(アルピニストを待つ@新島々駅)
富山からの帰り道、安房峠を抜けた前川渡の道の駅で仮眠。朝4時頃に目が覚めて山を降りたら、新島々の駅で夜が明けた。駅前にずらりと並ぶアルピコグループの路線バス。上高地を始め、乗鞍高原、白骨温泉、そして平湯・高山と北アルプスの山岳地帯へ分け入るアルピニストや観光客の重要な足。安房峠道路が開通し、信飛間の公共交通での行き来はだいぶ楽になりましたが、かつての旧道安房峠のつづら折れの坂道こそなくなったものの、奈川渡ダムの前後に残る幅員の小さい連続トンネルと大型バスが入線するにはかなりシビアな隘路。熟練のドライバーの腕が試される山岳路線でもあります。
大量の大型ハイブリッドバスが居並ぶ新島々駅前。まだ始発電車の時間ではありませんが、新島々のホームで滞泊中の上高地線の電車。ここも京王3000系。浅電の3000系と違ってパノラミックウインドウの後期型ですが、何だか少々煤け気味。アルプスの山に分け入るアルピニストたちを、JRの松本駅からここ新島々まで運ぶのがアルピコ交通・上高地線ですが、アルピコ交通ってーと何となくバスの印象が強くて、旧・松本電気鉄道(松電)の言い回しで説明した方がイメージは湧きますね。松本電気鉄道・川中島バス・諏訪バスの3社がくっついたのがアルピコ交通で、長野県における同社のバス部門の大きな営業網に比べると、元々の松本電気鉄道の鉄道事業の規模は微々たるものです。
そんな上高地線の電車を、新島々の次の駅である渕東(えんどう)駅で撮影してみることに。徐々に明るくなっていく梓川流域。田んぼの中にポツンと佇む雰囲気の良い駅。上高地線、昨年夏の豪雨で松本市街にある田川の鉄橋が落ちてしまい、6月にようやっと全線で運転を再開したばかりなのですよね。久し振りに復旧した「松電」の姿を、朝のいい光線で撮影する愉しみ。
七月の早い時期の朝、朝露にしっとりとガクアジサイが濡れる。安曇野の朝の空気の中、松本行きの始発電車としてやって来たのは今年の春に新車として投入された20100形でした。東武の日比谷線直通車として働いていた東武20000系を改造して、まずは1編成目が上高地線に投入されています。この車両によって、現在使われている元京王井の頭線の3000系は徐々に置き換え、ということになるのだそうで。
この前日に見て来た北陸鉄道の浅野川線と、アルピコ交通上高地線には大きな車両上の共通点があって、どちらも現在京王3000系を使用しており、それを最近になって東京メトロの日比谷線に関連する車両で置き換え始めています。北鉄浅野川線の営団03系に対してこちらは東武20000系ですが、おそらくどちらも京王重機整備に車両導入を依頼しているために、タネ車が似通ってしまうのでしょう。東急7000系やその後進の1000系、日比谷線3000系と03系の実績でも分かるように、オールステンレス(またはアルミ)で大量に作られ、なおかつ長年18mの3ドア車で営業して来た日比谷線の車輛は、基本的に地方私鉄が求める物を全て備えた極めてパフォーマンスの高い車両のようです。(日比谷線も後継車両は20m4ドア車が入ってしまったので、これからはサイズ感が合わなくなってくるのかな)
暁の空に向け、始発電車が松本へ向かって坂道を降りて行きます。東武の20000は大半が館林の津覇車輌で日光線ローカルの20400系に改造されたんですが、松電向けには都合4編成が導入される事が内定しているそうです。おそらく20000系→20400系への短編成化に伴って余剰となった中間電動車改造なので、後付けの運転台の妻面の表情がのっぺりしているのがやや味気ない。表情は何となく仙石線とか鶴見線の205系っぽさがありますが、サイドビューはモロに東武車が残っているのが面白いですね。おそらくは寒地用の霜取り用補助パンタが両サイドにあるので、寒い時期に前パンが上がった際なんかも見てみたいですねえ。