tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

観光力創造塾(第4回)の概要が、奈良新聞に掲載されました!

2015年07月28日 | 観光にまつわるエトセトラ
7月13日(月)に開催いたしました「第4回 観光力創造塾」の概要が、今朝(7/28)の奈良新聞に掲載されました。長くなりますが、以下に記事全文を紹介いたします。

[見出しとリード文]
南都銀行主催 第4回 観光力創造塾 インバウンド推進のキーポイント 外国人目線理解を
「活力創造銀行」を経営ビジョンに掲げ、地域の活性化に積極的に取り組む南都銀行(橋本隆史頭取、本店奈良市)。地元の観光振興の課題について、専門家や観光の最前線で活躍する講師陣を迎えて活発な議論を行う「観光力創造塾」を昨年3月から開催している。

その第4回が7月13日、「インバウンド(外国人観光客誘致)推進のキーポイント」をテーマに、奈良商工会議所で開催され、料理店やホテル、土産物店、観光関連団体、自治体の観光関連部署の関係者ら約120人が参加した。

第Ⅰ部ではコンサルティングや研修・セミナーでインバウンドビジネスをサポートする株式会社やまとごころ(東京都)の代表取締役、村山慶輔さんが「外国人目線のインバウンド・マーケティング~集客のポイントを解き明かす」と題して講演。トークセッションでは、宿泊客の8割が外国人という、ならまちの旅館松前の女将、柳井尚美さんが「旅館松前の流儀」をテーマに、外国人に喜ばれる接客について話した。当日の様子を紹介しよう。


[講演]
第1部講演 「外国人目線のインバウンド・マーケティング~集客のポイントを説き明かす~」
株式会社やまとごころ代表取締役 村山 慶輔氏
むらやま・けいすけ 1976年生まれ。兵庫県出身。株式会社やまとごころ代表取締役。インバウンドビジネスコンサルタント。一般社団法人アジアインバウンド観光振興会理事など。著書に「訪日外国人観光ビジネス 沸騰するインバウンド市場攻略ガイド」(翔泳社)。


口コミ活用し地域自慢
国によって違う 評価のポイント

花瓶にも見え、見方を変えると人が向かい合うように見える「ルビンの壷」という絵があります。外国人観光客はマナーが悪い、トイレの使い方が悪い、声が大きいという声がありますが、外国人からすると普通通りなのです。認識の相違があるということを理解し、こちらの要望を説明すれば改善できます。ここに5つのサービスのポイントを挙げます。

①効率を重んじる②十分な権限を持っている③礼儀正しい④人間的であること⑤相談相手として頼りになる

この中で「顧客サービスについて重視する項目は」という問いに、アメリカ、カナダ、イタリア人は②と答えます。香港人は①です。日本人は④③⑤の順です。このように国によってサービスの評価のポイントは違ってきます。互いの違いを理解することが必要で、キーワードは「外国人目線」です。これを理解することがインバウンドには最も重要です。

世界最大級の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」は世界中で情報収集のツールとして利用されています。しかし日本人の口コミは少ない。もっとお国自慢、そして地域自慢をしなければ魅力が伝わりません。

訪日客過去最高 売上伸ばすには
インバウンドの現状はことし平成27年の1月から5カ月間で753万人。これは年間1700万人を超えるハイペースです(平成26年は過去最高の1341万人)。日本全国で非常に増えている。問題はマーケットに連動して売り上げが伸びているかどうか。昨年は2兆278億円でしたが、今後4兆円にしていこうという動きです。また平成26年の日本人も含めた延べ宿泊者数は約4億7000万人で、うち約10人に1人が外国人です。

傾向としては、「ショッピング・ツーリズム」が加速。免税店も増えています。東京でビルを宿泊施設にリノベーション(改装)した「Nui.バックパッカーズジャパン」など、インバウンドベンチャーも増えています。美容室、エステ、カラオケ、展望台、神社仏閣、コンサート、スポーツ、競馬、パチンコ、祭りなどなど、日々私たちが利用するサービス、参加するイベントでも外国人観光客に提供できます。いわばすべての産業にチャンスがあるということです。アイドルグループAKB48の選抜総選挙でも、来場者の2割は外国人だったのです。

インバウンド市場に起きている変化は、訪日外国人観光客の爆発的増加と、団体から個人へという動きもあります。団体客が最も多い中国においても個人化が加速しています。また、東アジアを中心にリピーター化が進展。昨年訪日した外国人観光客の6割がリピーターで、中には10回以上という人が16・7%いる。時間軸、曜日軸、季節軸における変化があり、福岡空港、関西国際空港は絶えず混んでいる。変化はチャンスです。送迎やホテルのチェックインの時間を変えるなど、先手を打っていく必要があります。台湾人のリピーターは個人旅行で、より奈良へ来たがっているという調査もあります。

目の前の外国人 しっかり満足を
香川県の直島には教育関連企業のベネッセコーポレーションがつくる現代美術のミュージアムがあり、世界中からアートや建築好きが殺到しています。ただ、リピーターを増やすためには、いま目の前にいる外国人観光客をしっかり満足させるということが必要です。

顕在化してきた課題としては何があると思いますか。クレームで一番多いのは「無視されている」ということです。私たちからすれば、外国人に対して言葉の壁があり、余計な事を言うと間違った情報を与えてしまうことにならないか、という心配があるのでしょう。ただ、その結果「無視されている」と思われている。そのように思われない接客を心掛ける必要があります。

外国人観光客をつかむためには全体観を捉えることです。ランドオペレーターによるプロモーション(魅力の紹介)はとても重要です。また現地メディアとの関係を構築したり、ブロガーを呼んでブログで魅力を紹介してもらう方法があります。ターゲットとなる国の大型連休を把握し、早めに施策を打っていくインバウンド・カレンダーを作るといいでしょう。

目の前にいる外国人をいかに呼び込むかということでは、店頭POPや歓迎サイン、外国語のメニューを用意したり、免税店であることなどは大切です。その工夫に少々お金をかけてもすぐに元が取れます。「トリップアドバイザー」への口コミや、あと国内でできることでは、スマホのアプリを作ったり、のぼり、フリーペーパーを作ることなども有効です。

自然と人が魅力 地方こそ世界へ
よくある間違いとしては、戦略がなく戦術ばかり(全体観、何を誰にどう売るかという考えがない)、新規客ばかりを追いかける、1つのターゲットに依存する(リスク分散の視点からも国別、団体客と個人客、日本人と外国人など、1つのものに依存しない)、マーケティングの軽視、があります。

インバウンドの取り組みとしては、世界に20億人いるイスラム教徒に向けたハラール(戒律で許されたもの)への対応。メディアに取り上げられやすく、PR効果があります。また少数派のようで世界の人口の6%いるというLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスセクシャル)マーケットも無視できません。富裕層マーケットのへの奈良県の取り組みは早いと言えます。

地域での取り組みの成功例は、「飛騨里山サイクリング」があります。日本人には珍しくなくても観光資源になる例で、外国人にはありのままの自然や田園風景が美しく見えるのです。半日7300円で東京ディズニーランドよりも高いのですが、地域の人との出会いもあって、満足度は100%。利用者の7割が外国人です。プロデュースしている山田社長は、実は奈良県出身です。

古民家の調査事業を7年やって地元の人の信頼を得て、地元の有力者に顧問になってもらって準備しました。ありのままの自然や人が最高のコンテンツ(内容)になります。ここでは「地方でも世界を舞台に勝負できる。地方こそ世界を舞台に勝負すべき。」という教訓があります。「こんな田舎には何もない」などと思うことはありません。

ワンポイントの 魅力をアピール
ブランドとは何か。それは自分は何者であるかを知り、何を伝え、何を伝えないかを知ることです。よくある自治体の悪い例は「海(川)も山も何でもある」と言うことで魅力が分からなくなることです。いい例としては「立山の雪の壁」「長野の地獄谷のスノーモンキー」などがあります。そうすることで伝わりやすくなる。見どころが他にあっても、あえて言わないということです。

今は口コミの時代で外国人旅行者自身がメディアです。「トリップアドバイザー」で、コメントを見ながらサービスの改善をします。インバウンドは今、さまざまな地域で燃えています。何かするよりも「何もしないことがリスク」の時代です。そして「継続は力なり」。地域と連携して(エリアが離れた地域でも可)、海外の旅行会社との商談会に出掛けるなどし、助成金も活用して、取り組んでいただきたいと思います。

[トークセッション]
第2部トークセッション「旅館松前の流儀」
旅館松前女将 柳井 尚美氏

やない・なおみ 1959年生まれ。埼玉県出身。大学卒業後、奈良で書道講師などを務め、「旅館松前」の夫壮一さん(故人)と結婚。約10年前から女将。
(聞き手)
南都銀行公務・地域活力創造部 鉄田 憲男氏

人として互いに楽しく

日吉館宿泊で「奈良漬け」に

―講演で村山さんが旅行口コミサイトの「トリップアドバイザー」を紹介されていましたが、本日お越しいただいた柳井さんの旅館松前は、2015年の同サイトで「エクセレンス認証」を受けられました。おめでとうございます。

多くの宿泊客が旅館松前のサービスや柳井さんの接客を高く評価しています。認証取得は2013年以来2回目。今日はその外国人高評価の秘訣をお聞きしたいと思います。柳井さんは、日吉館(歌人で書家の会津八一ら、多くの文人や学者にも愛された登大路町にあった旅館)に泊まられたと聞きましたが、それはいつごろですか。

柳井 大学生のときに京都が好きでよく来ていたのですが、奈良にいい旅館があると聞いて来ました。忘れもしない二十歳の夏に、どきどきしながら予約を入れました。夕方着くと、女将の田村キヨノさんがいらっしゃって、少し見つめられて「どうぞ」と。京都から「奈良漬け」になったのは、やっぱり日吉館からなんですが、面白い方たちがそこにはいて、自分の知らない世界を身近に実体験として語ってくれる人がいた。それを恐いおばちゃんが陰ながら温かく見守っていてくれたというのが印象です。何度も泊まりに来ました。

―今は旅館松前が日吉館の役割を果たされているのではないでしょうか。柳井さんは大学は東京で、大学院は奈良ですね。奈良にひかれたのはなぜですか。
柳井 情報のあふれる東京で「プロ(の書家)にならなきゃ」といっぱいいっぱいだったとき、奈良に来るとほっとした。自分の足音が聞こえるような。

―旅館松前さんは宿泊客の8割が外国人です。一番多い国は。
柳井 今はフランス、イタリア、スイス、カナダ、スペイン、オーストラリア、アメリカの順で、ほとんど欧米です。

―私が泊まらせてもらったときに、興福寺の朝の鐘がボーンと聞こえました。外国人にはたまらないんじゃないかと。リピーターは多いですか。
柳井 初めての方が多いですが、友人への紹介とか家族を連れてきたりする海外の方も増えています。

伝統文化や地域全体考える意識
―書道体験の「墨あそび」は有料ですか。
柳井 好きな言葉を書いて色紙を1枚仕上げてもらいます。約1時間くらいで、墨を使うことから1000円いただいています。墨が面白いと思ったら、奈良で買っていただけるところをご案内します。

―そうして伝統を守ろうと。
柳井 積極的に職人を守ることをしないと大事なものは残らないと言い続けています。

―狂言の稽古も見学できるんですね。
柳井 月に3回、木曜日に行っています。

―外国人からはどういう質問が多いですか。
柳井 3泊される方もいて、食事を聞かれますが、何回かは外のお店を案内しています。

―周りにお金が落ちるようにという配慮ですね。お土産にピンバッジを用意されている。
柳井 奈良市や県にもありますが、外国の方はお好きなようです。

―「トリップアドバイザー」の書き込みはすごいですね。絶賛しています。5つ星の評価をどう思いますか。
柳井 悪い評価が書かれていることもあり、それを見るとへこみますが。評価されているのは、いいロケーションにあることと、値段がそんなに高くないこと。けれども、もう一つの付加価値として感じるものは、私を含めてスタッフが、お客様が困っていることが解消されて、喜んでいただくことを大切にしていることを評価してもらっているのかなと思います。

―「墨あそび」や狂言は(経営に)役立っていると思いますが、どういう方の参加が多いですか。
柳井 自分が楽しいと思うことを「見たい」という人がいれば見てもらう、「やりたい」と言えばやっていただいています。質問があれば突っ込んで教えてしまう。それは小さい宿でしかできないことです。

安心を伝えれば旅行者の満足に
―海外の方は何を見て予約するのでしょう。
柳井 聞いてみると一番多いのは「ロンリープラネット」(旅行ガイド本)。同じくフランスの「ルーター」という本もご覧になります。他は「ミシュラン・グリーンガイド」などでも確認をして、そこからホームページを見て、メールを入れるという流れです。

―これから外国人のお客様を呼ぼうという意欲のある宿泊施設にアドバイスをお願いいたします。
柳井 まず海外の方を受け入れるために大切なことは、自分の国や、あるいは自分自身を知ることであり、外国語がうまくなることでも、外国人の真似をすることでもないということ。
また宿という立場からいえば、安心していただくということに尽きると思います。
国籍ではなく、人としてお互いに楽しくなる方法を相手の身になって考え、実行することが問題の解決になると思います。

―本日はありがとうございました。


概要は、以上です。当日、参加されなかった方も、幹の部分はこれで十分理解していただけることと思います。この「観光力創造塾」は、奈良県の宿泊観光客数を増やすことを目的に、年2回(夏と冬)開催しています。今回はアンケート結果でも「人選が良かった」とお書きいただきました。ぜひ、次回もお楽しみに!

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