青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

野田っぽり物語

2018年03月27日 22時42分34秒 | 小湊鐡道

(春行きのタイムトンネル@月崎~上総大久保間)

月崎駅の南にある名もなき小トンネル。ここを抜けると丘陵地の間の小さな谷に出ますが、この辺りは地元民には「野田っぽり」と呼ばれているそうな。元々は笹薮だらけの荒れた土地だった野田っぽりですが、里山トロッコの運行を機にボランティアの方々が開墾。マントの群落を開き、笹を刈って、根を抜いて、菜の花の種を播いてと相当な苦労の歳月を経て、こんなに素敵な場所に生まれ変わっています。子供と二人で三脚並べて列車を待っていると、我々を目印にしたのか三々五々と同行の方々が集まって来ました。皆の準備が万端整った頃、菜の花に誘われたテントウムシのように、プワンと独特のタイフォンを轟かせながらキハ200が小トンネルを抜けて来ます。


オトーサンはちょいとハイアンからタテ構図で。この後ろの僅か20m程度のトンネルは月崎第二隧道と言いますが、野田っぽりの先にある大久保隧道にかけてはかつては県道沿いに藪の生い茂ったジメジメした谷筋だったんですよね。実際開墾されてみて、初めて野田っぽりが谷あいに小さく広がる盆地だったという事が分かったくらい。いま見ても、国土地理院の2万5千分の1地形図では野田っぽりは荒れ地の表記がされているのだけど、こんなにきれいに開墾されたのだから、荒れ地マークは外してあげてほしいなあ。


このアングルからもうちょっと右に開いた立ち位置にも同業者の方々がいたんだけど、そっちからはもっと菜の花いっぱいの野田っぽりが画角に収まるようです。自分はいかにも小湊らしい、砂利まじりの粗いコンクリート塗りの坑口が画に欲しかったのでこちらをチョイス。車体に鮮やかな菜の花の黄色が照り返すような暖かな春の光に包まれて走り抜けたキハ200。ディーゼルの重油の香りは、すぐに菜の花の香りに打ち消されたのでありました。
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