(物憂げな午後@都電梶原電停)
あまり天気予報の良くなかった日曜日、上の子供がどこか連れて行けと言って来たので二人でブラブラと電車に乗った。アテもなく新宿から秋葉原に出て、日暮里から舎人ライナーに乗り、熊野前で降りて都電に乗り換える。子供がおねだりするので梶原の電停で下車。珍しく一眼レフも持って行かなかったのでスマホ撮り。泣き出しそうな空が梅雨らしい。思えば雨のない今年の梅雨である。
思えば去年もこの時期に都電に乗りに来た。飛鳥山の紫陽花が見ごろの時期でもあります。電停から踏切を渡って二軒目、和菓子の「明美」さん。地元飛鳥山の紫陽花をイメージした美しい金平糖や、鮎の形の和菓子が夏らしい。夏の和菓子と言えば私は水まんじゅうとか麩まんじゅうが好きですねえ。笹の葉っぱに包まれたのをツルっと食うのが美味いんだ。
そして子供にねだられたのが、この「明美」さんの最大の名物「都電もなか」。いつから売られているか知りませんけども、確固たる東京名物としての地位を築き上げた下町の一品。パリリと乾いた皮に包まれた粒あんとねっとりとした求肥は、シンプルながら甘いもの好きには堪えられない味わい。都電の新車が出るたびに律儀にパッケージを作っており、最新の改造車7700形までしっかりラインナップに入っているのが丁寧です。
梶原の電停には、「たばこ」の古びたホーロー看板も懐かしい売店と古書店があって、今でも営業を続けている。雑然と積まれた古書とぶっきらぼうに差されたスポーツ新聞の取り合わせが、より物憂げな下町の午後の時間を感じさせる。梶原の街は愛宕地蔵を囲む「梶原銀座」と呼ばれる商店街を中心にした地区で、地蔵の縁日の日はそれなりに賑わうそうですが、私が行く時はいつも案外とひっそりしているイメージがあります。
この電停の隣の古書店は「梶原書店」と言って、創業者のご主人はたいそう競馬好きだったそうな。ある日、新聞に載っていた騎手候補生募集の広告を目にしたご主人。ちょうど頃合いに体が小さかった古本屋の息子は、オヤジのひょんな勧めのままに馬事公苑の騎手課程に進むことになります。下町でベーゴマや缶蹴りに明け暮れていた少年は、落第ばかりの候補生。三度の騎手試験を経てようやっとこ騎手の免許を取り、21歳という遅咲きのデビューを果たします。それが、のちの第54回日本ダービー優勝ジョッキー・根本康広騎手。
この古書店からダービージョッキーが生まれた事を、一体どれだけの人が知っているのだろうか…
とうとう雨が降り出した梶原の電停を、都電がせわしなく行き交います。
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