没個性かもしれんけど、313系自身は非常によく出来た車両ではあるんですよね。発車してからのトップスピードまでの加速度とかたまらん。この車両が浜松から米原まで快速電車として走っているのは、JR東海の提供する最高のサービスなのではないかと個人的には思っている。

岐阜から特別快速で10分。あっという間に電車は大垣の駅に到着。米原まで乗ってって近江鉄道と言う選択肢もあったんだけど、近江鉄道一回乗りに行ったことあるからね。大垣駅に降りてみると、朝の美濃白鳥がウソのような大都会に思えてしまう西美濃の中心都市。旧暦の七夕を祝って8月上旬に開催される「水都祭り」の飾り付けが出迎えてくれました。

大垣と言えば「水都」という言葉を頭に冠して紹介されることの多い街。伊吹山地や養老山地に源を発する揖斐川や杭瀬川の流れと、その山々に降った雨が伏流水となり、大垣の街のあちこちで湧き出している事から昔から水に恵まれた土地として栄えて来ました。どうでもいいが、大垣競輪の記念レースも水都大垣カップみたいな名前だった記憶がある。大垣と言えば平成の競輪史を彩った山田裕仁のホームバンクでもあったが、話がそれるのでここまでにしたい(笑)。大垣で途中下車したのは、乗り換えもあるけどそんな「水都」のこの時期ならではの名物を味わいたくて・・・ということで、駅前の和菓子屋「金蝶園総本家」へ。

朝もはよから店頭に並ぶ人々。皆さん何をお目当てかと申しますと、名物「水まんじゅう」を目当てに来る人波なのであります。夏の時期、この水都大垣の名物と言えばつめたい水で冷やされた水まんじゅう。お猪口に入ったまま水槽で冷やされているその販売方法も涼しげで、夏の大垣の街の風物詩ともなっています。もともと水まんじゅうとか水ようかんとか水系の和菓子って好きなんよね。ちなみに私はこしあん原理主義派です。

地元では名の通った老舗の和菓子店らしく、店内も上品な雰囲気。まだ時間は朝の10時前だというのに来る客が引きも切らない。我々親子もおこづかいをくれたじーちゃんばーちゃんと家族に、ささやかながらの和菓子のお土産。そして店の隅に作られた喫茶スペースにて、作り立ての水まんじゅうを冷えたお抹茶でいただきます。ワラビの粉と葛で作られたもちもちぷるりとした皮の部分の食感が官能的で、出来たてでまだほの温かい上品なこしあんと合わさって美味いものである。添えられた粗目の氷と一緒にガリガリと味わうのもまた趣が変わって良い。こしあん&抹茶の基本味だけでなく、季節のフルーツ味やコーヒー味なんかもあるそうで、またの機会に試してみたいですね。

さて、甘い和菓子でほっと一息ついたところで、乗り鉄の旅を再開する事にしましょうか。大垣から乗り換えるは、揖斐から大垣を通って桑名に向かう養老鉄道。言わずと知れた元近鉄の養老線ですが、路線自体の立て直しの一環として平成19年から近鉄の子会社として切り離され、地元自治体の支援を受けながら経営を続けています。今でも養老鉄道の株主はほぼ近鉄本社ですし、走っている車両も近鉄の車両なので、資本形態から見ても近鉄の路線の一部と見なしてもおかしくはないのでしょうが、たぶん自治体からの補助金の拠出とかを受けるには別会社になってた方が都合がいいとか色々あるんだろうね。いくら養老線が赤字でも、近鉄本体が黒字だったら、「養老線の単体での赤字を理由に黒字の近鉄が補助金を受ける」という構図は理解が得にくい部分がありそうだし。

 

ホームにはハローキティラッピングの近鉄600系桑名行き。なにやら我々が訪問する前日にデビューしたらしいのだが、これこそ「ご当地キティ」の新たな形なのだろうか。「養老鉄道」のイメージと「キティちゃん」というキャラクターイメージにどこまで親和性があるのか分からないが、方向板に差し込まれたイラストにちゃんと養老の滝とか書かれてて名神高速の養老SAとかで売ってそうな感じはある。養老鉄道のHPに運用が掲示されるあたりそれなりに沿線での注目度はあるようなのだが、個人的にはラビットカー塗装とかの運用を掲載して下さい(笑)。

大垣は養老鉄道の中心駅ですが、その構造は小田急線で言えば藤沢、東武野田線で言えば柏のようなスイッチバックの構造になっていますので、駅を出て行く電車は桑名・揖斐のどちら行きも同じ方向に出て行きます。乗客の流動も、大垣から桑名方面・揖斐方面にきっぱりと分かれていて、それぞれ大垣~揖斐の養老北線・大垣~桑名の養老南線と言ってもいいような路線形態になっています。以前はあったようですが、桑名~揖斐を全線を通して運行される列車もありません。

まずは大垣から北側の揖斐までを乗り潰して来ようと思います。キティ電車は桑名行きなので揖斐行きの電車を待っていたら、西大垣の車庫から回送で運ばれて来たのは・・・おお、都内城南地区の皆様にはおなじみ、元池多摩線の東急7700系7712編成。平成30年の秋に狂騒の中で池上線から引退したのは記憶に新しいところ。「東急7700系ラストラン」の発表には、「ああよく走ってくれましたね、お疲れ様でございましたね」と思ったもんですが、同時に「今後は養老鉄道に移籍します」と言われた時には、まだ走らせるのかよ的な意味で「ちょっと何言ってんだかよく分からない」ってなりましたよね(笑)。

そもそも7700系のベースである東急7000系は、昭和30年代後半の製造の車両と記憶しているのですが、この車両で「老朽化した近鉄600系を置き換えます」と言われたらそりゃ「???」ってなりますよねえ。確かに7700系に改造された時に、車体の外板以外の艤装品を大体取り換えているのですが、製造から50年・改造から30年くらい経過している車両に置き換えられる近鉄600系(平成4年改造)の気持ちやいかに。という訳で東急車の投入による養老鉄道の過渡期的なスナップを一枚。

実は置き換え対象の近鉄の600系も車体は新しいですが、足回りは1950年代の近鉄の旧型車両の流用品なども混じっていたりと、細部の保守管理に経年劣化による苦労は否めない事が今回の置き換え理由のようです。それでも、車齢で言えば50年越えの車両である東急の7700系については、池多摩線系統にいた15編成のうち過半数以上の9編成を引き取るというのだから恐れ入ります。東急7000系ってのは日本のステンレス車両の嚆矢みたいな存在だけど、よっぽどしっかりと作られていたんだなあと感心するばかり。さすが東急のステンレス、100年乗っても大丈夫ってか。


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