青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

清流長良に綾なして

2019年07月21日 17時00分00秒 | 長良川鉄道

(ノウゼンカズラの咲くころ@美濃市駅)

 名鉄旧美濃駅の見学を終え、昼下がりの駅の近くの料理屋で昼のランチ。名古屋っぽく親子で味噌カツ定食。次に乗る列車の時間が気になって、少し急ぎ目の食事になってしまった。都会の電車じゃないから、一本乗り逃すと後が大変なのである。巻きのペースで食事を終えて駅に着いたはいいが、今度は子供が「トイレ」とか言い出すから気が気じゃない(笑)。長良川鉄道って結構長い時間を走る割に車両にトイレ付いてないんですよね・・・交換駅のダイヤに余裕があるのでそこで行ってくださいって感じになってるみたいだけど。

美濃市発13:25、長良川鉄道9レ美濃白鳥行き。我々と夫婦一組の待つホームに滑り込んで来たのは、長良川鉄道の観光列車「ながら」型のナガラ502でした。外身のエンジ色のカラーリングとレタリングはどっかで見たよーな。ってーか肥薩線の「いさぶろう・しんぺい」とか富士急の「富士登山電車」の色だよね。という事でこちらも水戸岡鋭治デザインのミトーカ車両でございます。

このナガラ502の愛称は「ながら・かわかぜ」。まあ私のようなスレた鉄道マニアには「まーたミトーカ車かよ」という意味で正直感動は薄いのだけど、おそらく彼の功績というのは制限の多い鉄道車両におけるデザインの世界において「観光列車のフレームワーク」を作り上げた事なのかな、と思う。JRのように潤沢な資金で一から車両を設計さしてくれればいいけど、ローカル線の経営状態から考えてそんなバカバカ予算付けられるわけはないので、既存車両の改造を、鉄道車両の安全面をクリアしつつ、限られた予算の中、最大限の結果を出すには、今までの積み上げられた実績の中のメソッドを活用して仕上げていくのが一番良いのでしょう。結果として「どっかで見たような」車両が出来上がってしまうのだろうけど。

車内の設えも出入り口にはオモチャの飾り棚、木目を生かした椅子のつくりといかにもな氏のデザインの雰囲気の世界が広がっている。正直に言えば量産化された観光列車なのだろう。本来その鉄道会社のフラッグシップトレインとなるべき車両がこういう「量産型水戸岡デザイン」で良いのか、という本質的な疑問はあるのだけれど、重ね重ね三セク会社の限られた予算で最大限の効果を出すにはこうするしかないのでしょう。マニアの戯言より、一般的な観光客にはやっぱりアピール度は高いのだろうし。

美濃市を過ぎ、車窓の風景はいよいよ清流長良川に沿って、里山の小さな集落を結びながら列車は小さな駅に丁寧に停車して行く。第三セクターになってから作られた新しい駅や、名称が変わった駅もありますけど、基本的には国鉄の越美南線時代に作られた駅が多く、雰囲気は往時のものをよく残しています。長良川橋梁のトラスも年代物で、開業当時のものがそのまま使われているようです。今回は乗り鉄の旅なんであまり駅の間で撮影する事が出来なかったんだが、長良川と鉄橋を絡めて列車を撮影してみたかったなあ。

長良川と綾なして走る鉄道を、大きなPCコンクリート橋が越えて行く。東海北陸自動車道の橋脚である。この高速道路の開通によって、長良川鉄道の主要駅である関・美濃市・郡上八幡・美濃白鳥へ名古屋や岐阜から高速バスが直接向かうようになりました。中京圏の中心部へダイレクトアクセスする高速バスには、料金も速達性も比べるべくもない鉄道。それでも、川を越え森を抜けてくねるように走るレールからは、トンネルで山を真っ直ぐに貫く高速道路にはない車窓風景を眺め愉しむ事が出来ます。

マツバギクだろうか、ピンクの花が敷き詰められた赤池駅で走り去る列車に向かって手を振る地元の子供たちに、思わず手を振り返す。後ろで草むしりをしているのは子供たちのばあちゃんだろうか。こんな光景を見ることが出来るのも、月並みながらローカル線の旅の良さなのではないでしょうかね。


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