tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

再検証!暗~い奈良の夜 花街で照らせ(産経新聞夕刊)

2014年06月02日 | 観光にまつわるエトセトラ
産経新聞5/28付夕刊(大阪本社版)の「暗~い奈良の夜 花街で照らせ」という記事の問題点については当ブログ記事で紹介し、多くのアクセスをいただいた。もうこれでおしまいにしようと思っていたが、どうも気持ちがスッキリしない。で昨日の日曜日(6/1)、東向商店街(奈良市)で「悉皆(しっかい)調査」(全ての対象店に対する調査)をやってみた。
※トップ写真は、東向商店街の入口。6/1(日)午後4時に撮影



大したことではない。「奈良市東向商店街協同組合」で全商店のリストを入手し、北から順番に「閉店は何時ですか?」と聞いて回っただけでなので、1時間で済んだ(休業していた店はネットで確かめた)。その結果を以下に紹介する。上記記事を書いた産経新聞奈良支局の記者さんも、よく読んでほしい。一介のアマチュアでも、取材にはこの程度の手間はかけるのである。


以下、8点の写真は6/2(月)の午後9時以降に撮影したもの(6/3追加)

「ひがしむき商店街マップ」によると、東向商店街のお店は全74店。うち飲食店は32店である。飲食店には喫茶店・カフェ8店を含む。飲食店が集まった「なら街横丁」には9店が入っているので、より正確には飲食店が40店ということになる。


東向商店街の入口。新聞では記者は意図的に右(西)を向き、シャッター
の閉まったたばこ屋と土産物店を撮った。これは6/2午後9時過ぎに撮影


少し左を向けばこんな様子だ。回転寿司も居酒屋も成城石井も開いている。このような
「明るい」写真は、産経の記者には都合が悪かったのだろう(6/2午後9時過ぎに撮影)

産経の記者は《新緑の奈良は、観光客であふれかえっているが、午後8時になれば主要観光地のターミナルである近鉄奈良駅周辺の商店街はシャッターがほとんど閉まって飲食店の明かりも消え、人影はなくなる》と書いた。


人影がなくなるどころか、月曜日なのに午後9時を過ぎてもお客がたむろしている。写真は、和食屋八寶
(はっぽう)前で6/2撮影。クロカワ(時計店)は閉まっているが、とんかつがんこもミスドも開いている

これは《「昔は東向商店街も午後9時半ぐらいまで開いていた。でも、今は午後8時にはシャッターが閉まっとるでしょ」かつての奈良町のにぎわいを知る近畿日本鉄道の山口昌紀会長は懇話会でこう指摘》というコメントを受けているので、当該「近鉄奈良駅周辺の商店街」とは「東向商店街」(近鉄奈良駅前)のことであろう。写真に出ていたのも、東向商店街の入口である。まずは、これを検証してみたい。


6/2午後9時過ぎに撮影した東向商店街の「Baby Face」


6/2午後9時過ぎに撮影したカリィポッピーのお店(東向商店街)

調査の結果、東向商店街で午後8時までに閉店するというお店は、7店だった。
奈良山本珈琲館、銀杏や(喫茶)、弁天(喫茶)、KIZUNA Cafe(喫茶・軽食)
うどん亭、うどん むぎの蔵、釜粋(=かまいき うどん)

つまり40店中、7店。わずか18%だ。午後8時を過ぎてから「どうしてもコーヒーを飲みたい」という人は少ないと思うので、分母・分子から喫茶系(8店)を除くと、32店中3店で9%だ。東向商店街のマクドナルドは午前1時まで開いているので、喫茶店が閉まっていてもたいていの人は不便を感じない。残る3ヵ店はすべてうどん屋で、もともと深夜には需要が少ない業態だ(ラーメン屋は深夜まで開いている)。



三条通の屋台村(6/2午後9時過ぎに撮影)


小西さくら通りに新規オープンしたお店。女性客で満席だった
(6/2午後9時過ぎに撮影)。うーん、私も入りたかった!

午後8時までに閉まるのは、うどん屋さんの3店のみ。これで「今は午後8時にはシャッターが閉まっとるでしょ」という発言が間違いで、せいぜい「午後8時を過ぎるとうどん屋が閉まっとるでしょ。ワシは、飲んだ後にはうどんで締めたいのに!」だということが分かる。なお午後8時までに閉まるうどん屋のうち1店は、近鉄系(うどん亭)である。

それにしても産経記事に出ている写真はあまりにも寂しすぎる。奈良に住む者なら誰でも知っている。この記者は「午後8時を過ぎた」(午後8時以降か10時以降かは、あえて問わないが)東向商店街の入口(北端)から、わざわざ「西」を向いて、シャッターの閉まったぷかりこ(原田たばこ店)、横田物産本店(土産物店)、福泉堂(名産品店)と銀杏や(喫茶店)の写真を撮っている(ぷかりこは昼間でもよく閉まっている。自動販売機で十分なのか)。これらは、あえて深夜営業してほしい店ではない。



しかもアーケードの電灯は午前零時ころまで煌々と灯っている。仮に全店舗が午後8時に閉まっても、決して暗くはならない。一体どこが「暗~い奈良の夜」なのか。こんなターミナル駅の駅前がまっ暗なら、痴漢の巣窟になるではないか。

東向商店街の入口(北端)から「東」を向けば、全く違った写真が撮れる。そこには午後10時まで営業しているととぎん(回転寿司)と、午前0時まで営業している風神(居酒屋・お茶漬け)があるからだ。ほんの少し左に捻れば、ちゃんと明るい看板が写るのである。そのとなりの月日亭も成城石井も、午後10時まで営業している。

新聞に載った写真では、午後8時を過ぎてなお煌々と明るいととぎんや風神の看板を、ギリギリのところで上手にカットしている。明らかに記者は、作為的に撮っている。


この写真は6/1午後4時に撮影したものだが、夜も同じ感じだ。1階のととぎん(回転寿司)
は午後10時まで、2階の風神(居酒屋・お茶漬け)は午前0時まで営業している

調査の結果、午後8時までに閉まる飲食店は喫茶店とうどん屋だけだということが判明した。しかし記者は、わざわざシャッターを閉めたたばこ屋や土産物店の写真を撮り、その真上のリード文に《主要駅周辺の飲食店の多くが午後8時に閉店するため「夜の街が暗い」と指摘される奈良》と書いて、その悪口を全国にバラ撒いた。これが「暗~い奈良の夜 花街で照らせ」という記事のカラクリである。





私のような素人が1時間で確認できた調査だ。なぜプロの記者がちゃんと足を運んで調べなかったのか。写真の撮り方も、あまりに作為的だ。Facebookには「心ない記者の心ない記事で、奈良のイメージが音を立てて崩れていく気がします」という書き込みがあった。「暗~い奈良の夜」「駅前8時で真っ暗」と書かれて傷ついた奈良の信用は、どのようにして取り戻してくれるというのだろうか。


※以下13点の写真は、6/5午前11時、東向商店街で撮影した(6/5追記)  
「ほとんどの店のシャッターが閉まり、閑散としている」と書かれた写真の向かい
ととぎん(回転寿司)は午後10時まで、風神(居酒屋・お茶漬け)は午前0時まで


その南となりY会長が率いる近鉄系の月日亭も、午後10時まで
営業。会長の知らないところで、従業員さんは頑張ってます!





6/3追記1)僧侶のI師からFacebookに、こんなコメントをいただいた。
何より、tetsudaさんのマメさに驚きです。こういう記事が無ければ検証もされなかったので、プラス思考に考えればよかったのではないかと思います。また、我々奈良に住んでいる者が、実は奈良のことを知らなかったことも、こういう記事が書かれるもとになったのではないかとも思います。ここから始めていかんとあきませんね。




マクドナルド


つのふり

(6/3追記2)奈良の情報ブログ「鹿鳴人のつぶやき」にも、この話が紹介されています。
産経新聞夕刊の上記の記事をめぐって、いろいろな論議を呼んでいます。私の周りのほとんどの人がなんというひどい記事だと言っていますし、抗議すべきだという意見もあります。わたしは出張中の記事であり産経新聞をふだん購読していませんので、出遅れていますが紹介します。奈良の観光やグルメなどにもくわしい「どっぷり!奈良漬」ブログで、tetsudaさんが記事の紹介と意見を2回にわたってしっかり述べておられます。(上記記事写真も拝借)わたしもtetsudaさんの意見を支持します。

わたしもこの記事をtetsudaさんのブログで読んで、なにゆえこんな記事を最近奈良の良さをしっかり書かれている産経新聞さんが書かれたのか、とても疑問に思います。 奈良の飲食店は奈良の魅力を伝えようとそれぞれ努力されています。

わたしも東向き商店街や中心市街地の商店街やちょっと入ったところの飲食店で夜10時過ぎまでよく皆と食事しながら会合したり、ゆっくりひとときを過すことが出来る店がたくさんあります。良い情報はなかなか伝わりませんが、悪い情報は一気に伝わります。一旦失った信用や良い情報は回復するのはたいへんなエネルギーが必要です。いま、奈良は一丸となってより良い情報を発信しようとしています。新聞記者はプロなのですから、よく調べて記事を書いていただきたいと思います。



やまと庵


森のカフェ


ライオンスパイス(カレー専門店)

6/6追記)奈良の情報ブログ「鹿鳴人のつぶやき」に書かれた鹿鳴人さんのコメント(6/6付)。
商店街の皆さんはたいへん心外な記事だと言っておられます。それぞれの努力が無になり、風評被害が心配だといわれています。現に東京在住奈良市出身の30歳くらいの息子さんでネットでこの記事を見て心配して、連絡されてきた方もおられます。商店街ではいま意見のとりまとめをしていますので、来週にでも明らかに出来ると思います。





11/4追記)浅野善一さんの「ニュース 奈良の声」でも紹介されました。
報告書が名前を挙げた有力な案内書(ロンリープラネット)の当時の版を「奈良の声」が確認したところ、「2日かけるのが望ましい」となっていた。県によると、当該の記述は新聞記事からの引用で、案内書そのものは確かめなかったという。不確かな評価が独り歩きすることになった。

調査前年の05年に発行されたロンリープラネット「ジャパン」第9版は、奈良観光について1日でも可能としながらも、2日かけるのが望ましいとし、1日は奈良公園、もう1日は薬師寺や法隆寺のある南西部に当てることを勧めている。1つ前の03年の第8版も同一の記述。また、次の07年の第10版から最も新しい13年の第13版までの各版もほぼ同様の記述となっている。



なら街横丁

コメント (41)
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