青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

日車の夢の玉手箱

2016年08月17日 20時00分00秒 | 富山地方鉄道

(地鉄の夜は更けて@電鉄富山駅)

既に子供とヨメは寝てしまった22時半。ホテルの部屋でちょっと喉が渇いて、飲み物を下のコンビニに買いに行く。ついで、あくまでついでで、駅の真上に泊まっていれば駅をちょっと覗いてみたくなるもの。ビル内の店舗も全て店仕舞いを済ませ、すっかり静かになった電鉄富山駅のエントランス。それでも地鉄電車はまだ動いている。


思わず最低区間の運賃の切符を買い、駅の中に入ってみた。3番ホームに本線方面の電鉄黒部行き、4番ホームには先発の不二越・上滝線南富山経由の岩峅寺行き。電鉄黒部行きは上市より先の魚津方面、電鉄黒部までの最終電車であります。ちなみに電鉄富山からでは宇奈月温泉行きの終車は平日だと21時37分と結構早い。まあ普通列車で宇奈月温泉まで1時間40分ほどかかるので、やむを得ないのかもしれない。

 

電鉄富山のお隣・稲荷町駅。車庫と工場を擁する地鉄の心臓部で、乗務員の詰所なんかもこの駅にありますね。本線と不二越・上滝線の分岐駅で、扇の形に分かれた両線の間に稲荷町工場と車庫が挟まれているスタイル。稲荷町と電鉄富山の間は区間運転以外のほぼ地鉄の全列車が通過するため、線路容量の関係もあり複線になっています。

 

車庫にて休むカボチャ14760と、奥には10020の3連がいた。朝以外は稼働しないという話を聞いてたので、夕方の常願寺川の鉄橋で撮れたのは僥倖であった。たぶん運用が真っ先に終わる編成なので、車庫の中でも一番奥に入っているようだ。ダブルデッカー&アルプスエキスプレスが休む留置線の横には富山地鉄の検修、改造、その他もろもろを一気に引き受ける稲荷町工場。水銀灯に照らされたクラの中には主電動機と思しき機械類が棚に置かれているのが見えたりして。

   

車庫の奥で休む10020形3連。昭和30年代の地方私鉄向け高規格車両である「日車ロマンスカー」シリーズと言えば、福鉄の200型、長電の2000系、そしてこの地鉄の10020形ですな。長電2000は既に鬼籍に入り、福鉄の200は車籍はあれどほぼ運用を離脱した状態ですから、日車ロマンスカーの最後の生き残りはこの編成と言う事になりましょうか。どれも丸みのある面構えの湘南2枚窓に片開き2ドア・内装はビニールカバー付きクロスシートというその当時における精一杯の高級感に満ち、走り装置もWNドライブか中空軸の平行カルダンに高出力モーターという共通点があります。


4年前に初めて富山に行ったとき、稲荷町の留置線で寝ていた10020形。アタクシはこの「日車ロマンスカー」シリーズが大好きで、長野福井富山と全部見に行きましたけど、このシリーズってのは言うなれば日本の高度経済成長期に地方私鉄が自社のイメージリーダーとして導入したフラッグシップ的な存在なんですよね。ただの高性能車輌と言うだけでなく、当時の鉄道会社の思い入れと言うか、明るい未来に向けた夢を詰め込んで華々しくデビューした車両たちに、地方が元気であった頃の、鉄道が元気であった頃の匂いを感じるんですよねえ。

引退する時期は決して遠くないと思うんだけど、どれもこれもが誉れ高き名車。
末永く活躍して欲しいし、引退後も大切に保存されて然るべき車両たちだと思いますね。
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